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からくさ図書館来客簿 冥官・小野篁と優しい道なしたち(仲町六絵)

からくさ図書館来客簿 ~冥官・小野篁と優しい道なしたちからくさ図書館来客簿
冥官・小野篁と優しい道なしたち

(2013/05/25)
仲町六絵

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だいぶ前から、「ブックマーク」読者の方におすすめだと伺っていたものの、最初に聞いた頃には図書館に見当たらず、しばらくして探してみたら、こんどは予約待ちがたくさんついていて、気長に待っていた。

届いた本をみると、自分では手に取らない感じのカバー装画で、扉も同じ風情のイラストだった。といっても、持ち歩きにカバーをかけたので、絵はほとんど見ずに、字を読む。読み終わってカバーをはずしてみると、このカバーや扉に描かれた姿が主人公の小野篁と時子様のひとつの「イメージ」なのだろうが、私が文章からイメージしたのとはちょっと違っていた。

京都にある私立の「からくさ図書館」で、館長の姿をした冥官(1200年にわたりあの世とこの世を行き来して業務にあたっている役人)の小野篁と、1200年前には臣下と姫君という間柄であった時子様(いまは冥官の見習いとして篁についている)とが、この図書館にやってくるお客の悩みに対応する。
お客の悩みは、「道なし」と呼ばれる、本来ならば天道にあがれるものの現世に未練を残してさまよえる者たちに起因していて… という、分類するならファンタジーものの話。

小野篁は、平安時代の初期に、朝廷に仕える役人でありつつ、夜は六道珍皇寺の井戸を通り道にして冥界と行き来し閻魔大王に仕えていた、という伝承があるそうだ。

そして冥官の見習いというかたちでいまは篁の相棒をつとめる時子様は、かつて幼い身で2年の間、第二代の賀茂の斎院をつとめ、4歳でその任を解かれた後は元斎院として、何の役を与えられることもなく、嫁ぐことも許されず、ひっそりと暮らして、18歳で病死したという人。

この娘のために、時子の父は、「あの子に教えてやってほしい。野狂と呼ばれるあなたが、これまでに見てきたものを。斎院の任を解かれたあの子には、今後いかなる道も用意されておらんのです。ならばせめて、好きなことを学ばせてやりたい」(p.238)と、配流された隠岐でその自然の様子を『隠岐自然抄』に綴った篁を頼んだのである。

その時子の髪は周りと違って赤かったと、作者は設定している。その栗色の髪を恥じていたかつての幼き時子様に、篁は「恥じ入ることはありません」(p.240)と呼びかける。

▼「父に連れられて赴いた陸奥にも、このたび配流された隠岐にも、髪の色が赤みを帯びている男女はおりました。善行を積んでいようが、顔が美しかろうが、まったく関係なく、ある程度の数は生まれてくるのです。周りに似たような者がいないからといって、気に病んではなりません」(p.240)

その篁の話を聞いた時子は、「わたしで、良かった」(p.241)とつぶやく。「百人に一人か、千人に一人か分からないけれど、どうしたって髪の赤い者は生まれてしまうのでしょう? それなら、決して嫁ぐことのないわたしがこういう髪に生まれたのは、ちょうど良いと思う。篁が気に病むなと言ってくれたけれど、普通はやはり黒髪のほうが暮らしやすいもの」(p.241)と。

「道なし」に関わることになってしまった来館者たちの悩みにこたえるやりとりから、そういう篁や時子様の"人となり"が見えてきて、キャラクターを造形していくというのはおもしろいもんやなーと思った。「あとがき」で作者は、「一生懸命生きている現代人と、一生懸命生きていた昔の人が出会ったら、どんな会話になるのだろう、と想像を巡らせながら書いた物語です」(p.346)と記している。

このあと第二集、第三集と話は続くようなので、そちらもまたそのうちに読んでみるつもり。

(2/15了)
 
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Author:乱読ぴょん
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本ネタのミニコミ誌『ブックマーク』を編集発行しています(1990年9月創刊~ 昔は隔月発行でしたが、今は年2回発行で、現在87号)。

月刊誌『ヒューマンライツ』で、2014年4月(313号)より「本の道草」を連載中(現在、第40回)。

月刊誌『ヒューマンライツ』で、2004年3月(192号)より2014年3月(312号)まで、本ネタ「頭のフタを開けたりしめたり」を連載(全119回、連載終了)。

『くらしと教育をつなぐWe』誌で、1999年4月(71号)より2014年2月(188号)まで、本ネタ「乱読大魔王日記」を連載(全118回、連載終了)。

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