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日本の行く道


日本の行く道
橋本治
\777
集英社新書
2007年

いつもながら、くどくどしたテキストであるが、橋本治の目のつけどころは、やはりスルドイ、と思う。

1960年代以前に戻ってしまえ、と言うのである。
どういうことか?

それを、この新書で、ボリュームに限りのある新書で、そのボリュームの範囲内で、橋本治はくどくどと語る。

▽…官僚というものは、「国家のため」という前提に立って、【国民に代わって考える】のです。
 そんな委任状を渡されたわけでもないのに、官僚は、「国民に代わって考える」をします。そんなことをされたら、国民の出番はありません。「でもそれでいい」とするのが、官僚なのです。
 私はただ、「日本の政治のあり方を辿れば、そういうことにならざるをえない」と言っているだけです。官僚というものは、近代化のその初めから、「国家のあり方を考える」という方向で訓練され、「国家のあり方を考えている公僕」というあり方をしているのですから、国家のあり方を考えるエキスパートなのです。国民に「官僚を従えるだけの思考能力」が宿らない限り、官僚は、自分達の考えと異なるすべての考え方に対して、「そういう考え方もありますね」と慇懃に拒絶し、鼻先で笑うことも可能なのです。つまり、「国民が成熟しない限り、官僚は不祥事の仕放題である」ということでもありますが。(pp.194-195、【】は本文では傍点)


東京大学というものが、「国家に須要なる人材」を育てるための、官僚養成のための大学として発足したことを、教育史のかなたのほうから思い出す。


▽学校ではおそらく、「貿易」というものを、「国同士で、必要のある物をやりとりする」というふうに教えるでしょう。「物の売買」も、同じように理解されるはずですが、でもこれは、現実のありようとは大きくかけ離れています。現実には、「いらないかもしれないけど買え。これは必要なはずだから、これは便利であるはずだから買え」ということが、売買の原則になってしまっています。どうしうてそういうことになってしまったのかといえば、産業革命によって「必要以上の物を生産する」が可能になって、その態勢が今でも続いているからです。

 「必要か不要かを蒸しして、“ほしい”と思ったものはどんどん買え。なぜならば、個人消費こそが、景気の動向を左右するのだ」という考え方は、この産業革命以来のあり方をストレートに受け継ぐものです。だから、「もうそんなのはいいなじゃいか」という成熟した声が、地球の上に生まれたっていいのです。「自国内での必要量」をオーバーするような量を生産して外国への輸出に充てる--そして、「輸出によって儲ける」という国家利益を実現する。産業革命というのはそのためにも必要とされ、今もまだこの状態は続いていて、「世界の工場」になった国は「生産すれば儲かる」の一本槍で、ガンガン二酸化炭素やその他の有害物質を排出して、地球のあり方を危うくしているのです。ほんとに、「もういいじゃないか」です。

 産業革命は、「機械化して大量生産を実現し、コストを下げる」ということを可能にしました。そして、このことが実現されてしまえば、「更なる機械化、合理化によってコストを下げる」という競争が起こります。もう「産業革命」という言葉は使われなくなって、後を引き受けるのは「技術革新」という言葉ですが、でも、「自国内の必要量を超えて生産する」という産業革命当時のあり方は、まだそのままにつづけられているのです。

 「果たして、そこまで機械化、合理化を実現してコストを下げ、自国内の必要量を超える生産を続ける必要があるのか?」という問いは、「それをしなければ他社や他国との競争に負けて、我が社は沈没する」という【現実的な声】によって却下されますが、「そこまでして、本当に必要なのかどうかよく分からなくなってしまった“物”を作り続け、売り続ける必要はあるのか?」という問いは、もうあってもいいのです。なにしろ、その「過剰」かもしれない生産と消費の繰り返しが、地球の温暖化を招く原因になっているのです。「地球の温暖化は、産業革命以来の人間の【生活活動】の結果」というのは、こうしたことを指すのです。

 産業革命は、「大量生産によってコストを下げる」ということを可能にして、そのことによって、ずーっと「大量生産によってコストを下げる」ということを持続させ加速させて来たのです。産業革命は、「産業革命を推進させ続けなければならない理由」まで生み出して、我々はそれに振り回されているのです。それで私は、「もう一度その初めに戻って、“産業革命を導入した”という選択肢のあった歴史を、現在のものとして考え直してもいいのではないか」と思い、こんなくだくだしい話を続けているのです。(pp.224-226、【】は本文では傍点)


もう、ホンマに、「もういいじゃないか」ですな。
 
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乱読ぴょん

Author:乱読ぴょん
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本ネタのミニコミ誌『ブックマーク』を編集発行しています(1990年9月創刊~ 昔は隔月発行でしたが、今は年2回発行で、現在91号)。

月刊誌『ヒューマンライツ』で、2014年4月(313号)より「本の道草」を連載中(現在、第65回)。

月刊誌『ヒューマンライツ』で、2004年3月(192号)より2014年3月(312号)まで、本ネタ「頭のフタを開けたりしめたり」を連載(全119回、連載終了)。

『くらしと教育をつなぐWe』誌で、1999年4月(71号)より2014年2月(188号)まで、本ネタ「乱読大魔王日記」を連載(全118回、連載終了)。

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