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からくさ図書館来客簿 第二集 冥官・小野篁と陽春の道なしたち(仲町六絵)

からくさ図書館来客簿 第二集 冥官・小野篁と陽春の道なしたちからくさ図書館来客簿 第二集 
冥官・小野篁と陽春の道なしたち

(2014/03/25)
仲町六絵

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これの第一集を読んだあと、第二集、第三集を予約。カバー装画や口絵に描かれている人物像は、私が字から読むイメージとはやはり違うのだが、それはそれとして。

ちょうど第一集で「小野篁」の名前をおぼえていたら、(こないだ伊丹市美で外骨展を見て読んでみたくなって)別に借りてきた宮武外骨の『筆禍史』(復刻版)や、外骨の甥による『宮武外骨伝』で、小野篁の名前が出てきた。『筆禍史』は、中古時代の筆禍者として冒頭に小野篁の名をあげているのだった。

その部分を外骨の本から引くとこんな具合。
▲小野 篁 仁明天皇の承和四年、小野篁が遣唐使の乗用船につきて、藤原常嗣と争ひたる時「篁忿恙して曰く、朝議定らず、其言を二三にするやと、遂に病篤しと称して復た船に乗らず、西道謡を作りて遣唐の事をそしり、多く忌諱を犯す、嵯峨上皇之を見て大に怒り、其罪を論ぜしむ、仁明帝因つて其官職を免じて庶人となし隠岐に流竄す」といへる事これなり (宮武外骨『筆禍史』、p.2)※
この小野篁の筆禍にまつわる話が、からくさ第二集の六話「小猿の宝物」に出てくる。

「私もかつて遣唐使の副使に選ばれた時、壊れた船に乗れと命じられまして」、「[正使の藤原]常嗣殿の乗った第一船が嵐で大破して渡航は中止になったのですが、次の出航ではその第一船に私が乗り、私が乗っていたほぼ無傷の第二船に常嗣殿が乗る、と決定が下されました」(p.173)と篁が語ると、ちょうどこの世にやってきていた安倍晴明が「『船を交換し、安全な方に正使を載せるべき』という常嗣の奏上が帝に承認されたそうだな」(pp.173-174)と続ける。

「流罪のもともとの発端は、その事件ですよ。私は仮病を使って乗船を拒み、遣唐使制度を批判する詩を書いて、方々にばらまきました」(p.174)という篁に、晴明が「結果、隠岐へ島流しだ。そんな詩を書いて大勢に憎まれれば、帝の意向がどうであろうと庇いきれない。無茶だな篁卿は」(p.174)と言う。

それに対して篁は「放っておいたら他にも犠牲者が出てしまうからですよ。航海技術の見直しもせず、新しい船の建造もせず、危ない方の船に副使を載せればいという発想なんですから」(p.174)と語る。

外骨が記すところの「西道謡を作りて遣唐の事をそしり、多く忌諱を犯す」というその"筆禍"となった漢詩を読んでみたい…。

第八話「鳥めずる若君」に出てくる"研究"の話もおもしろかった。「知りたい」「知りたいから調べる」というわけには、なかなかいかへんのやと嘆く、鳥類学研究所につとめる蜂須賀。国から予算を貰うための実績をつくることを求められている。

▼蜂須賀たちが勤しまねばならないのは、職場の実績に繋がる研究と、世の中のためにすぐ役立つ研究だ。開発予定地における稀少な鳥類の生態を調べたり、鳥の渡りによる伝染病の伝播の可能性がないか調べたり、まずはそういった実利的な研究を優先させねばならない。(p.323)

蜂須賀がやりたくてもやれへん仕事は、「なぜ昭和49年にユリカモメが京都に飛来したのか、どうやって鴨川を選んだのか調べたい」(pp.322-323)ということなのだ。

著者はあとがきで、「「場」の物語が書きたい」と思っていたと綴る。「本と庭園のある、くつろげる場所。死者をも含めた、「信頼できる他者」との緩やかな交流がある場所。京都を舞台に、そんな場が書ければ、と思いました」(p.378)と。

そして私は、著者が参考文献として巻末にあげている本もちょっと読んでみたい。『日本航海術史―古代から幕末まで』とか、『鳥学の100年 鳥に魅せられた人々』とか。

(2/28了)

※復刻版
『筆禍史』は朝香屋書店刊行のものを、崙書房が1974年に影印版で復刻したもの。
扉には、廃姓外骨著となっている。
奥付によると、初版と増補等は、
 明治44年5月1日発行
 大正15年9月7日改訂増補再版印刷
 大正15年9月10日改訂増補再版発行
 大正15年9月20日改訂増補三版発行
 大正15年10月5日改訂増補四版発行
となっている。
 
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Author:乱読ぴょん
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本ネタのミニコミ誌『ブックマーク』を編集発行しています(1990年9月創刊~ 昔は隔月発行でしたが、今は年2回発行で、現在87号)。

月刊誌『ヒューマンライツ』で、2014年4月(313号)より「本の道草」を連載中(現在、第37回)。

月刊誌『ヒューマンライツ』で、2004年3月(192号)より2014年3月(312号)まで、本ネタ「頭のフタを開けたりしめたり」を連載(全119回、連載終了)。

『くらしと教育をつなぐWe』誌で、1999年4月(71号)より2014年2月(188号)まで、本ネタ「乱読大魔王日記」を連載(全118回、連載終了)。

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