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『赤瀬川原平の名画探検 フェルメールの眼』講談社(1998)

 はじめに-フェルメールの秘密情報

 …はじめはとにかくその描写の技術に目を見張った。本物そっくり。
 フェルメールに限らず昔の絵はみんなそうで、どの画家も本物そっくりのリアリズムを目指している。十九世紀にカメラが世に出てくるまでは。
 フェルメールは十七世紀のオランダの画家である。世の中の絵のリアリズムは十六世紀のルネッサンスで遠近法を手に入れて、一段と本物そっくりに近づいていた。だからフェルメールの絵も本物そっくりなのだけど、ちょっと違う。よく見ると、ところどころ筆のタッチがずいぶん粗い。
 人物の顔といか衣服とかの中心的な部分は筆のタッチをなくして滑らかに描かれているようだけど、でもところどころ粗い筆の跡がちゃんとわかる。
 たとえば床が白と黒の市松模様の石張りになっている絵が多いが、その白い石のまだら模様など、ほとんど一筆書きで筆跡も生々しいのだ。
 その大胆さに驚かされた。そのことに気がつくと、フェルメールの描写力の他の画家とは違う透明感が、何か少しわかったような気になってくる。
 筆づかいは要所要所かなり粗いのに、描かれた絵の本物そっくり感はぞくっとするほどだ。でも何にぞくっとするのだろうか。
 一つは視覚のレンズ効果が描かれていることだと思う。レンズにはピント位置がある。ピントの合ったところはありありと見え、合っていないところはぼやけて、そのぼやけた中の尖った光の点は丸い粒状になる。そういう働きのレンズが人間の目にも水晶体となってはめ込まれていて、それでぼくらは物を見ている。でも、自分の目は自分だけしか見ていないので、人間は自分の目のレンズ効果になかなか気がつかない。目の構造を客体化したカメラが出来て、はじめてそのことに気がついた。でも、カメラ以前に、フェルメールはその絵の中にレンズ効果を描き込んだのである。カメラと似た仕組みのレンズ付きのぞき装置(カメラオブスキュラ)の体験があるのだろうといわれている。…

(2-3ページ)
 
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乱読ぴょん

Author:乱読ぴょん
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本ネタのミニコミ誌『ブックマーク』を編集発行しています(1990年9月創刊~ 昔は隔月発行でしたが、今は年2回発行で、現在92号)。

月刊誌『ヒューマンライツ』で、2014年4月(313号)より「本の道草」を連載中(現在、第68回)。

月刊誌『ヒューマンライツ』で、2004年3月(192号)より2014年3月(312号)まで、本ネタ「頭のフタを開けたりしめたり」を連載(全119回、連載終了)。

『くらしと教育をつなぐWe』誌で、1999年4月(71号)より2014年2月(188号)まで、本ネタ「乱読大魔王日記」を連載(全118回、連載終了)。

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