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夕暮れの時間に(山田太一)

夕暮れの時間に(山田太一)夕暮れの時間に
(2015/8/22)
山田太一

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図書館の新着棚にあって、こんな新しい本がもう入ってるのかと思う。

pp.129-134「教室の歓声」
小5で敗戦を迎えた山田太一が、忘れられずにいる記憶を綴る。
▼ある日、先生が、いま日本はやられているが、実はひそかに開発している強力な爆弾があると、黒板に図を描いてその原理を説明してくれた。あとで思えば、それは原子爆弾だったのだが、原理の方はよく分らないまま、とにかく、これが完成して、ワシントンに一発、ニューヨークに一発落とせば、二大都市の人たちの大半は死んで、アメリカはもう終り、日本の勝利になるという話だった。その時のこみ上げるような喜びを忘れられない。教室中が湧き立つようになって、一人でも多くのアメリカ人が死ぬことをみんなで心から願ったのだった。(p.130)

この、戦中の山田太一が「人が死ぬことを心から願った」というくだりを読んで、こうの史代の『夕凪の街 桜の国』で、原爆症で死んでいく女性が「原爆を落とした人はわたしを見て「やった!またひとり殺せた」 とちゃんと思うてくれとる?」とつぶやくところを、思い出したりした。
山田はこの箇所の少しあとでこう書いている。
▼大人も子どもも、敵国への攻撃性を全開にしていた時代だった。いまはそんな情念はほとんどないかのような日本人だが、そのこみ上げるような喜びを思い出すと、いつの日か日本人の大半がある国を敵視し憎悪し、それに異議を唱える人々を排除して攻撃性をむき出しにする日がないとはいえないという不信がどうも消えない。(p.131)

戦争は避けるに越したことはないと思う、そう山田は書く。小学生だった自身の内面に思いを馳せながら。
▼子どもの私が先生の話に喜んだことに裏はない。興奮した幼い小学生がいただけである。しかし、苑記憶は妙にいつまでも心に残り、罪のように私の考えを刺戟するのである。
 それは記憶に、本音のリアリティがあったからだと思う。クラス全体で、アメリカ人が出来るだけ沢山死ぬことを願って目を輝かせた。戦争中のことだし、子どもだったしで片付くはずの小さなエピソードが、時と場合によっては甦るかもしれない自分の内部の無気味な本音として跡を引いている。(p.132)

この「教室の歓声」が含まれているのは、「II」のパート。主に本について書かれた文章をあつめた「IV」のパートもよかった。読んでみたいと思った本は、『灰色の輝ける贈り物』(アリステア・マクラウド)、『沢村貞子という人』(山崎洋子)、『夏の嘘』(ベルンハルト・シュリンク)。

(9/7了)
 
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Author:乱読ぴょん
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本ネタのミニコミ誌『ブックマーク』を編集発行しています(1990年9月創刊~ 昔は隔月発行でしたが、今は年2回発行で、現在87号)。

月刊誌『ヒューマンライツ』で、2014年4月(313号)より「本の道草」を連載中(現在、第37回)。

月刊誌『ヒューマンライツ』で、2004年3月(192号)より2014年3月(312号)まで、本ネタ「頭のフタを開けたりしめたり」を連載(全119回、連載終了)。

『くらしと教育をつなぐWe』誌で、1999年4月(71号)より2014年2月(188号)まで、本ネタ「乱読大魔王日記」を連載(全118回、連載終了)。

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