読んだり、書いたり、編んだり 

もぎりよ今夜も有難う(片桐はいり)

もぎりよ今夜も有難うもぎりよ今夜も有難う
(2010/07/30)
片桐はいり

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いま受けてる仕事や同居人の里への往復(親戚の婚儀のため)で疲れ気味のところへこの気温差で風邪気味になり、よれよれのへなへなで休んだ夜に、ちらちらと読んで、つい読みおわってしまう。

この本、本読みで映画も好きな友より「おもしろーい」と聞いており、前にも片桐はいりの本はおもしろかった記憶があって(『わたしのマトカ』など)、特急での往復のお供に買っていこう!と思っていた。出る前に調べたら、8月に出た文庫だというし、大きい本屋へ行けばあるだろうと思っていたところが!!

とりあえず往路の朝、最寄り駅のA書店へ寄る(片桐はいり1冊もなし)→梅田のB書店へ寄る(同じく1冊もなし)→大阪駅前のC書店へ寄る(片桐はいりの過去文庫2冊はあるが『もぎり』がない!店員さんに聞くも在庫なし)→大型のD書店へ寄る(ここも過去文庫2冊はあるが『もぎり』がない!店員さんに聞く時間はなかったのであきらめる)

…という経緯で、なんと4軒も本屋をまわったのに、つい2ヵ月ほど前に出た新刊文庫がなかったのである。そんなもんなのか?過去文庫を2冊置くなら、8月の新刊も置いてほしかった。そんなこんなでお供にできなかった『もぎり』を、帰ってきてから図書館に予約して入手。図書館にあったのは単行本(これはキネマ旬報社刊)だった。
片桐はいりは、「みずからの出自を問われたら、「映画館の出身です!」と胸張ってこたえたい」(p.6)という人である。18の頃から銀座の映画館でアルバイトの"もぎり嬢"として約7年間働いていたそうである。その宝物のような7年間、「毎日のように映画館に通い、好きな時に劇場に入り、好きな映画を何度も観た」(p.9)という。

そんな片桐が、映画館や映画にまつわる"思い出話"を綴ったのがこの本。本のタイトルも各章のタイトルも、映画タイトルのもじりである。

▼この国にはまだどんな小さな町にも必ず、映画館とそれをめぐる記憶がうもれているもので、「この町に映画館ありませんか?」のひと言から、わたしはほんとうに多くの得がたい体験をさせていただいた。…(略)…
 …ほんとうに、「この町に映画館ありませんか?」とたずねると、ゆきずりの町の人たちはたいてい嬉々として「ここにあった」「いや、あすこにあった」と走り出し、そしてその町の思い出や、自らの映画との思い出などを幸せ顔で語りはじめるのだ。そんな姿を見るたびに、わたしはいつもあらためて映画の力を思い知らされた。(pp.235-236)

私には、とりわけ関西ネタがおもしろかった。「偶然の旅行記」「そして船は往く」「陽のあたる花道」「君が名は」「浪花の夜の物語」と綴られた、大阪から明石、そこから養父、豊岡、天橋立、舞鶴とめぐった数日のこと。

舞鶴の西と東がそんなに違うとは!ずいぶん前に舞鶴へドライブしたことがあり、ひょんなことから肉じゃがの発祥を調べていて舞鶴が呉と本家元祖論争のようなことをやっているのも聞き知っていたが、西舞鶴と東舞鶴が違うというのは発見だった。片桐は「西と東は違う町やからね」と道行く人に言われたそうである。

▼田辺城の城下町として栄えた西舞鶴と、軍港として、戦後は引き揚げの港として発展した東舞鶴と、確かにまるで、違う町、である。…(略)
 …舞鶴にはロシアからの渡航者が多い。少し前までは、港から中古車や古自転車を山積みにして帰ってゆくロシアや北朝鮮の船がたくさん見られたそうだ。舞鶴八千代は、そんな国境の町を守る、たった一つの映画館だった。(pp.161-162)

私の舞鶴イメージのそもそもは、死んだ祖母がよく歌っていたこともあって「岸壁の母」である。復員を待つ母の歌なのだということも、祖母に聞かされたのか、うっすら記憶があった。それも、ドライブしたときに見た赤煉瓦の建物も、呉と肉じゃが発祥地をどうこう言ってるのも、東舞鶴なのだった。

そう知ってみると、まるで違う町だという西舞鶴にも、いちど足を運んでみたいものと思う。

(10/15了)

文庫版はこれ

もぎりよ今夜も有難うもぎりよ今夜も有難う
(2014/08/05)
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本ネタのミニコミ誌『ブックマーク』を編集発行しています(1990年9月創刊~ 昔は隔月発行でしたが、今は年2回発行で、現在87号)。

月刊誌『ヒューマンライツ』で、2014年4月(313号)より「本の道草」を連載中(現在、第37回)。

月刊誌『ヒューマンライツ』で、2004年3月(192号)より2014年3月(312号)まで、本ネタ「頭のフタを開けたりしめたり」を連載(全119回、連載終了)。

『くらしと教育をつなぐWe』誌で、1999年4月(71号)より2014年2月(188号)まで、本ネタ「乱読大魔王日記」を連載(全118回、連載終了)。

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