読んだり、書いたり、編んだり 

笑う介護。 (松本ぷりっつ、岡崎杏里)

笑う介護。笑う介護。
(2007/09/10)
松本ぷりっつ、岡崎杏里

商品詳細を見る

先月、新聞で読んだ「若者が介護する日」の記事に出ていた本を借りてみた。記事では、親や祖父母の介護に追われる10~20代の若者、ヤングケアラーのことがとりあげられていた。「就職のタイミングを介護で逃した若者が、20代後半になってから仕事を得て食べていけるのか」と書く記事は、「介護をした後の、自分の未来が描けない」という声や、「自分は何ができ、何がしたいのか。結婚をし、家族を持つのか。就職をあきらめて5年。今さら会社勤めができるのか不安は尽きない。」という声を紹介している。

周りの同世代の親は元気で、「介護」ということが分かってもらえない、話しても通じないというのが、ヤングケアラーの辛さかもしれない。この『笑う介護。』の著者、岡崎杏里さんの経験もそうだ(松本ぷりっつさんが、話の一部をマンガやイラストにしている)。

▼たいていは、まだまだ現役バリバリの両親が認知症やガンになるなんて想像しないだろう。
 自分だって、20代前半から、50代の父の介護と母の看病を背負うことになるなんてまったくもって考えたこともなかった。
 しかし、それは突然やってきた。
 (略)
 病を患ってしまった本人はもちろん、介護者や病人を抱えた家族の暮らしは、その日からガラリと変わってしまう。(p.2)
一人っ子の岡崎さんは、父が脳血管性認知症になって、トンチンカン頭になり、そのうえ母に卵巣がんがみつかって入院、その介護と看護と会社勤めのなかで、体はボロボロ、心はキツキツになって心療内科行脚をするほど疲弊する。

親戚は遠方ばかりで頼れない。抱えこんではいけないというけれど、介護や看護や病院関係というのは、あれもこれも「身内」「血縁」に何でもやってきがちだから、そのときに「一人」というのは、心身ともほんとうに大変やったやろうなーと思う。

でも、そんな暗い話ばかりではなくて、「多くの人に助けてもらって発見すること」「つらい中にもたくさんの「笑い」が転がっていること」(p.3)を岡崎さんが自身の経験から大公開!していて、これがタイトルどおり、ほんまにおかしくて笑える。

たとえば、岡崎父の「甘いもの大量摂取」によるストレス解消。その大量具合がスゴイ。まんじゅう1箱、アイスはファミリーパック、ケーキは4~5個、そして究極は「みかんの缶づめをご飯にかけて食べる!!」(p.17) 

この「甘いもの大量摂取」は父だけでなく、じいさん(父の父)もそうだったというのがまた笑える。じいさんは「好物のぼたもち10個を一気に食べ、その直後にポックリ亡くなった」(p.18)というから、親子そろって筋金入りである。

あるいは、東北出身だけど「関西系オバチャン」気質がむんむんしているという母のエピソードが笑える。入院先の数人で「笑わせ隊」を結成し、その笑いで、何人もの患者さんのクリーンルーム行き(白血球が少なくなりすぎると感染予防に無菌室へ送られる)を止めたとか、抗がん剤でつるつる頭になったときはオレンジ色に輝くヨン様みたいなかつらを買って、ヨン様のようにマフラーを巻いて、見舞客の笑いをとっていたとか。

発想を転換してみれば、どんなにつらい介護の中にも「実はうれしい」「実は楽しい」「実はおもしろい」が結構潜んでいた、というのを惜しみなくさらけだしていて、タイトルに偽りなし。

そして、誰にも相談できず、たったひとりで悩み苦しんで、どこへ進んだらいいかも分からなかったという自身の経験があるからこそ、「多くの伴走者や応援者がいてこそ、介護マラソンの過酷なレースを走り続けることができる」と綴っている。

50代の初めで難病を発症した母が、ひきこもりの時期をぬけて、また出歩くようになったとき、アッシーとして、難病友の会や花見や美術館などへ、遠くは母の友人が留学していたロンドンへ、さいごまでずるずる学生をしていた私がお供することが多かった(妹たちは先に就職していた)。私の20代前半から半ばすぎまで。私も一種の"ヤングケアラー"やったんかなーと、この本を読んで思った。

(7/9了)
 
Comment
 
 






(編集・削除用)


管理者にだけ表示を許可
 
Trackback
 
 
http://we23randoku.blog.fc2.com/tb.php/5038-d2c5a80d
 
 
プロフィール
 
 

乱読ぴょん

Author:乱読ぴょん
    乱読ブログバナー
本ネタのミニコミ誌『ブックマーク』を編集発行しています(1990年9月創刊~ 昔は隔月発行でしたが、今は年2回発行で、現在87号)。

月刊誌『ヒューマンライツ』で、2014年4月(313号)より「本の道草」を連載中(現在、第43回)。

月刊誌『ヒューマンライツ』で、2004年3月(192号)より2014年3月(312号)まで、本ネタ「頭のフタを開けたりしめたり」を連載(全119回、連載終了)。

『くらしと教育をつなぐWe』誌で、1999年4月(71号)より2014年2月(188号)まで、本ネタ「乱読大魔王日記」を連載(全118回、連載終了)。

amazonへリンク

 
 
最新記事
 
 
 
 
最新コメント
 
 
 
 
カテゴリ
 
 
 
 
Google検索
 
 


WWW検索
ブログ内検索
Google
 
 
本棚
 
 
 
 
リンク
 
 
 
 
カウンター
 
 
 
 
RSSリンク
 
 
 
 
月別アーカイブ