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蒲公英草紙 常野物語


蒲公英草紙 常野物語
恩田陸
\1,470
集英社
2005年

2冊目の常野物語は、1冊目とまた雰囲気が違った。こんどは、一冊ずっと同じ話。過去と行き来したりはするが。
西洋の絵と日本の絵について、聡子が語っていることがおもしろい。

▽「椎名様の--西洋の絵は、今この時の聡子を書いておられます。このいっときの、今ここで光を浴びてすわっている聡子を描いています。この刹那、目に見える聡子の細かいところを正確に再現していらっしゃいます。でも、こちらの、日本の方法で描かれた絵は」
 聡子様はすっと永慶様が筆で描かれた絵を指差しました。
「なんというのでしょう--もっと長い時間の流れを描いておられるような気がするのです。ここには、聡子という人間の昔の時間やこの先の時間が描かれているのではないでしょうか--きっと、日本の絵は、西洋の絵のように見たままのものを描くのが目的ではないのです」
 私はその瞬間、なんとなくぞっとしたのを覚えております。私が目の前にしているのはなんというお方なのだろうと、空恐ろしくなったのです。それは、横にいらしたお二人も同じだったようです。椎名様の顔からさっと血の気が引くのが分かりました。
 「きっと、永慶様は聡子を描いておられるのではないのでしょう--聡子を通して、聡子のいる世界の昔と今、そしてこれからを含めた時間や空間を描こうとされているような気がするのです。西洋の方は、なんと言えばいいのでしょう、そこにいるありのままの人間を描くのが目的なのでしょうね。でも、日本は違います」
[中略]
 「目的が違うのですから、描き方も違ってくるでしょう--ありのままのものを描くのならば、影や奥ゆきをきちんと描こうと力が入ってくるでしょう。でも、時間の流れや世界そのものを描こうとするのならば、むしろ影や奥ゆきといったものはだんだん不要になってきて、より簡素にしようとするのではないかと思うのです」(50-52pp.)

▽「皆さんは、画家の描いた絵を御覧になってどう思いますか? 同じものを見ているのに、どうしてこんなにも違う絵になってしまうんだろうと思いませんか? 優れた画家は、人物を描けばそのひとの過去や内面までも絵の中に表現することができます。風景を描いても、その時代や雰囲気を見ているものに感じさせることができます。つまり、画家というのは目に見えるものを書いているようでいて、実は見えないものを書いているんじゃないか」(161p.)
 
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乱読ぴょん

Author:乱読ぴょん
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本ネタのミニコミ誌『ブックマーク』を編集発行しています(1990年9月創刊~ 昔は隔月発行でしたが、今は年2回発行で、現在92号)。

月刊誌『ヒューマンライツ』で、2014年4月(313号)より「本の道草」を連載中(現在、第69回)。

月刊誌『ヒューマンライツ』で、2004年3月(192号)より2014年3月(312号)まで、本ネタ「頭のフタを開けたりしめたり」を連載(全119回、連載終了)。

『くらしと教育をつなぐWe』誌で、1999年4月(71号)より2014年2月(188号)まで、本ネタ「乱読大魔王日記」を連載(全118回、連載終了)。

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