FC2ブログ
 
読んだり、書いたり、編んだり 

すばらしい新世界


すばらしい新世界
池澤夏樹
\2,415
中央公論新社
2000年

こないだ読んだ『光の指で触れよ』の前編というか、林太郎、アユミ、森介という同じ登場人物たち(ただし林太郎とアユミの間の下の子はまだ生まれてない)の出てくる小説だ、というので借りて読んでみた。

こっちもえらいごっつい厚さの小説。
もとはこちらも新聞小説。

ところどころに、筆者の言い訳のような、解説のようなテキストが混じるところが、不思議な構成。

いんてりげんちゃん小説というか、風力発電のことや風車のことなど読んでいてベンキョウになるなーと思う部分も多い。チベット仏教の話やチベット族の話も出てきて、いま、新聞で連日のように載っている話でもあるので、そういう風にみることもできるのか、と思ったり。

林太郎と、友となったチベット人・プチュンとの会話。

▽「しかし、政治とはもともとそういうものではないか? 正義ではなく、力なのではないか?」
 「不当な力を排除して、正義を立てるのが、俺にとっての政治だ」とプチュンは言った。
 「しかし、きみはチベット系ネパール人であって、中国のチベット自治区に籍を持つ者ではない」
 中国のチベット政策に憤慨するプチュンに林太郎はそう言った。
 「チベットは一つだ」
 「本当にそうか? つまりさ」林太郎は声の調子を落として言った、「チベットは一つだ、というのはスローガンとしてはいい。国境を越えて団結しなければならない、というのもいい。そういうことだろう?」
 「そうだ」
 「現チベット自治区とネパールとインドとブータンにその他にいるチベット人が、チベット語で生活しているチベット仏教を信仰する民が、チベットに完全自立の国を建てればいいのか?」
 「そのとおり。それが理想だ」
 「本当にそんな国ができるか?」
 「いつかできる」
 「しかし、その国だって国民全員がチベット人ではないだろう。漢民族だって入っている」
 「そうだ。中国は数の支配を目指して、大量の漢人を移民として送り込んだ。数の上ではチベット人を上回りかねない。みんな住み着いている」
 「彼らをどう扱う?」
 「恩恵の政治を施す」
 「それは異民族支配ではないのか?」
 一瞬、プチュンは罠にかかったような顔をした。
 「ずるいぞ、おまえは」
 「ずるくない。国というのは結局のところ、異質の要素がたくさん混じっているものだ。人類だっていろいろ、思想だっていろいろ、宗教もいろいろ。それをゆるやかに束ねるようにして運営されるべきものだ。一つの色に染めるわけにはいかない」
 (pp.430-431)

『光の指で触れよ』を読んでいるだけに、この家族が、ばらばらになっていくのか…と思いもする。
 
Comment
 
 






(編集・削除用)


管理者にだけ表示を許可
 
Trackback
 
 
http://we23randoku.blog.fc2.com/tb.php/612-f2847e0b
 
 
プロフィール
 
 

乱読ぴょん

Author:乱読ぴょん
    乱読ブログバナー
本ネタのミニコミ誌『ブックマーク』を編集発行しています(1990年9月創刊~ 昔は隔月発行でしたが、今は年2回発行で、現在91号)。

月刊誌『ヒューマンライツ』で、2014年4月(313号)より「本の道草」を連載中(現在、第66回)。

月刊誌『ヒューマンライツ』で、2004年3月(192号)より2014年3月(312号)まで、本ネタ「頭のフタを開けたりしめたり」を連載(全119回、連載終了)。

『くらしと教育をつなぐWe』誌で、1999年4月(71号)より2014年2月(188号)まで、本ネタ「乱読大魔王日記」を連載(全118回、連載終了)。

amazonへリンク

 
 
最新記事
 
 
 
 
最新コメント
 
 
 
 
カテゴリ
 
 
 
 
Google検索
 
 


WWW検索
ブログ内検索
Google
 
 
本棚
 
 
 
 
リンク
 
 
 
 
カウンター
 
 
 
 
RSSリンク
 
 
 
 
月別アーカイブ