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なんでそんなことするの?(松田青子 作、ひろせべに 画)

なんでそんなことするの?なんでそんなことするの?
(2014/03/19)
松田青子 作、ひろせべに 画

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『スタッキング可能』の著者・松田青子の本は、翻訳の『はじまりのはじまりのはじまりのおわり』をしばらく前に読んだが、これはご本人が書いた作。本文もおもしろかったけど、絵もおもしろかった。

学校で、同級生から「変だよ」「おかしいよ」などと言われるトキオ。トラのぬいぐるみを学校へ持ってくるのは変だとか、それは女の子のものだから持ってるのはおかしいとか。家で待ってるミケは、そんなトキオが学校から帰ってくると「たのしくなさそうだね」と見てとる。ぼくも学校へ連れていってよ、遠くから見てるからとミケにせがまれて、トキオはうんという。

次の日、トキオにいやなことを言って、いやなことをしようとした同級生を、ミケがぱくっと食べてしまった。ミケは、ひどいことを言ったりやったりされても、がまんしたり平気なふりしたりするようなのはいやなんだ!とトキオに言うのだ。それから、トキオにひどいことを言ったり、トラにちょっかいを出したりする同級生には、おかしなことが起きるようになった。
体育の時間、ドッジボールのはずが、ボールのかわりに、トキオの短パンのポケットに入っていたトラを、同級生が取り上げ、ほいほいと投げはじめた。トキオは「やめて」と小さな声で言うのだが、誰にも聞こえなくてやめてもらえない。

▼先生も、たいしたことじゃないと思っているのか、笑って見ています。(p.38)

先生がどう思っていたのかはわからなくても、笑って見ていられると、どうでもいいと思ってるんだろうとか、先生もこれはたいしたことないと思ってるんだろうとか、トキオがそんな風に感じるのはよく分かる。小学生にとって「先生」はすげーデカいし。

トキオが泣きそうになったそのとき、ミケの目がギラッと光って、クラスのみんながリスになっていた。先生もだ。トキオは、ミケに「もー本当にやめてよね。みんなぼくをからかってるだけなのに、なんでそんなことするの?トラを学校に持ってきて、悪いのはぼくなのに」(p.42)と怒鳴る。

ミケは、そんなトキオに言うのだ。「だからわかってないなあ、トキオくん。ほんとバカだなあ。だれかの好きなものや好きなことを変だなんて言ったり、バカにしたり、だれもそんなことしちゃいけないんだよ。本当にひどいことなんだよ、それは。(略)」(p.43)

その次の、ミケのセリフがするどい。
▼「それにさ、からかってるだけって言うくせに、じゃあなんでトキオくんは、毎回悲しいの? 傷つくの? いやな気持ちになるの? からかってるだけって本当は思ってないからだよね」

 「ねえ、ぼくにやめてって言うんだったらさ、トキオくんが悲しくなったり、傷ついたり、いやな気持ちにならないようにしてくれる? ぼくはトキオくんのことが好きだから、トキオくんが悲しくなったり、傷ついたり、いやな気持ちになるとすぐにわかっちゃう。そうするともう体が先に動いてああいうことになっちゃうんだよ。ぼくにはとめられないの。だからぼくにやめてほしいんだったら、トキオくんも悲しんだり、傷ついたり、すぐに落ち込まないようにしてよ」(p.44)

ミケに「できるもん!」と言ったトキオは、次の日からがんばった。トラをいじられたり、変なやつと言われたりしたら、「なんでそんなことするの?」「なんでそんなこと言うの?」と言い返した。小さい声で、さいしょは手がぐーになって、力が入って、家に帰ったらぐったりつかれていた。

でも、トキオが気がついたことがあった。「なんでそんなことするの?」「なんでそんなこと言うの?」と訊いても、みんなもごもご言うだけで、ちゃんとした答えは返ってこないのだ。

そのうちに、時は手をぐーにしなくても、ちゃんと言い返せるようになった。そしたら、だれもトキオのことを変だと言わなくなった。

▼「なんでそんなことするの?」「なんでそんなこと言うの?」ときかれても、もごもごもごもごしてこまるだけだし、よく考えたら自分だって変だったのです。(p.54)

みんなどっか変で、それがふつうだった。変なところがない子なんて、教室に一人もいなかった。そのころになると、トキオはミケが何かするんじゃないかというのが気にならなくなって、ミケもまた、帰ってきたトキオが「ちゃんと楽しそう」で「気持ちがうきうきしてる」のがわかって、もう心配はないと言う。

ちょっとまちがったら説教くさーーい話になりそうなところ、おもしろい絵のおかげもあってか、読後感はよかった。『スタッキング可能』のなかの、" 『わたし』は絶対それが普通だって思わない"のココロが、この本にも流れてるなーと思う。

(6/22了)
 
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Author:乱読ぴょん
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本ネタのミニコミ誌『ブックマーク』を編集発行しています(1990年9月創刊~ 昔は隔月発行でしたが、今は年2回発行で、現在87号)。

月刊誌『ヒューマンライツ』で、2014年4月(313号)より「本の道草」を連載中(現在、第43回)。

月刊誌『ヒューマンライツ』で、2004年3月(192号)より2014年3月(312号)まで、本ネタ「頭のフタを開けたりしめたり」を連載(全119回、連載終了)。

『くらしと教育をつなぐWe』誌で、1999年4月(71号)より2014年2月(188号)まで、本ネタ「乱読大魔王日記」を連載(全118回、連載終了)。

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