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失職女子。 ~私がリストラされてから、生活保護を受給するまで(大和彩)

失職女子。 ~私がリストラされてから、生活保護を受給するまで失職女子。
~私がリストラされてから、生活保護を受給するまで

(2014/09/25)
大和彩

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この本も、後ろに数人の予約待ちがあって、先に読む。

生活保護について比較的若い女性が書いた本といえば、1年くらい前に『生活保護とあたし』を読んだことがある(この本のことは、『ヒューマンライツ』誌2013年10月号で書いた)。

「リストラや契約打ち切りで無職になり、転職活動では100社近くから不採用になり、貯金もすべて使い果たし、生活に困って途方に暮れていました」(p.1)という著者は、借金・風俗勤務・自死の3つのうちどれにしようかと思い悩んでいたときに、生活保護という制度を知る。

ウワサによると申請はコワくて物々しいようだが、申請するからには不備がないよう、ストレスも最小にとどめたいと考えた著者は、生活保護を申請した人の「実践的アドバイス」を求めて、図書館で勉強に励む。しかし、あまり参考になる本がなかったという。

▼「もっとこう、つい最近まで働きながらひとり暮らししていた女性がある日突然、『ああ、生活保護申請しなきゃ! けど、どうすればいいかわかんない!!』ってときに参考にできて、経験者から『こういうふうにやってみたら、なんとかなったよ!』みたいにアドバイスをもらえる本、ないのかなぁ。できれば、明るいタッチで書かれたもので。あればすっごく読みたいのになぁ」
 という一年前の私自身の渇きが、この本にはふんだんに活かされています。(p.2)

37歳の女性が書いた、そんな本。もとは、いろいろ「吐きだす」ためにブログ(※)に書かれたもの。
そもそも、著者が「借金・風俗勤務・自死の3つのうちどれにしようか」と思い悩んでる時点で、なんで生活保護という制度は「こういうときに使える」と思われていないのか?と思う。憲法25条とか朝日訴訟が教科書に載ってても、「こういうときに使える」という知識になってなかったら意味ないでと思う。

著者は実家との折り合いが悪く、「親に養ってもらうのではなく、自分の食いぶちを自分で稼ぐ」という夢を実現させるため、就職先を選ぶにあたっての最優先事項は「安定」だった。

▼スーツを着て社畜となり、馬車ウマのように働くのは、まったくやぶさかではなく、むしろ「誰よりもがんばって働きたい」と希望していました。…(略)
 そんな願いを胸に秘め、初めて職を得た先は、とっても安定した企業だったものの、私の身分はあんまり安定しない契約社員でした。一年ごとの更新です。
 それでも、社会保険や厚生年金に加入できる職に就けただけで、私は大満足でした。(pp.12-13)

契約社員から正社員になれて、「安定」を手に入れた!と思ったものの、体調を崩して、1年で休職を余儀なくされる。「病気になったのだから、辞めて実家に戻れ」という親の言葉に従ってしまったことは「人生最大の失敗」だったと著者は書く。

子どもの頃から、「母の金切り声と父のタバコの煙にまぎれてどうにか自分の存在を消し、日々をやり過ごす場所」(p.14)だった実家に戻ってしまったことで、著者は「人間関係の溜め」「精神的な溜め」「お金の溜め」を失っていく。

「死ぬ以外の方法でここから抜け出すには、引っ越すしかない、そのためにはお金を貯めなくては」(p.23)と著者は新たに仕事を探し、精神科の主治医には両親との別居を勧められて、貯金をはたいてアパートを借りる。その後、正社員として採用された会社を、わりと簡単にクビになり、もうあとがない状況で、契約社員の仕事についた。

だが、長期が前提のはずだったその契約社員の仕事を、3ヵ月であっさり切られてしまう。すでに貯蓄はくいつぶし、契約の仕事の給料でぎりぎりの生活をしていた著者は、「月末の家賃が払えない」状況に陥る。何か救済措置はないかと尋ねた著者が知ったのは、社会福祉協議会の「総合支援金貸付」だった。住むところはあるが、雇用保険の受給資格がない人を対象にしたもので、社協の審査に通れば原則3ヵ月お金が借りられる。

その後、生活保護をうけることになった著者は、あとから振り返って、この「総合支援金貸付」は生活保護を受けさせないための水際作戦の一種ではないかと考えているが、ともかく、この時点では、まさに一筋の光明だった。

とはいえ、「総合支援金貸付」も借金は借金。お金が入るあてがなければ、「つなぎ」にはならない。

福祉事務所で生活保護の提案を受けたときに、著者はとにかくそれがどんな制度なのか分からなかった。図書館でも本を探してあれこれ調べているが、何より著者があたった福祉の職員・諸葛孔明子さん(仮名)や、職安の職員・ハローワー子さん(仮名)が、真っ当に仕事をする人だった。生活保護の申請のために役所へ行ってイヤな思いをしたという話は、それこそ山のようにあるので、こんな職員さんばかりであれば、「借金・風俗勤務・自死の3つのうちどれにしようか」と思い悩む人がどんなにか安心できるのにと思った。

生活保護の申請にあたり、著者がいちばん怖れていたのは、扶養照会で両親に連絡されてしまうことだった。結果的には「虐待親への連絡なし」で申請することができ、どれだけ著者は安堵したことか。

そして、生活保護を受けて、生活をたてなおそうとしている著者は、かつての自分をかえりみて、「安定」というものを考えなおしている。

▼できるだけ多く納税するために真摯に働いていたら、結果として保護を必要としなくなっていた…というのが未来の理想です。 見たことなかったからわからなかったけど、あの頃欲しくてたまらなかった「安定」は、私が想像していたのとは、かなり違った形をしているのかもしれません。
 「私なんかでも、生きていていいんだ」
 という、じわじわ溜まっていくような心のありよう。
 ひょっとして、これが「安定」ってやつですか?(p.217)

「生きていていい」、その最後の支えになる制度が生活保護なのだと思うけど、なんでここまで知られてないのか…。

表紙と各章の扉にある4コママンガ(イラスト:小山健)がオモロイ。

※著者のブログ
http://haguki-lovey.hatenablog.com/

(11/2了)
 
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乱読ぴょん

Author:乱読ぴょん
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本ネタのミニコミ誌『ブックマーク』を編集発行しています(1990年9月創刊~ 昔は隔月発行でしたが、今は年2回発行で、現在87号)。

月刊誌『ヒューマンライツ』で、2014年4月(313号)より「本の道草」を連載中(現在、第37回)。

月刊誌『ヒューマンライツ』で、2004年3月(192号)より2014年3月(312号)まで、本ネタ「頭のフタを開けたりしめたり」を連載(全119回、連載終了)。

『くらしと教育をつなぐWe』誌で、1999年4月(71号)より2014年2月(188号)まで、本ネタ「乱読大魔王日記」を連載(全118回、連載終了)。

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