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上野千鶴子の選憲論(上野千鶴子)

上野千鶴子の選憲論上野千鶴子の選憲論
(2014/04/17)
上野千鶴子

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父ちゃんから「読むか」とまわってきた本。上野千鶴子が、2013年9月26日に横浜で講演したときの講演録をもとに大幅に書き換えた、というつくり。講演は、横浜弁護士会・日本弁護士連合会主催の「憲法問題シンポジウム第3弾」として開かれたもの。

タイトルの「選憲」とは、現行憲法のええとこも悪いとこも検討したうえで、「選び直しましょう」ということらしい。改憲でもなく、護憲でもなく、「意識して、今の憲法を選ぶ」のだと。

改憲だ!という自民党の憲法草案と、日本国憲法の条文を照らして、かなりツッコミを入れている。一方で、護憲を主張する人たちにひそむエリート主義にもツッコミを入れている。
▼もしたったいま、九条改正を焦点にして国民投票をやったとしたら?(中略)東アジアの国際情勢が緊張するなかで、領海警備を海上保安庁に任せておけない、国防軍をつくれという声に流される愚民大衆がいるかもしれないと思う人たちも、いるかもしれません。九条を守りたい一心で、これを国民的審判にかけることそのものに反対する人々…こういう愚民民主主義観を持つのが、エリート主義者です。
 わたしは主権者の一人です。主権者の一人として、主権者の権利を拡大してほしいと思います。ですから、代議制民主主義だけでなく、住民投票や国民投票のような市民の政治参加の機会は、ないよりあるほうがよいと思います。そのなかでもし愚かな選択をしたとしても、それでも主権者の権利は、大きいほどよいと思います。
 民主主義とは、わたしたちの身の丈に合わせてよいほうにも悪いほうにも働く場合があります。(pp.148-149)

この「愚民民主主義」のところには、脱原発都民投票に不安を覚えて、これに反対する慎重派の人たちがいた、という話が引き合いに出されている。なんとなく、べてるの家の本なんかで書かれている「失敗する権利」のことを思った。

上野は冒頭で、「専門家ではありませんが、わたしも主権者のひとりですから、憲法はわたしの運命に深くかかわっています」「主権者であれば、誰でも憲法について何かを言う資格があると思います」(p.7)と語っている。この「主権者だから」「主権者であれば」のところに、私はちょっと引っかかってしまった。

日本国憲法での「主権者」は、「国民」ということになっている。上野もあとのところで触れているが、憲法にある「国民」「日本国民」は、英語の表現ではpeopleだった。これがあたかもnationであるかのように「国民」と訳されたのは意図的なことであったと、『日本国憲法の誕生』でも、そのあたりの話が書いてあった。peopleが「国民」と訳されたことで、この憲法において「国民」とは「日本国籍を持った人々」に限定されてしまった。

上野は「選憲」のひとつの提案として、「日本国憲法の「国民」を、もとにもどしてすべて「日本の人々」「日本に住む人々」に変えること」(p.142)を述べている。そこのところを考えているのは分かっても、やたら「主権者としてわたしは…」というのが出てくると、それって、上野さん、どっちの意味で使ってる?と思ってしまうのだった。

ひとつ、かなり気になったのは、「いまどきの若者が書いた、憲法前文」(p.162~)のところ。2002年に高校生だった福岡亜也子さんが書いた作品を紹介して、その福岡さんは2014年に29歳になっているはずですときて、そのあとに「今年29歳になるはずの福岡さんは、新進気鋭の社会学者として売り出した古市憲寿くんと同い年です」(p.166)とくる。

同い年の人を指して、女性は「さん」で、男性は「くん」なのかーと、そのかなりジェンダーからフリーでない呼称に、なんだか残念な気がした。

(8/21了)
 
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Author:乱読ぴょん
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本ネタのミニコミ誌『ブックマーク』を編集発行しています(1990年9月創刊~ 昔は隔月発行でしたが、今は年2回発行で、現在87号)。

月刊誌『ヒューマンライツ』で、2014年4月(313号)より「本の道草」を連載中(現在、第40回)。

月刊誌『ヒューマンライツ』で、2004年3月(192号)より2014年3月(312号)まで、本ネタ「頭のフタを開けたりしめたり」を連載(全119回、連載終了)。

『くらしと教育をつなぐWe』誌で、1999年4月(71号)より2014年2月(188号)まで、本ネタ「乱読大魔王日記」を連載(全118回、連載終了)。

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