読んだり、書いたり、編んだり 

季節のうた(佐藤雅子)

季節のうた季節のうた
(2014/05/08)
佐藤雅子

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図書館で本を返したあと、珍しく受けとる予約本もなく、面陳棚をぶらーっと見ていたら、この本が目に入って、なんとなく借りてきた。文庫カバーの袖にある著者略歴を見ると、1909年うまれ、1977年に亡くなったこの人の夫は、元人事院総裁の佐藤達夫氏とあった。

佐藤達夫の名は、『日本国憲法の誕生』で見たおぼえがある。法制局部長で、日本国憲法がつくられていくときに深く関わった人だ──と、思っていたら、一月から順に、月ごとの暮らしぶりを書いた中に、三月「憲法起草のころ」という文章があった。

▼昭和22年3月4日の晩、これまでだまって家をあけたことのない主人が、いつまで待っても帰ってまいりません。物騒な時代のことで、私と娘たちは一睡もせず朝を迎えたのでございました。(中略)
 6日の朝、主人の帰りを待ちながら立ちつくしておりますと、坂道をはうようにしてのぼってくる主人の姿が見えました。とても生きた人間の顔ではありません。GHQ(当時の占領軍総司令部)で一晩、首相官邸で一晩、二日二晩ぶっつづけの徹夜作業だったとのことでございました。当時は何の仕事か主人は一言も申しませんでしたが、ずっとあとになって、それが憲法起草の仕事のはじまりだったことを知りました。(pp.58-59)
著者が、こうした「主人」の仕事のことを書いている箇所は他にはない。文中に出てくる「主人」は、食事に神経質で、そして花が好きで、たまの休みには早朝から弁当持ちで山へ出かけるような人であったらしい。「主婦」たる著者が書きとめているのは、食事の用意や、季節の家事のこと、母や姑のおしえのことなど。

この世代の「上流」の家庭はこのような言葉遣いがふつうだったのか、著者の書く文章は「ございます」「いたします」調で、出てくる料理がまたハイカラで、バターのことを「バタ」と書く『暮しの手帖』のレシピを思いださせるものがあった。

文庫カバーの裏表紙には「昭和40から50年代、婦人誌等で家族への愛情に溢れた料理やすみずみまで行き届いた暮らしぶりを披露し、女性たちの憧れの的だった主婦・佐藤雅子さん」とある。昭和40~50年代に、どんな人たちが著者に憧れたのだろうなーと想像した(もしかしたら、専業主婦がいちばん多かったという団塊の世代?)。

ひんぱんに出てくる料理レシピのなかで、お菓子はちょっと手が出ないが、保存食の一部はわりとかんたんにできそうだったので、こんど『私の保存食ノート』というこの著者の本を見てみたい。

(8/23了)
 
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本ネタのミニコミ誌『ブックマーク』を編集発行しています(1990年9月創刊~ 昔は隔月発行でしたが、今は年2回発行で、現在87号)。

月刊誌『ヒューマンライツ』で、2014年4月(313号)より「本の道草」を連載中(現在、第43回)。

月刊誌『ヒューマンライツ』で、2004年3月(192号)より2014年3月(312号)まで、本ネタ「頭のフタを開けたりしめたり」を連載(全119回、連載終了)。

『くらしと教育をつなぐWe』誌で、1999年4月(71号)より2014年2月(188号)まで、本ネタ「乱読大魔王日記」を連載(全118回、連載終了)。

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