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イスラームの世界観―「移動文化」を考える(片倉もとこ)

イスラームの世界観―「移動文化」を考えるイスラームの世界観
―「移動文化」を考える

(2008/02/15)
片倉もとこ

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『コーランを知っていますか』を読んだら、あれ、あれ、あの本を読みなおしたいと、本棚から出してきて読む。この本は、図書館で借りて文庫を読み、文庫の底本となった同時代ライブラリー版を読み、さらに元の単行本も読んでいる(バージョンが変わるにつれて多少の手入れがなされ、骨格は同じだが、衣が身に馴染んだ感じ)。

それから6年前に文庫を買い、ときどき読みたくなって、出してきて読む。私のメモによると2011年にも読んでるし、2013年にも読んでいる。

p.201の写真には、"「生きること」は「うごくこと」.人生の大半を移動して過ごす人たち"というキャプションがついている。そういう生き方のなかからイスラームはうまれてきたといえる。

なんど読んでも、この本のテーマである移動、動くという生き方に心ひかれる。「うごき」を重んじるイスラームの世界観にふれると、自分が開かれていく感じ。移動は、いく先々で、いろんな人たちとの出会いにつながる。

著者のいう"非構造的共生"の社会がもつ寛容さの一方で、「それなりに安定した平穏な世界が、民族紛争の絶えない世界へと変化していったのは、近代西欧がこの地域にはいってきてからである」(p.158)と著者は記す。すなわち「言語が政治的意味をもつようになり、公用語が設定され、一民族一国家の理念が浸透していったのであった」(p.158)と。

国民国家誕生のきっかけは"自由、平等、博愛"を叫んだフランス革命であったと著者が書いているところが、今回読んで、ぐわーんと響いた箇所。
▼…人びとの代表は「国民国家」の名のもとに、ひとつの言語、ひとつの民族で統一しようとする政府を誕生させた。「自由、平等、博愛」をうたいながら、国内ではバスク人など少数民族にフランス語による教育を強制し、他国を侵略したナポレオンの例を引くまでもなく、排他的な愛国主義が近代の西欧世界で吹き荒れたことは、歴史がかたるところである。
 つまり、一民族一国家は、はじめから神話であった。(p.147)

著者は、こうした西欧的な国民国家の枠組みがもたらした"差別的共存"のまえに、イスラーム世界には「迎え入れる文化」といったものがみられるという。こうした共生関係は、「ことなるものをことなるものとしてあっさりみとめ、相手のもてるものをこちらにもらい、こちらのもてるものを相手にあたえるといった一種の交換である「トレード」関係による共生といってもよいものである」(p.160)というのだ。

そうしたゆきかいの中から、イスラームはうまれてきた。

▼[遊牧的、商業的な]点と線の世界のなかで、目立って大きい点のひとつである都市メッカは、古くから人びとのいきかう商業都市であり、多神教の巡礼地でもあった。さきにみたように、7世紀のはじめにこの地にうまれたムハンマドは、幼少のころから、隊商にくわわってシリア方面まで移動し、商業にたずさわっていたが、長じてイスラームをおこすことになった。西欧の学者たちによって、「砂漠の宗教」とされてきたイスラームは、都市にうまれ、都市から都市へはこばれていった都市の宗教であることは、いまでは定説になっている。
 砂漠性気候とはまったくことなるインドネシアやマレーシアをはじめ、20世紀にはヨーロッパ大陸、アメリカ大陸にいたるまで、全世界に10億をこえるイスラーム教徒が存在することになった。宣教師をもたないイスラームの拡大は、ひたすら「ふつうの人びと」の点と線をたどる生活空間のひろがりのなかで、なされたことであった。
 そこは、これまでみてきたような「移動」をつねとする人びとの世界であり、農民も遊牧民も都市民も、個人で、あるいは集団で、はるか遠隔の地に移動していく。…(略)… 目的が明確でないことさえある。気軽な移動が、ごくありふれた日常になっている。点にたどりつくことが目的ではなく、線上にあること自体が意味をもっている。(pp198-199)

この著者の『ゆとろぎ』と、『イスラームの日常世界』も、ともに何度か読んだ本だが、こちらもまた読みなおしたい。

(3/29了)
 
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本ネタのミニコミ誌『ブックマーク』を編集発行しています(1990年9月創刊~ 昔は隔月発行でしたが、今は年2回発行で、現在87号)。

月刊誌『ヒューマンライツ』で、2014年4月(313号)より「本の道草」を連載中(現在、第37回)。

月刊誌『ヒューマンライツ』で、2004年3月(192号)より2014年3月(312号)まで、本ネタ「頭のフタを開けたりしめたり」を連載(全119回、連載終了)。

『くらしと教育をつなぐWe』誌で、1999年4月(71号)より2014年2月(188号)まで、本ネタ「乱読大魔王日記」を連載(全118回、連載終了)。

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