読んだり、書いたり、編んだり 

街の人生(岸 政彦)

街の人生街の人生
(2014/05/31)
岸 政彦

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あまり"編集"されていないインタビュー集。収録されているのは、5人の人たちの「自分の人生の語り」。それは、普通の人生の記録であり、「普遍的な物語」である。

著者(というべきなのか、編者というほうがまだ近いような気もするが)は、「はじめに」でこんなことを書く。
▼私たちはあらかじめ決められた状況に閉じ込められ、その範囲のなかで、必死に最良の選択肢を選んで、ひとり生きるしかないのです。ここにあるのは、私たちと同じ普通の人びとが、たったひとりでさまざまな問題に取り組んだ、普通の、しかし偉大な物語なのです。(p.iv)

自分の人生を語った人たちと、著者はたまたま出会っている。たまたま出会った人との1、2時間の会話を記録するのは、「それが私たちの人生の、なにか非常に本質的なことと関係しているように思われるから」(pp.iv-v)という。

▼「私」というものは、必ず断片的なものです。私たちは私から出ることができないので、つねに特定の誰かである私から世界を見て、経験し、人生を生きるしかないのです。(p.v)

ここの箇所は、齋正弘の『大きな羊のみつけかた』で語られていることと似ている気がした。描かれた絵にあらわれているのは、それを描いた人が見ている世界であって、その絵を見る「私」が知っている世界とは違うものがそこにある、ということと。

5人の語りは、どれも、おもしろかった。スゴイ人の話ではなくて、ふつうの人の話。
5人目の語りとして収められている「西成のおっちゃん」矢根さん(仮名)は、私の知っている人だったから、その声を思い出しながら読んだ。ほんのわずか、これまでの人生の断片を聞いたことはあったけれど、この本で語られているほど多くのことは聞いたことがなかった。

矢根さん(仮名)は、お風呂に入っているときに一人でスッと死んでしまった。西成へ、そうしょっちゅう行くわけでもない私が、その亡くなられた日の午後に、紙芝居劇むすびのマネージャーさんと会っていて、その喫茶店に矢根さん(仮名)もいた。雨が降り出した中を福祉マンションへ帰っていく矢根さん(仮名)を「気をつけてー」と見送った。その翌日に亡くなったと聞いて、昨日会ったのが最後になるなんて思わなかったなーと、それは強く感じた。

ほかの4人の人たちの語りも、じーっと読んだ。たとえば、「りかさんにとって、人生でいちばん大切なモノって…」とインタビュアーが問うているところなんかで、私にとって、それは何やろなーと考えたりした。今の私と近い歳の人の語りでは、同じころに私は何をしてたっけなーと考えもした。

(9/12了)

*この本のテキストは、組版の問題なのか、なにがどうしたのか、1行の中でまるでだるま落としのように1文字だけ横に飛び出しているところがあったり(54ページの最後の行)、不思議なところで行間が広く空いていたり(たとえば109ページの1-2行目)、どうやったらこんなんなるんかなと思った。

口語が文字化されているので、通常の書きことばと違うところがいろいろあるが、それでも以下のところは、やはり誤脱字かなと思った
p.101 何かヤなところが見えりとか → 見え【た】りとか
p.105 入店して当時なんて → 入店し【た】当時なんて
 
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Author:乱読ぴょん
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本ネタのミニコミ誌『ブックマーク』を編集発行しています(1990年9月創刊~ 昔は隔月発行でしたが、今は年2回発行で、現在87号)。

月刊誌『ヒューマンライツ』で、2014年4月(313号)より「本の道草」を連載中(現在、第37回)。

月刊誌『ヒューマンライツ』で、2004年3月(192号)より2014年3月(312号)まで、本ネタ「頭のフタを開けたりしめたり」を連載(全119回、連載終了)。

『くらしと教育をつなぐWe』誌で、1999年4月(71号)より2014年2月(188号)まで、本ネタ「乱読大魔王日記」を連載(全118回、連載終了)。

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