読んだり、書いたり、編んだり 

英子の森(松田青子)

英子の森英子の森
(2014/02/10)
松田青子

商品詳細を見る

春に読んだ松田青子の『スタッキング可能』がおもしろかったんで、この人の新作『英子の森』も読んでみたいなーと思っていたが、近所の本屋に見当たらず、図書館ではぞろぞろ予約がついていたので、しばらく忘れていた。

気がつくと図書館の本が空いてたので、借りてきて読む。本のてっぺんから中ほどまでが表題作で、これは、"英語ができたらグローバル社会でバッチリ"みたいな沼に足を取られた人たちの話。親も先生も、テレビも広告も、「英語ができると後でいいことがある」「英語は新しい世界につなげてくれる扉」だと言った。それで英子はますます英語を好きになり、ずっと英語を勉強してきたのだ。でも、今は思う。「じゃあなんで今のわたしはこんなところにいるんだろう。」(p.16)

「英語を活かせるお仕事☆」を求めてきたが、結局のところ、英語を使う仕事と英語を使わない仕事の時給の差はたった50円。
▼はじめて英語を使う仕事をしてからずっと、英語を使っているのではなくて、英語を使わせてもらっているような気がしていた。英語を使うことのできる仕事を、見えない誰かに用意してもらっているような気がするのだ。使わなくていいものを使いたい使いたいと思う、その気持ちを見えない誰かに見透かされていて、ねえ、そんなに使いたいんだったら、50円差でもいいですよね、だって使いたいんでしょうあなた、それを、英語を。そう思われている、そう蔑まれているような気がした。(pp.18-19)

紹介された「英語を使う仕事」に行って、英子の口から出るのは同じフレーズの無限ループ。例えばある日はこんなだ。「こんにちは」「お名前は?」「今日のパンフレッ トです」「はい、どうぞ」「良い一日を」。これって英語を使ったことになるのかと英子は思う。

▼不思議だった。いいね、かっこいい、うらやましい。英語ができると言うと、英語を使う仕事に就いていると知ると、みんなそう言う。けれどそのときその人たちの頭の中に浮かんでいるのはイメージの英語だ。本当に恵まれた状態で働けている人たちはほんの一握りで、一方の娘は、今、電話代も出してもらえない。プライドの持ちようがなかった。自分を誇ることができなかった。(p.55)

たぶん"英語"に限らない話なんやろうなーと思いつつ(ちょっと前だったら法科大学院がそんな感じか)、"英語"が象徴的に感じられる話だった。

「英子の森」や、その他の収録作を読んでいると、アレに似てると思う。時季になれば新聞にどっさり折り込まれてくる塾の広告の謳い文句、あるいは、電車内で見かける大学や専門学校や自己啓発の広告にあふれる魔法の呪文。今これをやっておけば未来は安泰というような、あるいは、これをやっておかないと世界に乗り遅れるというような、 脅しにも聞こえるアレ。

松田青子は、そんなアレコレへの違和感を書きとめる。その違和感の出どころを明らかにしようとする。そこのところが私にはおもしろい。

この本を読んだら、『スタッキング可能』をもう一度読みたくなって、図書館でまた借りてきた。

(11/12了)
 
Comment
 
 






(編集・削除用)


管理者にだけ表示を許可
 
Trackback
 
 
http://we23randoku.blog.fc2.com/tb.php/5132-505bc4c5
 
 
プロフィール
 
 

乱読ぴょん

Author:乱読ぴょん
    乱読ブログバナー
本ネタのミニコミ誌『ブックマーク』を編集発行しています(1990年9月創刊~ 昔は隔月発行でしたが、今は年2回発行で、現在87号)。

月刊誌『ヒューマンライツ』で、2014年4月(313号)より「本の道草」を連載中(現在、第42回)。

月刊誌『ヒューマンライツ』で、2004年3月(192号)より2014年3月(312号)まで、本ネタ「頭のフタを開けたりしめたり」を連載(全119回、連載終了)。

『くらしと教育をつなぐWe』誌で、1999年4月(71号)より2014年2月(188号)まで、本ネタ「乱読大魔王日記」を連載(全118回、連載終了)。

amazonへリンク

 
 
最新記事
 
 
 
 
最新コメント
 
 
 
 
カテゴリ
 
 
 
 
Google検索
 
 


WWW検索
ブログ内検索
Google
 
 
本棚
 
 
 
 
リンク
 
 
 
 
カウンター
 
 
 
 
RSSリンク
 
 
 
 
月別アーカイブ