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からくさ図書館来客簿 第三集 冥官・小野篁と短夜の昔語り(仲町六絵)

からくさ図書館来客簿 第三集 冥官・小野篁と短夜の昔語りからくさ図書館来客簿 第三集
冥官・小野篁と短夜の昔語り

(2014/11/21)
仲町六絵

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第一集第二集を読んだあと、しばらく図書館で予約待ちをしていた。

小野篁が、平成の世で私立図書館の館長として、そこいらの大学生か大学院生のようなナリをしているのは、この現世でさまよう"道なし"を、きちんと天道へ送ってやるため。

第三集は、「馬琴の謎かけ」前後編で、さまよう馬琴が出てくるし、「わたの原」の前後編では、かつて筆禍により篁が流された地・隠岐が舞台となって、篁のこれまでの身過ぎ世過ぎがさらに分かってくるようだった。

「南総里見八犬伝」が絡む馬琴の話は、当時の読者は物語を朗読していたのだというところにつながる。はるか下った今の世では黙読がすっかり普通のこととなって、「八犬伝」が声に出して読まれることは滅多になく、それが馬琴の心残りになっていたのだ。作者は馬琴にこう語らせている。
▼「あの頃はなあ。物語といえば声に出して読むのが普通だった」
 懐かしくてたまらない、という顔で馬琴は暮れなずむ庭を眺めた。
「『八犬伝』は特に、耳から聞いて良い塩梅になるように書いてある。八犬士はそれぞれ持ち味の違う元気のいい連中が揃ってるんで、自然にそうなったのさ」(pp.106-107)

「八犬伝」は長大な物語だというが、私も声に出して読んでみたくなる。あるいは、朗読されたCDでもないものか。

隠岐をめぐっては、小野篁が流された当時の事情に、現代の隠岐で取り組まれている"まるごと図書館構想"に想を得た島々をむすぶ「うみかぜ図書館連盟」の話がからまって、おもしろかった。図書館司書にして小型船舶免許をもつ女性が出てくる。公共交通機関では便数の少なさと輸送費の問題で島から島へ本を運ぶなどとてもできないので、図書館共用の小さな輸送船で運ぶのである。

小野篁が隠岐に流される直前に詠んだ歌が、百人一首に入っている「わたの原八十島かけて漕ぎいでぬと 人には告げよ 海人の釣り船」で、その上の句がタイトルにとられている。小説では、隠岐で詠んだ歌「思いきや 鄙のわかれに衰えて 海人の縄たき いさりせんとは」が引かれ、篁自身が「中央から遠く離れた地で運気の衰えた身となり、漁師の縄を手繰って漁をすることになろうとは思わなかった…という意味です」(p.326)と語っている。篁が流され、そして再び都に戻れた経緯を、もうちょっと知りたい。

篁は、昼は朝廷に仕え、夜は現世と冥府を結ぶ井戸を通って、閻魔大王に仕えていたという。その篁にゆかりのある京都の千本ゑんま堂で、先日はゑんま堂狂言を見物してきた。

(4/29了)
 
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本ネタのミニコミ誌『ブックマーク』を編集発行しています(1990年9月創刊~ 昔は隔月発行でしたが、今は年2回発行で、現在87号)。

月刊誌『ヒューマンライツ』で、2014年4月(313号)より「本の道草」を連載中(現在、第40回)。

月刊誌『ヒューマンライツ』で、2004年3月(192号)より2014年3月(312号)まで、本ネタ「頭のフタを開けたりしめたり」を連載(全119回、連載終了)。

『くらしと教育をつなぐWe』誌で、1999年4月(71号)より2014年2月(188号)まで、本ネタ「乱読大魔王日記」を連載(全118回、連載終了)。

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