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誰でも手話リンガル(松森果林)

誰でも手話リンガル誰でも手話リンガル
(2010/12)
松森果林

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この松森果林さんの新しい本『音のない世界と音のある世界をつなぐ―ユニバーサルデザインで世界をかえたい!』を読んでみたいのだが、図書館にはまだ入っておらず、本屋でも岩波ジュニア新書があるところは少なくてまだ現物に出会えぬまま、代わりに、図書館にあった本を借りてみた。

タイトルにも使われている「手話リンガル」とは、「手話」+「バイリンガル」の造語。松森さんによれば「「手話リンガル」とは、音声言語も、手話も、自由に使えること」(pp.1-2)だ。この本は、「聞こえる・聞こえない関係なく、幅広いコミュニケーションを楽しめる「手話リンガル」を目指す」(p.2)もの。

▼聴覚障害者と出会ったときにだけではなく、気の合う仲間と酒を飲みながら、「知ってる?ハイボールってこんなふうに表現するんだよ!」と盛り上がったり、まだ話ができないお孫さんと「おいしいね~!」と手話で伝え合ったり。聞こえる人同士だって、日常生活の中で、コミュニケーションの幅が広がったら楽しいですよね。
 目と目を合わせて会話をするコミュニケ-ションが増えたら、温かな社会になるんじゃないか。「手話リンガル」とは、そんなことを考えて作られた新しい言葉です。(p.3)

松森さんは「コミュニケーションが豊かだと、人生も豊かになる」「手話リンガルが増えたら、コミュニケーションも楽しくなる」(p.3)と考えていて、この本は、「コミュニケーション」ということをよく考えた"カンタン手話講座"にもなっている。
中途失聴の松森さん自身の経験や、息子(聴)がどう言語を身につけていったかという話や、聞こえない母とのやりとりをどうするかの工夫も、へええと思うところがあった。

▼面白いなと思ったのは、ハイハイができるようになった頃。昼寝から目覚めたとき、通常は泣けば母親が来るものですが、ウチの子は泣いてもママが来ないことがあると理解したのか、自分からハイハイしてママを探し、私と目が合うと泣く、そんな流れになりました。
 また、ハイハイをすると、床の振動で私が気付くことも多かったため、床をバンバン叩いて、「聞こえないママを呼ぶ」という方法も自然と覚えました。(p.142)

「ありがとう」を英語でサンキューと言うことは多くの人が知っている。それと同じように「ありがとう」を手話で言える人がもっとあたりまえになってもいいんじゃないか、という松森さんの意見は、ほんまにそうやなーと思う。それでも、聴者が多数派の社会。松森さんが、こう書いているところは、手話通訳は「聞こえる人(手話がわからない人)のためにもあるのだ」ということと重なる。

▼「耳が聞こえない人と話そうと思っても、しゃべった言葉が伝わらなくて大変」。
 多くの人はこんなふうに思ったことがあるでしょう。その理由を、聞こえないことや手話にあると考えがちですが、立場を逆にしてみれば、聞こえない人にとっては、「聞こえる人と話そうと思っても、手話が通じないから時間がかかって大変だわ!」ということなのです。(p.27)

二言語間の通訳は、たとえば日本語→英語/英語→日本語というように双方向のはずなのに、手話通訳となると、とたんに「聞こえない人のためのもの」と一方的に思っている人が多い。この発想の背景には、聞こえない人は情報を「与える」相手だというのがあるのだろう。

一方向に流れるだけでは、「コミュニケーション」というより上意下達風。話したい、伝えたい、わかりたい、という気持ちがあってナンボやんなーと、松森さんのこの本を読んであらためて思う。新しい本もぜひ読みたい。

(7/18了)
 
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Author:乱読ぴょん
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本ネタのミニコミ誌『ブックマーク』を編集発行しています(1990年9月創刊~ 昔は隔月発行でしたが、今は年2回発行で、現在87号)。

月刊誌『ヒューマンライツ』で、2014年4月(313号)より「本の道草」を連載中(現在、第37回)。

月刊誌『ヒューマンライツ』で、2004年3月(192号)より2014年3月(312号)まで、本ネタ「頭のフタを開けたりしめたり」を連載(全119回、連載終了)。

『くらしと教育をつなぐWe』誌で、1999年4月(71号)より2014年2月(188号)まで、本ネタ「乱読大魔王日記」を連載(全118回、連載終了)。

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