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ナンギやけれど… わたしの震災記(田辺聖子)

ナンギやけれど… わたしの震災記ナンギやけれど…
わたしの震災記

(1996/01)
田辺聖子

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小松左京の『大震災 '95 』を読んだら、他にも記録が読みたくなって、図書館の蔵書検索で「阪神・淡路大震災(1995) 」の件名で引っかかった本の中から、伊丹で被災した田辺聖子の震災記を借りてみた。

これは、「私の家も実は少しばかり」(p.8)被害のあった田辺が、大好きな神戸のまちの復興に何か役に立ちたい、何か私のできることでと考えて、チャリティー講演会をしたときの話「ナンギやけれど…」と、書き下ろしの「わたしの震災記」をあわせた本。

1月16日の晩、ほんとうなら「締切の迫った原稿」を徹夜して書かねばならなかったところ、母がみんなを集めて催した新年宴会で軽く酩酊していた田辺は、「まあ、いいや、あしたでいいや」(p.15)という感じで寝てしまって、それで命拾いをした。

翌朝早くの大揺れのあと、仕事部屋をのぞいた田辺は、「大きな重たい書架が全部前かがみに倒れて、その下に私の仕事机がある」(p.17)のを見る。資料の棚もみんな倒れて、書類とガラスが散乱、資料戸棚の上にあった箱は「力任せに放り投げたみたいに、箱の角という角がみんな破れて」(p.17)いたという。
あの地震があったとき、私は木造アパートの2階の部屋に住んでいて、スチール本棚を6本だったか7本だったか並べていた。幸いなことに本とホコリが降っただけで、本棚は倒れずにすんだが、私の住まいを知る複数の人の脳裏には、私が本棚の下敷きになっている絵が浮かんだそうである。

近所の、私が当時通学していた大学では、図書室でも研究室でも軒並み本棚が倒れたから、運が良かったとしかいいようがない。

戦争経験もある田辺は、こんなことを書いている。
▼よく、今度の阪神大震災と戦争とを比べられますけれども、どうでしょう、どっちが上で、どっちが軽かったということは言えないと思います。…(略)…
 ただ一つ、私が、これは空襲よりまし、震災のほうがましと思うのは、いま平和な時代なので男手があることでございます。…(略)…
 それから二つ目は、絶望の気分でございます。戦争中は…(略)お互いに助け合いたくても、自分ももうないんですね。こういうつらいことからみますと、今度は、ほかの町はまだ被災していませんし、ボランティアの人たちがすぐ駆けつけてくれた。…(略)…
 それにもまして私が思ったのは、テレビに延々映し出される被災死したかたがたのお名前ですね。空襲では、これは出ません。もちろんその時代にテレビはありませんけれども、新聞でも、どこそこがきのうの晩、空襲に遭ったという記事は防諜上許されておりませんので、書けません。…(略)…
 昔はそういうことがありますけれど、今度は延々と死者の名前が出た。まだよかった。死んだ人が救われる、葬られるという感じがいたしました。(pp.31-35)

私は当時テレビのない生活をしていたので、新聞に累々と記されていった亡くなった方の名前、行方がわからない方の名前、その紙面を思い出す。名前を刻むことの意味を思う。発災後しばらくはずっとラジオを聞き、そして停電しているところもあるのにと思いながらも、電気をつけたままでないと寝られなかった。暗闇が怖かった。そんなことを思い出す。

この大地震が政府に伝わった情報ルートについての驚きも記されている。
▼人々は新聞で、首相がテレビによって地震の第一報を知ったということにびっくりする。それならわれわれ一般庶民とかわらないじゃないか。政府直結の情報網はないのか。一瞬にして民家が崩壊し、高速道路が壊れ、火の手が上がり、死者はふえつづけた、そのニュースを国民よりおそいスピードで政府や閣僚が知ったということに衝撃を受ける。
 我々が信頼していた政府がそんなにトロい、鈍くさいものであったのか、これではあまり信用ならぬと、認識の革命がおきた。(pp.162-163)

小松左京の本でもふれられていたが、地元紙の神戸新聞の論説委員長であった三木康弘さんの社説「被災者になって分かったこと」※が、この本でも言及されている。

この地元紙の、震災発生からの日々を描いた『神戸新聞の100日』という本があるらしいので、これを今度は読んでみようと思う。

(2/1了)

※社説 被災者になって分かったこと(神戸新聞、1995年1月20日)
http://www.kobe-np.co.jp/rentoku/sinsai/01/rensai/199501/0005491602.shtml
 
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本ネタのミニコミ誌『ブックマーク』を編集発行しています(1990年9月創刊~ 昔は隔月発行でしたが、今は年2回発行で、現在87号)。

月刊誌『ヒューマンライツ』で、2014年4月(313号)より「本の道草」を連載中(現在、第42回)。

月刊誌『ヒューマンライツ』で、2004年3月(192号)より2014年3月(312号)まで、本ネタ「頭のフタを開けたりしめたり」を連載(全119回、連載終了)。

『くらしと教育をつなぐWe』誌で、1999年4月(71号)より2014年2月(188号)まで、本ネタ「乱読大魔王日記」を連載(全118回、連載終了)。

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