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憲法の創造力(木村草太)

憲法の創造力憲法の創造力
(2013/04/06)
木村草太

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「一票の格差」について書いてある比較的新しい本を読みたいと図書館でレファレンスを頼んだら、出てきた本のひとつ。「一票の格差」のことは、この本の二章で「一人一票だとどんな良いことがあるのか?―クイズミリオネアとアシモフのロボット」として取り上げられている。

他の章もついでに全部読んでみる。

この著者は、憲法を論じる際の「思い込み」はアブナイとして、ソウゾウ力を掲げる。
▼危険な「思い込み」の対極にある概念が、「想像力」である。教員に命令拒否権を保障したとき、学校では何が起きるだろうか。東京都の選出議員を30にして、島根県の選出議員数を1にとどめたら、より優れた国会議員を選べるようになるだろうか。日本政府が現時点で完全な非武装を選択したら、国際秩序はどうなるのか。生活保護の給付額が国民年金よりも低かったら、生活保護受給者は生活を営めるだろうか。
 無意識の前提を検証し、想像力を働かせることで、我々は思い込みから解放され、深い思考ができる。実りのある憲法論のためには、何より想像力が重要である。(pp.5-6)
この本は、「最新の判例に現れた憲法問題」をネタにして、これまで当然視されてきた「通説」や「大原則」にあえて疑問を投げかけてみた、という書き方になっている。そこには、著者の「問題解決のためにどんなルールを創造すればよいか」という思いがあるようだ。

▼良い憲法を創るということ。それは、新憲法を制定することでも、憲法を改正することでもない。憲法の原理を理解した上で、そこから、想像力を駆使して、より良き国家・社会のルールを創造することなのである。(p.7)

二章で取り上げられている「一票の格差」問題のほか、各章ではこんな問題が扱われている。

 第一章 君が代不起立問題の視点―なぜ式典で国家を斉唱するのか?
 第三章 最高裁判所は国民をナメているのか?―裁判員制度合憲の条件
 第四章 日本的多神教と政教分離― 一年は初詣に始まりクリスマスに終わる
 第五章 生存権保障の三つのステップ―憲法25条1項を本気で考える
 第六章 公務員の政治的行為の何が悪いのか?―国民のシンライという偏見・差別 
 終章 憲法9条の創造力

なんとなく、"こういう議論なんでしょ"と思っていたことが、ちょっと違った光が当たることで、えらい違って見えてくるような、そんな読後感。

たとえば一章の「ヒノキミ」問題は、思想・良心の自由(19条)の侵害問題というよりも、むしろこれは思想を理由にしたパワハラであって、原告は思想・信条により差別されない権利(14条1項)を主張すべきだったのではないか、といった具合。「自由」の視点が、「労働現場でのハラスメントと差別の禁止」の視点に変わることで、ずいぶん違った印象になる。

あるいは、著者自身も当初は制度導入に賛成であったという裁判員制度について、蓋を開けてみると、裁判員法の1条や裁判所による裁判員制度のPR文書を読むかぎり、足りないのは国民の理解であるとか、国民自身のベンキョウになるとか、何を上から目線で言うとんねんと思える話になっていて、意に反する苦役からの自由(憲法18条)に対してあまりに鈍感ではないかと述べる。現状の裁判員制度は、いわば"ボランティアの強制"という形容矛盾のようなものではないのかと。

判例てなものは、ちょっと近寄りがたいと思っていたが、こんな風に読むこともできて、ツッコミどころもあるもんやなーと、たいへんおもしろかった。同じ著者が、星海社新書(まきむぅさんの『百合のリアル』も入ってるシリーズ)で、『キヨミズ准教授の法学入門 』というのを出してるそうで、こっちも読んでみたい。

(1/21了)


憲法19条 思想及び良心の自由は、これを侵してはならない。

憲法14条 
すべて国民は、法の下に平等であつて、人種、信条、性別、社会的身分又は門地により、政治的、経済的又は社会的関係において、差別されない。
2 華族その他の貴族の制度は、これを認めない。
3 栄誉、勲章その他の栄典の授与は、いかなる特権も伴はない。栄典の授与は、現にこれを有し、又は将来これを受ける者の一代に限り、その効力を有する。

憲法18条 何人も、いかなる奴隷的拘束も受けない。又、犯罪に因る処罰の場合を除いては、その意に反する苦役に服させられない。

裁判員法1条 この法律は、国民の中から選任された裁判員が裁判官と共に刑事訴訟手続に関与することが司法に対する国民の理解の増進とその信頼の向上に資することにかんがみ、裁判員の参加する刑事裁判に関し、裁判所法(昭和二十二年法律第五十九号)及び刑事訴訟法(昭和二十三年法律第百三十一号)の特則その他の必要な事項を定めるものとする。
 
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Author:乱読ぴょん
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本ネタのミニコミ誌『ブックマーク』を編集発行しています(1990年9月創刊~ 昔は隔月発行でしたが、今は年2回発行で、現在87号)。

月刊誌『ヒューマンライツ』で、2014年4月(313号)より「本の道草」を連載中(現在、第44回)。

月刊誌『ヒューマンライツ』で、2004年3月(192号)より2014年3月(312号)まで、本ネタ「頭のフタを開けたりしめたり」を連載(全119回、連載終了)。

『くらしと教育をつなぐWe』誌で、1999年4月(71号)より2014年2月(188号)まで、本ネタ「乱読大魔王日記」を連載(全118回、連載終了)。

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