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夏の庭―The Friends(湯本香樹実)

夏の庭―The Friends夏の庭―The Friends
(1994/03/01)
湯本香樹実

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前々から読んでみようと思いながら、やっと読む。6年生のぼくら、木山と河辺と山下の3人は、あるおじいさんを「観察」しはじめた。

おばあさんが死んで、お葬式から帰ってきた山下が「死んだ人、見たことあるか」と言ったのだ。3人のなかで、唯一「死んだ人を見た」ことがある山下は、お葬式のあとにこわい夢を見たという。

それからしばらくして、河辺が、ひとり暮らしのおじいさんの話をはじめた。「ひとり暮らしの老人が、ある日突然死んでしまったら、どうなると思う」と河辺は目を輝かせ、「そこを発見するんだよ」「おじいさんがひとりで死ぬ、そこを」、と言った。

おじいさんが、もうすぐ死にそうかどうか、そこは「死んだ人を見た」ことがある山下が頼りで、いやだいやだという山下を、二対一でひきずりこんで、ぼくらの「観察」が始まった。
おじいさんが住んでいる家は、まるで手入れがなされていないような、ゴミ屋敷状態。道路からのぞくと、くもりがらすの向こうで、テレビがついていて、おじいさんがコタツに入っているのがわかる。根気のいる「観察」を、3人は続け、ときおりおじいさんが近くのコンビニへ買い物に行くのをつけてみたりもする。

1学期から始めた「観察」は、夏休みになっても続いた。見張っているときに、おじいさんの庭にあるゴミがにおう。おじいさんは寝てるみたいだし、ゴミを出そうとしたぼくらは、おじいさんに見つかる。ただゴミを出そうとしたのだとは信じてもらえず、「人の家に勝手に入って、何しようとしてたんだ」とおじいさんににらまれる。

おじいさんが話も聞かずに、ばんと扉を閉めてしまって、河辺は叫んだ。
▼「ちっくしょう! じじい、よく聞け! オレたちはおまえを見張ってたんだよ! おまえが死にそうだっていうから、見張ってたんだ! おまえがどんな死に方するか、オレは絶対見てやるからな!」(p.55)

しばらくは遠ざかっていたものの、やはりぼくらはおじいさんをまた見にいった。コンビニにしか行かなかったおじいさんは、このごろよく食べるようになって、毎日買い物に行くようになっていた。八百屋で青いものを少し、それに魚屋でお刺身を買ったりもする。

ある日、おじいさんが家の中でたおれてるんじゃないかと心配しながら、かんかん照りの中で塀にへばりついていたとき、おじいさんはぼくらを挑発するように窓から震える手を伸ばし、Vサインをした。

ぼくらは、もう隠れることなく、おじいさんとこの塀に張りついて「観察」していた。おじいさんのほうも、ぼくらに水をかけたりしない、あっちへ行けとも言わない。ぼくらは、おじいさんが庭を片づけ、天ぷらを揚げるいいにおいを漂わせるのを「観察」した。もしかすると、人に見られていると知って、おじいさんは張り切っているのかもしれない、とぼくは思う。

そして、どうも元気になっていってるように見えるおじいさんは、ぼくらに声をかけてきて、ぼくらは洗濯物を干すのを手伝ったり、ゴミを出すのを手伝ったり、庭の草抜きをしたり…するようになった。なんだか、おじいさんにいいように使われてる気もするが、「初志貫徹のため」ぼくらは暑い暑いなか、しゃがんで草取りに励んだ。

草取りがすんだら、おじいさんはぼくらにスイカを出してくれた。こざっぱりした庭には「秋になったら種を蒔こう」とも言った。

ぼくらとおじいさんは、そんなふうに付き合いながら、ちょっとずつ知りあっていった。夏が過ぎ、おじいさんの死をある日見つけてしまったぼくは泣いた。夏のあいだ、おじいさんの暮らしに関わるなかで、ぼくにとっておじいさんは「話したいことがたくさんあった」という存在になっていた。

▼おじいさんに話したいことがたくさんあった。(略)ぼくの話や問いかけに、おじいさんがどういう反応を示すかということが、不思議なくらいありありと目に浮かぶ。少し前までは、おじいさんの顔を思い出すことさえできなかったのに。合宿の時も、ぼくは夜眠る前に、空想の中でおじいさんとその日のできごとなんかをいろいろと話し合っていた。帰ってからの会話の予行演習するみたいに。それはほんとうに、ほんとうに楽しかった。(pp.194-195)

身内のおじいさんでも、血縁のおばあさんでもない、老人と子どもとの関わり。あるおじいさんとぼくらの夏の日々は、心の中に「話せる大人」をもつことでもあった。親でもなく、学校の担任でもなく、ナナメの大人。

そんな大人に、私もなれたらなーと思う。

(7/2了)
 
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Author:乱読ぴょん
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本ネタのミニコミ誌『ブックマーク』を編集発行しています(1990年9月創刊~ 昔は隔月発行でしたが、今は年2回発行で、現在87号)。

月刊誌『ヒューマンライツ』で、2014年4月(313号)より「本の道草」を連載中(現在、第39回)。

月刊誌『ヒューマンライツ』で、2004年3月(192号)より2014年3月(312号)まで、本ネタ「頭のフタを開けたりしめたり」を連載(全119回、連載終了)。

『くらしと教育をつなぐWe』誌で、1999年4月(71号)より2014年2月(188号)まで、本ネタ「乱読大魔王日記」を連載(全118回、連載終了)。

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