読んだり、書いたり、編んだり 

12月に読みおわった本

遠ーーい職場での担当業務がまた忙しくなってきて、残業は全くしないものの、疲れたーと帰る日が増え、電車で本を開きながらウトウトすることが多くなった。仕事納めの日には、定時で終わる間際までこまごまと慌ただしく、帰りの電車で座り込みたくなるほどくたびれた。

今月も芝居をみた。母の友人であったKさんも出演された朗読詩劇。原作となった『広島第二県女二年西組』は、8月6日に爆心地近くの建物疎開作業で被爆死した級友たちの最期を、その日病欠したために生きのびた作者の関千枝子さんが遺族を訪ねて記録したもので、母の本棚にあった古い本を数年前に読んでいた。だが、「こまい兵隊」として動員された子どもたちが"お国のために死んだ「最年少の英霊」"として靖国神社に合祀されたくだりは、私の記憶にはまったく残っていなかった。

関さんが今年の8月に出された『ヒロシマの少年少女たち』を読んでそのことに気づく。いまの中学1年、2年にあたる年齢の子どもたちが、広島市内の各学校から8000人以上も動員されて建物疎開作業にあたっていた。約6000人の子どもが死んだ。被爆死した中には少なからぬ朝鮮半島出身者がいたが、後に「最年少の英霊」が合祀された際にはそれらの生徒は"外国人"だからと除かれたというのだ。

間中ムーチョ「ニッポンの犀たち」201512
間中ムーチョ「サイの国ニッポン」
(合同展「それぞれの形―色と形 101―」12/4~13@スペース草 出展作)
松井今朝子のコラム「サイになる病気」(日経、2015.11.20)に、1950~60年代に欧米で大流行した不条理演劇(松井の表現でいえば「バカみたいなお芝居」)のひとつ、イヨネスコの「犀」の話が書かれていた。その記事をムーチョさんに送ったら、記事をもとにして描いたと、合同展にこんな絵が出てきた。

ウチになんとか貼る壁をつくって、ムーチョさん作品をお持ち帰り。仕事から帰ってくると、でっかいサイの絵を見て「犀~」と思い、年末の休みに入ってイヨネスコの戯曲をよむ(私がヨソの図書館から相互貸借で借りた『授業/犀 ベスト・オブ・イヨネスコ』は絶版で手に入らないもよう)。

ある日、犀が街を駆け抜けた。そんなことがあるわけがないと、駆け抜けた犀を見た者は、翌日会社でたわごと扱いされる。しかし、同僚の一人が犀になったらしいことが分かり、その後も友人が、隣人が、たわごとだろうと言った者までもが次々に犀となり、どどどと街を駆け抜ける。

松井の記事「サイになる病気」にはこう書かれる。

▼作者は若かりし頃に、ヒットラー出現の影響が欧州全土に及んで、友人たちが次々とファシズムに傾倒して行った当時の気持ちをこの芝居に託したのだという。ある者は鈍感さからサイに変貌し、ある者はサイを理解しようとすることで自らがサイ化し、最後には自分が多数派に属さない不安に耐えられない人がサイになってしまう。こうした病気は決して他人事ではない。▲

「犀」を読み終えて、近所の図書館には「犀」が入った本はやはりないのかと調べたら、所蔵のある『イヨネスコ戯曲全集』の2巻に「犀」が収録されているらしい。相貸の本を読んだあとは、この全集も読んでみようと思う。古い戯曲全集(全4巻)は、私が生まれた年に出たものだった。舞台を思い浮かべながら戯曲を読んだが、上演されることがあればぜひ芝居を見てみたい。

12月に、てっぺんから最後まで読んだ本のリスト。読みかけや積ん読で年越しするものが十数冊。

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○関千枝子『ヒロシマの少年少女たち―原爆、靖国、朝鮮半島出身者』彩流社
○大西連『すぐそばにある「貧困」』ポプラ社
○友永健三『部落解放を考える ―差別の現在と解放への探求―』解放出版社
○ミランダ・ジュライ(岸本佐知子訳)『あなたを選んでくれるもの』新潮クレスト・ブックス
○ルーシー・モード・モンゴメリ(村岡花子訳)『アンの友達』新潮文庫
○ルーシー・モード・モンゴメリ(村岡花子訳)『アンの愛情』新潮文庫
○ハンス・ユルゲン・プレス『くろて団は名探偵』岩波少年文庫
○青木淳悟『いい子は家で』ちくま文庫
○窪美澄『さよなら、ニルヴァーナ』文藝春秋
○ヤマザキマリ『ヤマザキマリのリスボン日記』朝日文庫
○本多孝好『君の隣に』講談社
○歌川たいじ『母の形見は借金地獄 全力で戦った700日』KADOKAWA
○ルーシー・モード・モンゴメリ(村岡花子訳)『アンの青春』新潮文庫
○乃南アサ『地のはてから(下)』講談社
○清水潔『殺人犯はそこにいる―隠蔽された北関東連続幼女誘拐殺人事件』新潮社
○小川洋子、平松洋子『洋子さんの本棚』集英社
○乃南アサ『地のはてから(上)』講談社
○伊奈めぐみ『将棋の渡辺くん(1)』講談社(ワイドKC 週刊少年マガジン)
○ヤマザキマリ『テルマエ・ロマエ』(IV、V、VI)ビームコミックス
○ルーシー・モード・モンゴメリ(村岡花子訳)『赤毛のアン』新潮文庫
○田丸雅智『ショートショート・マルシェ 』光文社文庫
○柚木麻子『本屋さんのダイアナ』新潮社 …再
○水木しげる、荒俣宏『戦争と読書 水木しげる出征前手記』角川新書
○フィリップ・K・ディック『人間以前 ディック短篇傑作選』ハヤカワ文庫SF
○澤地久枝『14歳〈フォーティーン〉 満州開拓村からの帰還』集英社新書

(芝居)
○『朗読詩劇 広島第二県女二年西組』(関千枝子・作、劇団大阪豊麗線第一回公演) 
 
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Author:乱読ぴょん
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本ネタのミニコミ誌『ブックマーク』を編集発行しています(1990年9月創刊~ 昔は隔月発行でしたが、今は年2回発行で、現在87号)。

月刊誌『ヒューマンライツ』で、2014年4月(313号)より「本の道草」を連載中(現在、第42回)。

月刊誌『ヒューマンライツ』で、2004年3月(192号)より2014年3月(312号)まで、本ネタ「頭のフタを開けたりしめたり」を連載(全119回、連載終了)。

『くらしと教育をつなぐWe』誌で、1999年4月(71号)より2014年2月(188号)まで、本ネタ「乱読大魔王日記」を連載(全118回、連載終了)。

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