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娘に語る人種差別(タハール・ベン・ジェルーン)

娘に語る人種差別娘に語る人種差別
(1998/12)
タハール・ベン・ジェルーン

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4年前に読んだ本を、もう一度読みたくて借りてきた。こないだ読んだ『ヘイト・スピーチとは何か』の中で、「人種【的】差別とは何か」というあたりから頭がごちゃごちゃしてしまって、とくに私が知りたいと思った「第二次世界大戦後の国際社会では「人種」の存在自体を否定する考え方が主流になっている」というのが、この本で書いてあったかなーと思ったからだった。

そのことを気にしながら読みなおしていると、こんな箇所があった。原著はフランス語なので[ラス]とルビがあるところは、英語でいうraceなのだろう。人種差別主義には、[ラシズム]とルビがあった。メリエムは、著者が語りかけている娘の名。

複数の人種[ラス]はないんだ。あるのは一つの人類で、そこには色々な素質をもった男性と女性、肌の色の異なる人々、背の高い人や低い人が含まれる。そして、動物には複数の品種[ラス]がある。「人種[ラス]」という語は、人間の多様さを言い表すために使うべきではない。「人種[ラス]」という語には、科学的な根拠がないんだ。それは、外見上のつまり身体の違いのもたらす印象を大げさに言うために使われてきた。人間を階級で分けるために、つまり下の等級に入る人間に比べて優れた人間がいると見なして、身体の違い つまり肌の色、背の高さ、顔の特徴 を根拠にする権利はないんだ。言いかえると、肌の色が白いからといって、色がある人に比べて余分の長所をもっていると思いこむ権利はないし、とりわけ人にそう思いこませる権利はない。僕はメリエムに、もう「人種」という語を使わないよう提案したいんだ。この語は、悪意のある人たちに悪用されすぎたから、「人類」という語に置きかえた方がいい。だから、人類はいくつかの異なるグループからできていることになるね。(pp.35-36)
前に読んだときには、著者が、教育の力、人種差別をなくしていくには子どもの教育が大切だと強く語っていたのが印象に残っている。

4年ぶりに読みなおして、人種差別主義的な言動に怒るだけでは不十分で、そういう方向にずれていくことを「見逃さずに、対処しないといけない」(p.106)という著者の主張が、教育の話とあわせて、心に残った。それは、ひどいヘイト街宣が拡がり、対抗する「カウンター」行動がおこなわれていて、京都の朝鮮学校へのヘイト街宣のことでは裁判がすすんでいたからでもある。

著者の言うとおり、「もし見逃して、言わせるままにしておけば、人種差別が発展して、この災いにのみこまれなくてすんだかも知れない人たちにまで広がることを許してしまうことになる」(p.106)のだろう。

この本には、原著にはないという「子どもたちの言葉」が巻末に付録としてついている。著者が、1998年の1月から3月のあいだ、フランスとイタリアの約15の中学と高校へ行って、この本を読んだ生徒(とくに中1、中2)と会談した中で、子どもたちから出た質問などが紹介されている。

自分の親が人種差別主義者だという子がいたり、人種差別主義者の両親をもつ子に働きかけることはできるだろうかと問う子がいたり、人種差別主義者の攻撃にどのように対抗すればいいかという子がいたり…。自分の子が人種差別的な言葉を口にしたり、そういう団体に加わったりしたと語る親もいた。

この本には、対抗の手だては具体的には書かれていないが、著者は、「軽い人種差別があると考えてはならないこと、人種差別的憎悪の扇動を罰する法律があることなど」(p.118)を述べて返答したそうだ。

子どもたちは、反人種差別法がありながら、人種差別をまきちらす国民戦線のような党がなぜ禁止されないのか、とも問うている。『ヘイト・スピーチとは何か』では、法規制をおこなっている社会の例としてフランスはあがっていなかったが、法規制があってなお、人種差別的な言動に対抗することは容易ではないことが窺える。

京都朝鮮第一初級学校への在特会によるヘイト街宣に損害賠償を命じた一審、二審の判決も読んで、法規制を含め、人種差別に「対抗すること」を考えたいと思った。

図書館で、フランスの反人種差別法についての本をとレファレンスをお願いし、それと書架でみつけて『ポピュリズムに蝕まれるフランス』という本を借りてみた。

(7/9了)

街頭宣伝差止め等請求事件(平成25年10月07日  京都地方裁判所 第2民事部)
http://www.courts.go.jp/search/jhsp0030?hanreiid=83675&hanreiKbn=04
 
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本ネタのミニコミ誌『ブックマーク』を編集発行しています(1990年9月創刊~ 昔は隔月発行でしたが、今は年2回発行で、現在87号)。

月刊誌『ヒューマンライツ』で、2014年4月(313号)より「本の道草」を連載中(現在、第41回)。

月刊誌『ヒューマンライツ』で、2004年3月(192号)より2014年3月(312号)まで、本ネタ「頭のフタを開けたりしめたり」を連載(全119回、連載終了)。

『くらしと教育をつなぐWe』誌で、1999年4月(71号)より2014年2月(188号)まで、本ネタ「乱読大魔王日記」を連載(全118回、連載終了)。

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