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読んだり、書いたり、編んだり 

エ/ン/ジ/ン(中島京子)

次号『We』の校正ゲラに埋もれるこの頃。
出勤仕事の合間にちみちみと校正していると、なにかを吸い取られているような感じで、校正ばかりはやってられなくて、新しい小説を読む。

中島京子の小説は一つ前の『ハブテトル ハブテトラン』を予約待ちしているところ。

まだかな~と図書館の資料情報をみていたら、中島京子のさらに新しい小説が入っていた。誰も予約していなかったので、ほいほいと借りてくる。

エ/ン/ジ/ンエ/ン/ジ/ン
(2009/02/28)
中島 京子

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タイトルだけでは何の話かまったくわからない。でも、中島京子の小説だよ、期待わくわくである。『イトウの恋』『FUTON』みたいな元ネタ加工の小説なのか、あるいは『冠・婚・葬・祭』『平成大家族』『桐畑家の縁談』みたいなカゾク小説か。

読みはじめたら、校正もほうりだして、読んでしまった。
これは70年代にあったものを探す物語ともいえるし、どうして母は自分を産んだのかという根源の問いを解こうとする話でもあるし(そんなところは、ちょっと夏石鈴子の本を思い出す)、フシギな物語であった。元ネタ加工のようでもありながら、カゾク小説といえなくもない。これまでの中島京子の小説をダブルで楽しめた感じである。

物語のしまいまでいってから、また最初に戻って読んでいる。
この物語に出てくる「宇宙厭人ゴリ」を書いた小説家、というのが中島京子自身のようにも思えるし、すべてはうまく構成された中島ワールドのようでもあるし、フシギな読後感がのこる。


母が若年性の認知症でいろいろなことを失いつつある。
そんな状態になった母と数年ぶりに暮らすことになったミライは「大きくなったら話すわ」と母が言っていたことを、おそらくもう聞けないのだと思う。

▼「だけど、祖父が死に、祖母が亡くなって、母親もあんな状態になってみると、自分の過去が、なんていうんだろ、空白なのがちょっと怖いような気がしたの。誰にも聞けないってことがね。誰かの記憶には残っているというのと、誰の中にもないってのは、同じ知らない状態でも、なにかが大きく違うのよ。実際には、生きてたころの祖父にも祖母にも、聞けなかったし、聞いても答えてもらえなかったかもしれないけど」(p.22)

▼「なんでわたしは、他の子供たちみたいじゃなかったんだろうって、根源的な悩みに取りつかれちゃったわけ。わたしが変わってるのは、あの変わった母親に育てられたからなんじゃないの? とか思うわけでしょ。そうすると、世界がぐるっと逆転するの。ヒーローだった母親は、こんどはすっかり悪役よ。あなたのせいで、わたしはこんなになっちゃったじゃないのよって」(pp.84-84)


70年代は、こんな風でもあったのだろうと思える小説。
で、この小説に出てくる特撮ヒーロー番組「スペクトルマン」(「宇宙猿人ゴリ」)は、ほんまにあった番組らしい。私にはまったくわからない。この番組のことを歴史的知識として持ってから読むと、この小説はなおおもしろいのかも。
 
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乱読ぴょん

Author:乱読ぴょん
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本ネタのミニコミ誌『ブックマーク』を編集発行しています(1990年9月創刊~ 昔は隔月発行でしたが、今は年2回発行で、現在92号)。

月刊誌『ヒューマンライツ』で、2014年4月(313号)より「本の道草」を連載中(現在、第69回)。

月刊誌『ヒューマンライツ』で、2004年3月(192号)より2014年3月(312号)まで、本ネタ「頭のフタを開けたりしめたり」を連載(全119回、連載終了)。

『くらしと教育をつなぐWe』誌で、1999年4月(71号)より2014年2月(188号)まで、本ネタ「乱読大魔王日記」を連載(全118回、連載終了)。

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