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エール! 3 (原田マハ、日明恩、森谷明子、山本幸久、吉永南央、伊坂 幸太郎)

エール! 3エール! 3
(2013/10/04)
原田マハ、日明恩、森谷明子、山本幸久、吉永南央、伊坂 幸太郎

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『エール! 1』『エール! 2』に続き、図書館でしばらく待ってて読んだ本。"お仕事小説アンソロジー"の3集めである。

・美術品輸送・展示スタッフ
・災害救急情報センター通信員
・ベビーシッター
・農業
・イベント会社契約社員
・新幹線清掃スタッフ

という仕事につく人たちが描かれている。

どの書き下ろしもおもしろかったが、とくに印象にのこったのは、日明恩(たちもりめぐみ、と読むそうだ)が災害救急情報センター通信員、つまりは119番通報を受けて、その内容を聞き取り、必要な救急車や消防車に出場指令を出す仕事をする人を描いた「心晴日和」と、伊坂幸太郎が到着した新幹線を次の発車までのわずかな時間で清掃するスタッフたちを描いた「彗星さんたち」。
電話に出た直後は悪戯電話かと疑った通報が、「無音通信」何らかの理由で声を出せない状態の人からの電話だと気づいた主人公の心晴(こはる)が、「もしもし、大丈夫ですか? 聞こえているのなら、受話器を三回、指で叩いてください」(p.69)と呼びかけながら、通報者の場所を特定しようと電話の向こうに聞こえる音を聞き取って、現場近くまで急行した救急車の隊員に、「通路に面した団地の一階の部屋にいます。窓は開いていて、覗けば姿が見える状態です」と引き継いだ。呼吸困難を起こしていた通報者は、救急隊員に間もなく発見され、病院へ搬送される。

現場隊員だった心晴は、通信員に異動になり、不承不承働いていた。かかってくる電話は救急や消防の緊急通報ばかりでなく、グチ電話のようなものもある。現場手当もなくなって収入も減ったうえに、なんでこんな電話の相手を…と思うことも少なからずあった。しかも現場にいた頃には、通信員に対してちゃんと司令しろよと思っていたからなおさらだ。通信員も大事な仕事とは思いながら、現場に急行する同僚へのひがみのようなものと、自分に与えられた仕事に対する不満があった心晴。

無音通信で搬送された方が、治療により小康を得て、通報を受けてくれた人にありがとうと伝えてほしいと言っていることを、現場隊員の同期がメールで心晴に伝えてくれる。そのメールを、消さないようにと大切にフォルダにしまう心晴の姿がよかった。

「彗星さんたち」の話の語り手は、人としゃべるのが苦手で、掃除だけをしてればいいとこの仕事を選んだ「わたし」。先輩や同僚たちとの日々のやりとりから、これはただ掃除だけじゃない仕事なのだ、きめられた時間内にちゃんとやる仕事なのだと「わたし」は教えられる。

長い長い新幹線の各車両とトイレなどを分担して、次の発車までのかぎられた時間のなかで、きれいに掃除をするこの仕事は、チームワークでもある。実際に仕事をしている人たちの思いと、その仕事がスポットライトを浴びて伝えられるときのストーリーはまた別で、そのあたりが少し語られている。

▼最近は、わたしたちの新幹線清掃の仕事も雑誌やテレビで取り上げられることが増えた。自分たちのことが評価されるのは光栄で、誇らしいことではあるものの、七分間でぴかぴかに。世界最速の清掃! とその、「仕事の速さ」や「効率性」に注目されることが多いのも事実だ。もちろん、わたしたちは精一杯頑張って、その、「七分間の清掃」をやり遂げているのだから、褒められればうれしいが鶴田さんが言うように、「十五分かけて掃除していいのだったら、十五分かけて、もっときれいにできる」という思いもある。(p.290)

「効率性」や「仕事の速さ」ではないところが穏やかに描かれているところがよかった。

(10/30了)
 
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Author:乱読ぴょん
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本ネタのミニコミ誌『ブックマーク』を編集発行しています(1990年9月創刊~ 昔は隔月発行でしたが、今は年2回発行で、現在87号)。

月刊誌『ヒューマンライツ』で、2014年4月(313号)より「本の道草」を連載中(現在、第37回)。

月刊誌『ヒューマンライツ』で、2004年3月(192号)より2014年3月(312号)まで、本ネタ「頭のフタを開けたりしめたり」を連載(全119回、連載終了)。

『くらしと教育をつなぐWe』誌で、1999年4月(71号)より2014年2月(188号)まで、本ネタ「乱読大魔王日記」を連載(全118回、連載終了)。

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