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新しい免疫入門 自然免疫から自然炎症まで(審良静男、黒崎知博)

新しい免疫入門 自然免疫から自然炎症まで新しい免疫入門
自然免疫から自然炎症まで

(2014/12/19)
審良静男、黒崎知博

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電子書籍で買って読んだ同居人がめっちゃおもしろいと言うので、私も図書館で(紙の本を)借りてきて読む。この本のキモは、「まえがき」にダイジェストされている。

▼20世紀のおわりから21世紀の今日にかけて、免疫の〝常識〟は大きく変わった。
 たとえば、自然免疫による病原体認識という段階がなければ獲得免疫は始動しないことがわかり、従来の、自然免疫=下等なシステム、獲得免疫=高等なシステム、という図式が崩れ去った。自然免疫と獲得免疫は、どちらが上、下という関係でなく、相互に補完してわたしたちのからだを病原体から守っていたのだ。
 一方、最新の研究では、糖尿病、痛風、動脈硬化、アルツハイマー病など慢性炎症がからむ病気は、免疫システムによって引きおこされる自然炎症が原因とする説が有力になりつつある。そうなると、わたしたちがかかる病気の半数以上は、本来は病原体からからだを守る存在である免疫システムが原因となっている可能性が高い。(p.3)

20世紀終盤のブレークスルーは、それまで"ただなんでも食べるだけの原始的な細胞"と思われていた食細胞(マクロファージや好中球など)が、病原体を感知するセンサーをもっていると分かったことだ。そのセンサーであるTLR(トル様受容体)と、この受容体に結合する特定の物質(リガンド)が、リポ多糖(細菌の細胞壁成分)の認識するTLR4の発見をきっかけに、一気に解明された。
このTLRのほかにも、RLR(リグアイ様受容体)、CLR(Cタイプレクチン受容体)、NLR(ノッド様受容体)などの病原体センサーがみつかった。驚くべきことは、分布の濃淡はあれど、こうしたセンサーが、食細胞のみならずほぼ全身の細胞に存在していると分かったことだ。

▼従来の免疫の見方では、わたしたちのからだを病原体の侵入から守っているのは「免疫細胞」とよばれる特定の細胞だった。ところが、細菌やウイルスを認識するセンサーが全身の細胞に分布しているという事実は、この見方を一変させる。からだのいたるところで病原体が感知され、警報物質が放出されるのだ。免疫は、免疫細胞だけがつかさどるギルド的なシステムではなく、全身性のダイナミックなシステムであることが明らかとなったのである。
 TRLをはじめとするセンサー群の発見は、自然免疫に対する見方だけでなく、免疫そのものに対する見方までを大きく変えたのであった。(pp.35-36)

21世紀目前に新たに判明した「TLRなどのパターン認識受容体で病原体を認識した自然免疫が、獲得免疫を始動させる」(p.175)というストーリーに加え、さらに「TLRなどのパターン認識受容体は、病原体に共通する特定の成分だけでなく、一部の自己成分も認識していた」(p.175)ことが分かった。

▼そうなると、マクロファージ、好中球などの食細胞は、病原体だけでなく内在性リガンドを認識しても活性化し、炎症をおこすことになる。病原体がおこす引きおこす炎症に対して、病原体がかかわらないこの炎症を「自然炎症」という。(p.175)

「まえがき」にあったように、「糖尿病、痛風、動脈硬化、アルツハイマー病など慢性炎症がからむ病気は、免疫システムによって引きおこされる自然炎症が原因とする説が有力になりつつある」(p.3)という話が10章で書かれている。

要は、体内で結晶化したもの(痛風を引きおこす「尿酸結晶」、アルツハイマーを引きおこす「βアミロイド繊維」、動脈硬化を引きおこす「コレステロール結晶」、2型糖尿病を引きおこす「ヒト膵アミロイド繊維」などは結晶構造をとる物質である)は、食細胞が消化しきれずに、結晶が体内に残り、それを処理しようとまた新たな食細胞が食べにきて、消化しきれず…という状態が繰り返されて、どんどん炎症が起こる、「つまり、消化・分解できない結晶は、自然免疫系を過剰に活性化してしまう」(p.181)ことが、こうした病気の原因ではないかというのだ。

▼TLRなどのパターン認識受容体は、病原体も内在性リガンドも認識し、自然炎症もおこせば、獲得免疫も始動させる。そして、自然炎症が行きすぎると炎症性の疾患を引きおこし、獲得免疫に誤作動がおこると、自己免疫疾患を引きおこす。(p.185)

いまでは「免疫と炎症」が大きな学問分野を形成しようとしていて、学会なども「免疫と炎症」名が多くなっているそうだ。

新たに分かったこともある一方、免疫機構にはまだまだ分かってないことがいっぱいある。その分かってないことを探していくところを、この本で垣間見た感じ。「まえがき」には、動的なシステムだということも書かれていて、ヒトのからだの仕組みの不思議を思う。

▼免疫はきわめて「動的」なシステムである。
 無数の免疫細胞が常にからだじゅうを動きまわり、病原体がきたら協同して撃退し、いなくなればすーっと散って、またからだじゅうを動きまわる。天文学的な数の細胞が動きまわっているにもかかわらず、常にからだ全体で調和がとれている。
 さらに、無数の細胞が入り乱れて動きまわる「動的」なシステムであるにもかかわらず、〝アクセル〟と〝ブレーキ〟が整然と階層化され、システムの始動と停止がみごとに制御されている。
 免疫を真に理解するためには、時間的なアプローチと空間的なアプローチの両方が必要だ。どのような細胞が「いつ」「どこで」「どのように」コミュニケーションをとってはたらいているかを、根気よく追いかけなければ真実は見えてこない。
 この複雑さこそ、免疫研究の困難さの象徴であり、また魅力の源泉でもある。(p.4)

著者のお名前「審良」は「あきら」とよむ。著者お二人とも阪大を拠点に研究活動を続けているそうだ。

免疫関係の本といえば、やはり同居人(当時は別に住んでいた)が「めっちゃおもしろい」と言うので私も買って読んだ多田富雄の『免疫の意味論』がある(本棚から出してみたら、もう20年以上前の本である)。免疫と、「自己」「非自己」の関係の話。久しぶりにこれも読みなおしたいし、『新しい免疫入門』の巻末に参考文献としてあがっていた中からは、同じブルーバックスの『現代免疫物語』を図書館で借りてみた。

自分が習った頃の教科書に、免疫がどう書いてあるかを読みなおしてみたい…。

(3/23了)
 
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Author:乱読ぴょん
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本ネタのミニコミ誌『ブックマーク』を編集発行しています(1990年9月創刊~ 昔は隔月発行でしたが、今は年2回発行で、現在87号)。

月刊誌『ヒューマンライツ』で、2014年4月(313号)より「本の道草」を連載中(現在、第39回)。

月刊誌『ヒューマンライツ』で、2004年3月(192号)より2014年3月(312号)まで、本ネタ「頭のフタを開けたりしめたり」を連載(全119回、連載終了)。

『くらしと教育をつなぐWe』誌で、1999年4月(71号)より2014年2月(188号)まで、本ネタ「乱読大魔王日記」を連載(全118回、連載終了)。

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