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景観にかける 国立マンション訴訟を闘って


景観にかける 国立マンション訴訟を闘って
石原一子
\2,625
新評論
2007年

石原一子、といえば高島屋。サッチャーみたいなことを言う本(『男のように考え、レディのようにふるまい、犬の如く働け』)を訳していた。

図書館の新着本の棚にしばらく並んでいて、たまにぱらりと眺めながら、リクエスト本がたまっていたのでなかなか借りられずにいた。

「景観利益は法的保護に値する」と最高裁が初めて判断した、国立のマンション訴訟。メインはその話だが、1章と2章(全体の4分の1ほど)は、著者の生い立ちの話である。個人名で出したのだから(著者は、このマンション計画がもちあがった際につくられた「考える会」の代表)、そういうのもありかなと思いつつ、「生い立ちの話」と、うしろの「マンション訴訟の話」の落差が大きいように思え、(生い立ちは別に書いて、こっちはマンション訴訟の話だけにすればよかったのでは…)と思うのであった。どちらも、それなりに興味深い内容ではあるので。


いやーー、ほんまに、司法・立法・行政の三権分立はあるのか?

マンション開発業者(明和地所)は、当初から付近住民に敵対的な態度をとり、住民説明会も開こうとせず、駆け込みで建築確認をとって(それも社員や弁護士を送り込み、国家賠償をチラつかせて行政を脅してのことらしい)、工事を始める。

住民たちは、地権者たちとともに高さ制限についての地区計画の素案をつくり、一部の地権者からは良好な住環境を守るためにと20メートルではなく、あえて10メートルに下げた規制の申し出を受けて、国立市に提出。一部修正のうえ、住民発意の地区計画は公告縦覧が開始された。

これで、片がついていれば、この本はうまれなかっただろう。

裁判にもちこまれることになった。
争点は、住民の景観権(景観利益)の確立、景観を守る(マンション建設を阻止)ための地区計画・建築条例の適法性、建築基準法三条二項の解釈、明和地所の企業姿勢、国立市に明和地所に対する対応、であった。

読めば読むほど、「恥ずかしくないのか!」と言いたくなる明和地所や行政の態度。一部の裁判官も、現地さえ見ず、事実誤認の上に判決を出した。また国立の自民党議員は、ことごとく住民運動に抵抗しつづけ、臨時議会の開催を拒否したり、議場を退場したりした。
「うまい汁」を吸う者たちは、そっちはそっちでつながっているのである。

7年近くに及んだ裁判もあり、途中で「もうだめなんじゃないか」と諦めそうになる人もいたという。そういう「デモンの声」に負けずに、運動を続けていくには、何が必要か。
この本はそういうことも書いていて、参考になる。


全国で似たようなことはたくさん起こっている。
そこから、全国ネットができた。

▽…突然のマンション計画に見直しを求めても、業者の言い分は法律を守っているのだからどんな建物を建てようと自由だ、というものです。自治体に訴えても対応は鈍く、住民の意向を聞き入れることはほとんどありません。このような開発行為を予防する方法はないのでしょうか。あります。それは、住民が自分たちのまちの景観は自分たちで守るという強い意志と自治体任せにしない住民の姿勢こそが開発業者による景観破壊を未然に防ぐもっとも確実な近道です。「景観市民ネット」はそのための知恵を出し合うことを第二の柱として計画しています。(景観市民運動全国ネットの「活動の柱」、271p.)

景観市民運動全国ネット
http://keikannet.web5.jp/

(3月25日読了)
 
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乱読ぴょん

Author:乱読ぴょん
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本ネタのミニコミ誌『ブックマーク』を編集発行しています(1990年9月創刊~ 昔は隔月発行でしたが、今は年2回発行で、現在92号)。

月刊誌『ヒューマンライツ』で、2014年4月(313号)より「本の道草」を連載中(現在、第68回)。

月刊誌『ヒューマンライツ』で、2004年3月(192号)より2014年3月(312号)まで、本ネタ「頭のフタを開けたりしめたり」を連載(全119回、連載終了)。

『くらしと教育をつなぐWe』誌で、1999年4月(71号)より2014年2月(188号)まで、本ネタ「乱読大魔王日記」を連載(全118回、連載終了)。

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