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サザエさんの東京物語(長谷川洋子)

サザエさんの東京物語サザエさんの東京物語
(2015/03/10)
長谷川洋子

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季刊誌『考える人』の、この冬号の「家族ってなんだ?」特集や、その後ミシマ社のサイトで読んだ編集長インタビュー※がおもしろかったので、以来「考える人」メールマガジンに登録。

メルマガは週に1度で、こないだは『サザエさんの東京物語』が紹介されていて、おもしろそう!読みたい!と思ったら、文庫になったばかりのようで、午後になって本屋へ行って買う。そして、日が暮れるまでに読んでしまった。

これは、サザエさんやらいじわるばあさんを描いた長谷川町子の実妹・長谷川洋子さんが"姉の素顔"、家族の中での町子のことを書いた本。著者は文庫版あとがきで、「私の見た町子像も、妹という限られた立場から見た町子の一面にすぎないこと」(p.222)をことわっている。

長谷川町子は極端な人見知りで知られたというが、それは一家で上京したあとのカルチャーショックがあまりに大きかったのかもしれない。うまれ故郷・福岡での小学校時代、町子の「悪童」ぶりがスゴすぎて、読みながらあちこちで笑ってしまう。帰ってきた同居人に読んで聞かせても笑っていた。

おもしろくて、そして3姉妹の「末妹」が書いたところに、3姉妹の「姉」の私はあれこれと妹のココロを想像し、姉たちの胸のうちを想像しながら、寝るまでにもう1周読む。
姉ちゃんたちが「串だんご」と称した3姉妹は、妹の遅い"自立"で溝ができ、歩いて10分くらいのところに住んでいたのに、以来、姉たちは妹を"許さなかった"らしい。死ぬまで妹と会わず、手紙さえ開封せずに送り返してきたという。

姉たちは、妹が自分の思うように生きたいということの、何が気に入らなかったのだろう。それから死ぬまで会わずに通すほどの怒り(?)は何なんやろう… と、「姉」の私はしばし考えてみたけど、よくわからなかった。

この本を書いた「妹」は、「大学なんてやめてボクの社に来なさい」(p.46)という菊池寛の一言で、大学を途中でやめて文藝春秋へ入っている。もしかして石井桃子と時期が重なってる?と思って石井桃子の評伝の年譜をみたら、数年ズレていた。とはいえ、この頃の文春は、一介の女子大生にも心を配り、入ったばかりの新入り女性に仕事を与えるなど、菊池の度量の大きさがひかる。

そして、姉妹たちの「母」がスゴイ。35才で夫に死なれ、その後、上京して娘たちを育て、戦中に福岡に疎開するも、戦後には再び上京して「姉妹社」(サザエさんの本などを出した会社)をつくったり。娘たちには、毛利元就の三本の矢の話で説教し、「姉妹社という粟粒のような存在でも、三人が心を一つにして邁進すれば、社会に立ち向かうことが必ずできる」(p.67)と熱弁をふるったという。

この母の熱弁については、こう続く。
▼母がいう社会とは、背広を着てネクタイをしめている集団のようで、男社会の中で女性がいかに不利かということを身をもって実感した母らしく、言葉のはしばしにそれが強調された。その影響で、娘達には男性、即、敵という観念が培われたような気がする。(p.67)

この女性たちは、町子が1920(大正9)年うまれ、その姉が一つ上で、妹である著者が1925(大正14)年うまれ、母上はおそらく明治30年頃(1897年頃)のうまれのようで、男社会の中での苦労は、いまよりもずっとずっと大きかったことだろう。

一方で、著者が女子大の数専科へ行きたいとがんばったとき、町子姉はなぜかものすごく反対したらしい。「ダメよ数学なんて、お嫁のもらい手がなくなるわよ」「国文科にしなさい。国文科。女らしくていいじゃない」(p.43)と言い、最後には「大体ね、理数系なんて女がやるものじゃないのよ、元々、男性とは頭の構造が違うんだから」(p.44)とまで言って、大手をひろげて通せんぼせんとする迫力だったと。

小学校時代には男の子との喧嘩も辞さず、ギュウという目にあわせたのが町子だというが、なぜに妹に対しては「女らしさ」だの「嫁のもらい手」だの「頭の構造が違う」などと言ったのだろう?

町子の仕事のあまりの忙しさに、健康を案じて、家族は何かにつけて「こんなしんどい仕事は、もうやめたら」(p.222)と頼んでいた。だが、あるとき町子が「でもね、いい作品ができたときの嬉しさや満足感は、あなた達の誰にもわからないと思うわ」(p.222)と語るのを聞いて以来、著者は口をはさむのをやめたそうだ。

これが作家というものだろうか。

妹の綴った物語を読んだあと、町子自身が書いた"自伝"(かつての朝ドラ「マー姉ちゃん」の原作になったもの)があると知って、その『サザエさんうちあけ話』を図書館で借りてきて読んでみた。

町子の自伝を読んでみても、こんなに仲良くやってきた姉妹の関係を、なぜ姉達は切ったのだろうと、それがやはり気になる。

(3/26了)

※『考える人』編集長・河野通和さんインタビュー(ミシマガジン)
http://www.mishimaga.com/special01/065.html
http://www.mishimaga.com/special01/066.html
http://www.mishimaga.com/special01/067.html
 
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本ネタのミニコミ誌『ブックマーク』を編集発行しています(1990年9月創刊~ 昔は隔月発行でしたが、今は年2回発行で、現在87号)。

月刊誌『ヒューマンライツ』で、2014年4月(313号)より「本の道草」を連載中(現在、第42回)。

月刊誌『ヒューマンライツ』で、2004年3月(192号)より2014年3月(312号)まで、本ネタ「頭のフタを開けたりしめたり」を連載(全119回、連載終了)。

『くらしと教育をつなぐWe』誌で、1999年4月(71号)より2014年2月(188号)まで、本ネタ「乱読大魔王日記」を連載(全118回、連載終了)。

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