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読んだり、書いたり、編んだり 

刺繍


刺繍
川本晶子
\1,365
筑摩書房
2005年

同僚さんと本の話をしていたら、「こないだ教えてもらった川本晶子の刺繍を読んだよー、なかなかよかった」と言われて、「は?刺繍?へ?教えた?」と記憶をたどるが、まったく思い出せない。

『刺繍』、といえば『ペルセポリス』と同じマルジの本のタイトルでしょう、と思うが、別の『刺繍』だった。

川本、刺繍と検索して、書誌情報を確かめるがやはりまったく思い出せない。
が、「39歳バツイチ子なし。うんと年下の恋人あり。痴呆の母と老いた父と暮す家で年下の恋人も同居を始める。母が彼に恋をしたからだ…。微妙な年齢の揺れる心のうちを描く。」という紹介文をよんで、図書館へ予約。

『カソウスキ…』を書いた人と同じく、この人はこれで太宰治賞をとったらしい。

記憶がうすれ、軽く小さくなっていく母、家事と介護にいそしむ父。
2ヶ月にいちどくらい顔を出していた実家へ、エリは戻ることになった。
自分の年の半分くらいの若さの敏雄は、ちょくちょく出入りして何かと手伝ってくれる。「敏雄君がいてくれた方が、何かと母さん…」という父からの頼みで、恋人の敏雄が同居することになった。ささやかだがお礼の気持ちを渡し、アルバイトのつもりでと頼んで。

敏雄は母の面倒をよくみてくれた。


▽「あんなあ、エリ」
 急に敏雄が真面目な声を出した。
 「俺、アルバイトって言われると、すげぇむかつく」
 湯飲みから立ち上る湯気をじっと見据えて、敏雄は言った。
 「アルバイト、じゃないから、俺。年寄りの面倒みるのって、アルバイトでやれることじゃないぜ」
 それから敏雄は、眦[まなじり]を決して、私を睨み付けた。
 「エリの親じゃなかったら、誰が汚ねえババアの面倒なんかみるかよ」
(145p.)


急な肺炎で入院してから、家に戻ることなく、それでも何度か奇跡的にもちなおした母は、入院して一年たとうという頃、次の春がもうこようかという朝に、静かに静かにエリの母は死んだ。
 
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乱読ぴょん

Author:乱読ぴょん
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本ネタのミニコミ誌『ブックマーク』を編集発行しています(1990年9月創刊~ 昔は隔月発行でしたが、今は年2回発行で、現在91号)。

月刊誌『ヒューマンライツ』で、2014年4月(313号)より「本の道草」を連載中(現在、第66回)。

月刊誌『ヒューマンライツ』で、2004年3月(192号)より2014年3月(312号)まで、本ネタ「頭のフタを開けたりしめたり」を連載(全119回、連載終了)。

『くらしと教育をつなぐWe』誌で、1999年4月(71号)より2014年2月(188号)まで、本ネタ「乱読大魔王日記」を連載(全118回、連載終了)。

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