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日本国憲法 大阪おばちゃん語訳(谷口真由美)

日本国憲法 大阪おばちゃん語訳日本国憲法
大阪おばちゃん語訳

(2014/12/05)
谷口真由美

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"お年玉本"の一つとして選び、渡す前に自分が読む作戦で、カバーをかけて、あまりページを広げないようにして読む。

「大阪弁でしゃべるおばちゃんが憲法について井戸端会議でしゃべったらどないなるか?」(p.10)というコンセプトでできた本で、多少ムリを感じるところもあるが(大阪弁を書きことばにするのは結構むずかしいはず)、憲法条文の「おばちゃん語訳」は、小難しさが減った平たい表現になっている。

たとえば、19条の「思想及び良心の自由」は、おばちゃん語訳ではこうなる。
▼どんな考えもってても、どんなモン信じてても、それをとやかく言われる筋合いはありまへん。(p.63)

21条の「集会・結社・表現の自由、通信の秘密」だと、こうだ。
▼1 いろんな人と集まったり、グループ作ったり、しゃべったり、本だしたり、すべての表現の自由は保障しまっせ。 2 事前に国家とか権力が人の書いたモンをチェックしたらあきまへん。ひとさまとのやりとりも秘密やねんで。(pp.69-70)

こんな具合で条文を「おばちゃん語訳」しながら、「ここポイントやで!」と解説が続く。
19条であれば、「良心ってなんやろか?」と問いかけ、それは「人の内心の自由」全部という見方もある、具体的には沈黙の自由もあると述べ、さらに学校教育の場で日の丸・君が代がなかば強制される状況になっていることに対し、内心の自由が守られていないとの批判があることを紹介している。

▼…一人の人が歌わへんっていう沈黙の自由まで奪ってええとは、憲法からは読み取られへんのとちゃいますやろか? 何で歌われへんのかっていうことをちゃんと考えるほうが大事ちゃいますやろか? 自分が気にならへんからっていうて、誰もが気にならへんっていう理屈は、人権では成り立ちませんわな。(p.65)

21条のところでは、「ヘイトスピーチはアカン!」と小見出しを掲げ、表現の自由は精神的自由権として、憲法が保障している人権のなかでも重要度が高い、民主主義は表現の自由がなければ成り立たない、という話が書かれている。

▼民主主義の大事なところは、実は少数派の意見をちゃんと聞くことにあるんですわ。ということは、少数派が意見を言える場がなかったらあきまへんわな。多数派が、俺らは多数派やねんから俺らが正しい、多数派やから天上天下唯我独尊みたいなことになってしもたら、それは一種の独裁なわけですわ。少数意見までちゃあんと取り入れられる懐の深い民主主義がよろしな。(p.71)

とはいえ、人を傷つけるような表現の自由が無制限なわけではない、ヘイトスピーチの表現の自由がなんとかいう話があるが、ヘイトスピーチは「憎悪表現」というよりは「憎悪煽動」という日本語の方が正しいんちゃうかと師岡康子さんの見解を紹介し、言葉の暴力は実際の暴力まで起こしてしまうことがあるのだから、「これを表現の自由やっていうて守るのはどやねん? って真剣に考えてみてな」(p.73)とおばちゃんは呼びかける。

そんなこんなで、全体におもしろく読んだが、ひとつ、これは意味が逆になってるんとちゃうか?と気になったのが、「文民」って誰やねんな?(p.137)のところ。

66条、「内閣の組織、国会に対する連帯責任」の2項にある「内閣総理大臣その他の国務大臣は、文民でなければならない」の条文について、おばちゃん語訳はこうなっている。

▼2 内閣総理大臣とその他の大臣は、文民(日本に軍人がおるかどうかって言われたら微妙なんですけどな)しかなれまへんで。(p.137)

1項、2項、3項のおばちゃん語訳のあと、「ここがポイントやで!」の箇所が、「「文民」って誰やねんな?」である。おばちゃん語訳にあったカッコ書きも分かりにくかったが、ここの書きようが、まるで文民=軍人のような具合になっている。えー、それは違うやろ~

私の理解では、「文民」とは大ざっぱに言えば"軍人でない人"を指すもので、日本国憲法ができるときにエイゴのシビリアン(civilian)に対応する語としてつくりだされた造語である(これは憲法制定関係の本で読んだことがある)。

「文民」とは誰であるのか、"軍人でない"として、その場合に現役や退役の自衛官は文民に当たるのかという解釈問題があるのだが、谷口さんの書きようでは、そもそも文民=軍人みたいに読めてしまう。

何かがすっ飛ばされていて、まるで意味が逆になってると思う。該当箇所は以下。

▼「文民」ってこれまた、わかったようなわからんような言葉ですなぁ。職業として軍人やってるお人と現役の自衛官や、かつて軍人やったことがあるとか自衛官やったことあるお人やとかいろいろ見解はわかれてますけど、もう既に戦後70年からたってますさかい、職業軍人っちゅうのはいまの日本ではあんまり意味のない規定になりつつありますわ。
 せやけど、現役の自衛官か、過去に自衛官やったことがあるのかというところは大きな点ですわな。現実に、自衛隊出身のお人らが防衛庁長官とか防衛大臣になったことありますさかいな。
 ちなみに、戦前と戦中の歴代29人の首相のうち、13人が職業軍人の出身でしてん。わざわざここで「文民」が出てきたんは、9条2項の「前項の目的を達するため」っちゅう芦田修正ってのがいれられたときに、極東委員会から首相や閣僚は文民でないとアカン! と強い要求がありましてん。せやさかい、9条2項と66条2項はセットでしてん。(pp.137-138)

くわえて、ここの文章では、「芦田修正」と「極東委員会」も、ちょっと説明があったほうがええんちゃうかなーと思う。

あと、28条、「勤労者の団結権、団体交渉権その他の団体行動権」のおばちゃん語訳に続く「ここがポイントやで!」のところで、「働く人」=「お給料もろて生活してる人」(p.95)となってるのは、この条文ではそういうことになるんやろうけど、「お給料もらう」かたちでなくて「働く人」のことについて、うまいこと注釈あったら、なおええなーと思った。

しかし、「文民」は気になる。"お年玉本"として、どないしよか。

(1/6了)
 
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Author:乱読ぴょん
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本ネタのミニコミ誌『ブックマーク』を編集発行しています(1990年9月創刊~ 昔は隔月発行でしたが、今は年2回発行で、現在87号)。

月刊誌『ヒューマンライツ』で、2014年4月(313号)より「本の道草」を連載中(現在、第42回)。

月刊誌『ヒューマンライツ』で、2004年3月(192号)より2014年3月(312号)まで、本ネタ「頭のフタを開けたりしめたり」を連載(全119回、連載終了)。

『くらしと教育をつなぐWe』誌で、1999年4月(71号)より2014年2月(188号)まで、本ネタ「乱読大魔王日記」を連載(全118回、連載終了)。

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