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小野忠重『版画-近代日本の自画像-』岩波新書(青、1961)

 あとがき

 なんの気なしにつかっている「版画」も、案外近ごろのことばだ。しかも、海外から送られてくる展覧会目録などに、HANGAとあると、そんなにも国際語になっているのかと、びっくりしてしまう。
 "版の絵""刷りものの絵"といったところだが、この「版画」のことばをきめたのは、二十世紀はじめの創作版画の先輩たちだった。油絵だの水彩画だのに並べて材質をみた、ふくみの多いことばだけに、さかのぼっては、下絵・彫版・刷版の三者で成りたつ江戸の浮世絵版画までおよぶし、木版ならぬ、銅販や石版、その他あらゆる技法をふくめ、あらゆる国の作例までつなげるのである。私たちの近代社会がこれに無縁なはずもなく、古い時代と今日をつないで、刷りものの近代的展開を教えるのも、まさに「版画」だった。さまざまな事例をよくばってひろげながら、私はこの本に二十世紀の新造語をとって「版画」と題した。
 じっさい、浮世絵の版画はだれでも知っている。現に私たちの周辺の版画も、もちろんだ。それでいてこの二つの版画グループの中間は、案外知られていない、と思うのだが、ちがうだろうか。はなはだしいばあい、私たちの近代社会には版画がまるでなかったかのようなことばさえきかされては、やりきれない気にもなる。そこで、浮世絵の版画から現代の版画へ、私なりに橋をかけてみた。見忘れた近代社会の版画の糸をいくつかつないで、序列をつけてみた。たくさんの図版は、みなさんのうしなわれた記憶の底をかきたててくれるにちがいない、とこれは造本の方の自慢だが、遠慮なくいえるのである。
 …
 この本の図版の多くは、わずかな個人蔵のほかは、国立国会図書館上野分館、東京都立日比谷図書館、東大明治新聞雑誌文庫等の所蔵品によった。へんぺんたる刷りものが今日に生命が保持されて、一望できたのは、うれしいことだった。
 それにしても、創作版画出現以後の、現に私たちの周辺にうごいている版画資料が一望できる便宜は、個人、公開施設を通じて、ついに私は知らなかった。ことに近い時代のものほど見にくいとは皮肉な話だが、事実だ。だから、長い版画の橋の手前がわ、問題は今日の版画にかかわってくる。…

(243-244ページ)
 
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乱読ぴょん

Author:乱読ぴょん
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本ネタのミニコミ誌『ブックマーク』を編集発行しています(1990年9月創刊~ 昔は隔月発行でしたが、今は年2回発行で、現在91号)。

月刊誌『ヒューマンライツ』で、2014年4月(313号)より「本の道草」を連載中(現在、第65回)。

月刊誌『ヒューマンライツ』で、2004年3月(192号)より2014年3月(312号)まで、本ネタ「頭のフタを開けたりしめたり」を連載(全119回、連載終了)。

『くらしと教育をつなぐWe』誌で、1999年4月(71号)より2014年2月(188号)まで、本ネタ「乱読大魔王日記」を連載(全118回、連載終了)。

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