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とことん!部落問題(角岡伸彦)

図書館の新着棚にあったのを借りてきた。

とことん!部落問題とことん!部落問題
(2009/04/23)
角岡 伸彦

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角岡さんといえば『被差別部落の青春』の人。読んでないけど、『ホルモン奉行』という本もある。『はじめての部落問題』は読んだ気がするけど、だいぶ前なのでどんなやったか忘れてしまった。
今はもうなかったと思うが、この本の版元でもある講談社が出していた『Views』という雑誌があって、その『Views』が部落の話を何度も載せていたことを今もおぼえている(うちの本棚のどこかにこの頃の『Views』が1冊あるはずだ)。

その頃ははっきりライター名を知っていたわけではなかったけど、当時の記事を書いていた一人が角岡さんらしい。この本には『Views』に載った記事も数本収録されている。この10年余りのあいだに書いてきた原稿をまとめた一冊は、角岡さん自身がこう書く時期を眺めるものになった─「奇しくもこの一〇年余は、部落に対する様々な事業が終焉し、同時に部落解放運動にかかわる不祥事が続発した時期だった。解放運動の明と暗、とりわけ暗部が浮き彫りになった期間でもあった」(p.3)。

ただ、だからといって、角岡さんは運動批判や運動団体批判ばかりを書いているわけではない。運動は必要だったし、その中にはどこの社会にも見られるように清と濁があった。その濁の部分を書きながら、シェルビー・スティールの本の話が何度か出てきたのが印象に残った。『黒い憂鬱―90年代アメリカの新しい人種関係』は、もうずいぶん前に読んだ本だけれど、運動はどんな社会をめざすのか、どんな人間をめざすのか、運動の"成果"がかえって人間をおとしめることはないのか、そんなことを問うたものだったと思う。

角岡さんは「あとがき」でこう書いている。
▼…私たちは、部落の内と外の双方を変えなければならない。「あいつらの特権は許せない」「なんであいつらだけが…」というねたみが、みんな貧しくという"下方修正社会"を築きつつあるのではないだろうか。単純に既得権を守れ、と言いたいわけではない。ただ、制度であれ施設であれ「部落にだけあるのはおかしい」と部落解放運動を全否定するよりも、「部落にもあるものを部落外へ」と押し広げていくことが必要ではないか。足の引っ張り合いをしている場合ではないのだ。
 私達はどんな社会を目指すのか。いいことも悪いことも含めて、部落問題から汲み上げることがあるのではないか。
 どんな「小さな社会」も「大きな世界」に通じる、と私は思う。(p.335)

映画「にくのひと」を撮った満若勇咲さんの話を書いた「大学生、屠場を撮る」もよかった。角岡さんの満若さんへのインタビュー。

▼─取材はどれくらいかかったん?
 紹介していただいてから毎週一回、合計二十五、六回は行きました。三六時間分撮って、それを一時間にまとめてます。カメラをまわさない取材を含めると完成まで半年かかりました。
 ─そんなに行ってたんや! 映像では若い職人を中心に構成されてるね。
 部落に行くのが初めてやったんで、僕と同世代の人たちが何を考えてるのかを知りたかったんです。なぜ、屠畜の仕事を選んだのかも知りたかったんですよ。
 ─もともと部落問題に関心はあったの?
 実はあまり関心なかったんですよ。この作品も部落問題をからめたくなかったんです。本当は屠場の仕事だけに焦点をしぼりたかった。企画の段階で大学の先生や映像関係の人にも相談しましたが、頭がいい人に限って屠場のことやなくて「差別はどうなん?」と聞いてくるんですよ。事前に取材はしてあったんで「当人たちはあっけらかんとしてますよ」と言うたら「そんなことないやろー」って。はじめから差別はあるもんやっていう見方しかしてなかった。
 ─部落や屠場と差別を結びつけすぎると。
 僕の出身の京都にも部落はあるんですけど、どこが部落かわからないんですよ。だからどういうイメージなんか自分でもよくわからない。僕らがもってる認識としてはヤンキーが多い、というくらいのもんで(笑)。だから大学の先生たちは結局、頭でっかちなんだなあと思います。今回取材して一番の教訓は、その人をわかりたかったら会いに行けっていうことですね。真正面から向き合わないと何もわからないというのがわかりました。…(後略)(pp.122-123)

(このインタビューを含む「大学生、屠場を撮る」はここで元の全文を読める)

まだ見てないけど「にくのひと」も、どっかで見たい!
 
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乱読ぴょん

Author:乱読ぴょん
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本ネタのミニコミ誌『ブックマーク』を編集発行しています(1990年9月創刊~ 昔は隔月発行でしたが、今は年2回発行で、現在92号)。

月刊誌『ヒューマンライツ』で、2014年4月(313号)より「本の道草」を連載中(現在、第67回)。

月刊誌『ヒューマンライツ』で、2004年3月(192号)より2014年3月(312号)まで、本ネタ「頭のフタを開けたりしめたり」を連載(全119回、連載終了)。

『くらしと教育をつなぐWe』誌で、1999年4月(71号)より2014年2月(188号)まで、本ネタ「乱読大魔王日記」を連載(全118回、連載終了)。

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