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内田樹『「おじさん」的思考』晶文社

第四章 「大人」になること--漱石の場合

▽…この対話のうちには、漱石が『虞美人草』で言おうとしていた大事なことのかなりの部分がすでに書き込まれている。
 行動を起こす前に、「予定」を立てることを甲野くんは主張する。
 予定を立てる暇があったら、何度でも、さまざまな行動が可能であると宗近くんは反論する。
 ここには言葉以上の決定的な違いがある。
 「予定を立てる」ということは、現在の「私」の価値判断や推理能力を固定的なフレームワークとして、それを未来に適用することである。
 「予定」というのは、未知のもの、予測不能のもの、フレームワークを逸脱するものを、「想定しない」ことによって成立している。
 「明日の三時に、三宮駅前でね」と約束する恋人たちは、今夜半にゴジラが神戸に上陸したり、火山活動で六甲山が山崩れする可能性を排除している。排除しなければ、予定なんか立てられない。
 宗近くんは「分かるものか」「知るものかね」と繰り返す。自分の前にどのような未来が開けているのか、どのような不測の事態が待ち受けているのか、「知るものか」と宗近くんは言う。
 それは単に「未来は予測不能である」ちう事実認知を語っているのではない。「未来は予測不能である」ことを腹に入れておいたほうが、「予測不能」の事態に遭遇したときに生き延びるチャンスが高いという遂行的真理をも語っているのである。
(204-205ページ)
 
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乱読ぴょん

Author:乱読ぴょん
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本ネタのミニコミ誌『ブックマーク』を編集発行しています(1990年9月創刊~ 昔は隔月発行でしたが、今は年2回発行で、現在91号)。

月刊誌『ヒューマンライツ』で、2014年4月(313号)より「本の道草」を連載中(現在、第65回)。

月刊誌『ヒューマンライツ』で、2004年3月(192号)より2014年3月(312号)まで、本ネタ「頭のフタを開けたりしめたり」を連載(全119回、連載終了)。

『くらしと教育をつなぐWe』誌で、1999年4月(71号)より2014年2月(188号)まで、本ネタ「乱読大魔王日記」を連載(全118回、連載終了)。

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