読んだり、書いたり、編んだり 

父の生きる(伊藤比呂美)

父の生きる父の生きる
(2014/01/18)
伊藤比呂美

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カリフォルニアに住んでいる伊藤比呂美が、母が死んだあと、父が一人で暮らしている熊本と行ったり来たり、そして毎日のように電話をかけたりしていたのを、メモやブログから再構成したらしき本。

母が死んで父が残った2009年から、父の死ぬ2012年までのことが書いてある。80代の父と50代の娘は、もともと仲が良かったらしい。それでも、電話をかけるとやたら不機嫌なときがあったり、退屈だぁと言ったりする父親のことが、娘にとっては時にめちゃくちゃめんどくさい。父は来てくれと言うけれど、娘はなかなか仕事がはかどらなくてイライラしたり、むかつくことがあったりもする。老いて、ちょっとずつ弱ってくる父のことが悲しくなったり、つらく感じるときもある。そんなことが縷々書いてある。

読んでいて、母が死んだあと一人で15年暮らしている父のことを、ところどころで思い浮かべたりもした。父自身が老いる自分をどう感じているだろうか…ということを、伊藤比呂美の父の言動を読みながら考えたりもした。
▼父は、いつも一人でした。穏やかに、偏屈に、母にうっとうしがられながら、母との暮らしに満足していたようです。人づきあいは決してよくないのですが、人に向かったときには快活で、人なつっこくて、素直で、人に頼るのをいやがらない人でした。それでヘルパーさんたちとは、どの人ともとてもうまくいきました。幸いでした。(p.8)

そういう伊藤比呂美の父のことを読んでいて、同じように偏屈で、人づきあいが悪いうえに、人に向かったときに黙りこくってしまったりもするうちの父は、この先、もっとよぼよぼになったときに、どうなるやろうなあと思った。

伊藤比呂美の父が、とうとう死んだ4月の、最初の日にはこんなことが書いてある。
▼人がひとり死ねずにいる。それを見守ろうとしている。いつか死ぬ。それまで生きる。それをただ見守るだけである。でも重たい。人ひとり死ぬのを見守るには、生きてる人ひとり分の力がいるようだ。(p.148)

この、父を送るまでの3年ほどの日記のようなのを読みながら、たしか前に、伊藤比呂美が母について書いた、似たような本を読んだなー、あれはどの本やったかなと思いだそうとしていた。『閉経記』だったか、それとも『女の絶望』だったか、記憶がはっきりしないが、あれをもう一度読みたいと思う。

父が死んで、伊藤比呂美はめそめそとしていた。何ヶ月も父が出てくる夢を見、数ヶ月にわたって悔いてばかりいた、という。

▼悔いている。そう言うと、みんなに言われる。よくやったじゃない、何を悔いることがあるの、と。それでも私は悔いている。もっとそばにいてやれた。もっといっしょにテレビを見てやれた、三月に帰ってくることもできた。夜だって、自分の家に帰らずに父の家に泊まってやることもできた。それをしなかったのは自分の意思だ、てなことは、お天道様でも知るまいが、私にはちゃんとわかっている。私は父を見捨てた。親身になって世話しているふりをしていたが、我が身大事だった。自分のやりたいことをいつも優先した。父もそれを知っていた。(p.174)

私も父のことがめんどくさい。カリフォルニアと熊本のように離れているわけではないものの、ここ数年は月に1度様子見に行くくらいだ。先月は、父が故障したパソコンを買い換えることになって、買い換えたあとの設定だの何だのがうまくいかないというので、しかたなく何度も実家へ行き、父に代わってサポートに電話をかけ、うまくいかないというパソコンをさわった。

このめんどくささは何なんやろうなと思う。親でなければ、同じ年頃の年輩の人には、私はもっと親切にできる気がするからなおさらに。伊藤比呂美が書いているように「重たくのしかかりながらも、父はつねに、私に無理はさせまい、乗りかかりすぎまいという、抑制も努力もしていたのはたしかなんである」(p.175)という気配を、私も父から感じる。

父は、親を助けるのはアタリマエで当然というような態度はとらない。たぶん遠慮していて、そして自分でなんとかしようという気概はある。だけど、思うようにできなくなっていて、手近なところに頼らざるをえない自分に、父ががっかりしているのも感じる。

母のときもそうだったが、周りから孝行娘のように言われるのは違和感ばかりある。そのせいで、私は父に対して、よけいにめんどくささを感じるのかもしれない。私もいつか、悔いるのかもしれないと思う。そのときは、今感じてるめんどくささをしっかり思いだして、そして悔いたいと思う。

(7/6了)
 
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Author:乱読ぴょん
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本ネタのミニコミ誌『ブックマーク』を編集発行しています(1990年9月創刊~ 昔は隔月発行でしたが、今は年2回発行で、現在87号)。

月刊誌『ヒューマンライツ』で、2014年4月(313号)より「本の道草」を連載中(現在、第41回)。

月刊誌『ヒューマンライツ』で、2004年3月(192号)より2014年3月(312号)まで、本ネタ「頭のフタを開けたりしめたり」を連載(全119回、連載終了)。

『くらしと教育をつなぐWe』誌で、1999年4月(71号)より2014年2月(188号)まで、本ネタ「乱読大魔王日記」を連載(全118回、連載終了)。

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