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産めないから、もらっちゃった!(うさぎママ)

産めないから、もらっちゃった!(うさぎママ)産めないから、もらっちゃった!
(2012/10/26)
うさぎママ

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この本のことは、『支援 vol.3』(特集:逃れがたきもの、「家族」)のブックガイドで知った。こないだ図書館に入ってるのを見つけて借りてきた。表紙イラストから、なんとなく中はマンガかな~と思ったりしたが、中は縦書きの文章だった。もとは、著者がブログに書いたものを加筆・再構成して本になったものだそうだ。

『赤毛のアン』が大好きで、大嫌いだったという著者は、特別養子縁組(※)でもらった子を「アン」、夫を「マシュー」、一家を「メイプル家」として、アンシリーズを思わせる章タイトルや小見出しをつけて書いている。

「子どもをもらう」ということは、たぶん昔は(少なくとも私の祖母の若かった頃は)そんなに特別なことではなかったのだろう。母方の祖母(生きていたらもう百歳を越える)は、結婚してからなかなか(6年くらい)子どもができず、「もらい子」をしようとしていたときに、ひょっこり「子どもができた」という話を、孫にときどきしていた。そういうわけもあって、祖母は当時としては晩産といっていい年齢で子どもをもった。

この本は、うさぎママが主語の内容がほとんどだが、うさぎママと話すかたちでアンの思いも入っていて(アンからの手紙も1ページある)、その中でも〈養子に出すという選択肢〉のところが、よかった。
アンの友だちの予期せぬ妊娠…彼と別れようかと迷っているのに赤ちゃんができたかも?という話題について、うさぎママとアンの間でこんな会話が交わされている。

▼ア「本人がいないときに、あたしが選択肢のひとつとして、産んで養子に出すっていう方法もあるよって言ったんだけど"あり得ない~。自分の赤ちゃんをほかの人に渡すなんて考えられないよ"と全員に即却下されちゃった」
 う「産んで育てるか、中絶するかの二者択一なの?」
 ア「うん。普通はそうなんだね~」(pp.154-155)

「子どもを養子に出す」なんてあり得ないから、「産むか/中絶するか」という発想になるらしい。アンは「割り切って養子に出すと決めて産んでくれたら、新しいママが見つかるのにね」(p.155)と言い、うさぎママはそれに対して「うん。でも、養子に出すってことがわからないから不安なのかも?」(p.155)と答えている。

そもそも「こういう選択肢もある」ことを知らないからか、このあとに収録されている「アンからの手紙 この本を読んでくださったみなさんへ」で指摘されているように、現状では

●妊娠したけど育てられない場合→中絶手術を受ける
●赤ちゃんができない場合→不妊治療をする、またはあきらめる (p.164)

という考えしかないようなことになっているようだ。「養子に出す・養子を育てる」があり得ないことではなくて、養子は悲しいことでも辛いことでもないと理解して、「養子を選択肢に加えていただけたらうれしいなと思います」(p.164)とアンは綴っている。

希望者はいても、特別養子縁組の成立件数はなかなか増えないという。その理由について、巻末のインタビューの中で民間団体「アクロスジャパン」代表は、こう話している。

▼…公的機関の中には「どんな状況でも産みの親に育てられるのがいちばん」という考えがベースにあって、特別養子縁組よりも、まず養育里親を増やしたいという考えのところも多いようです。予期せぬ妊娠に困った女性が児童相談所で「養子に出したい」と伝えても、「まずは施設に預けて、育てられるようになったら引き取ってはどうか」とすすめられると聞きます。(p.177)

「中絶か/不妊治療か」になってしまうのも、児相などが「産みの親が…」と考えるのも、なんだか根は同じような気がした。そこには「血」があるのだ、きっと。『ねじれた絆』のような、意図せずに子どもの取り違えが起こってしまった場合とはまた違うのだろうけれど、「育てか、血か」というと、この本は、明確に「育て」による親子の縁を書いている。

著者もまた、3歳で実母と別れ、二度目の母(アンにとってのパインおばあちゃん)に育てられている。しかも、自身が若い頃にはうまくいかなかったその母との関係が、祖母のことが「大好き」というアンによって、ふたたび結びなおされた。

▼思えば不思議な関係です。パインおばあちゃんとうさぎとアン、こんなに深く関わってきているのに、ひとりとして血のつながりがないなんて。(略)
 若い頃は母に心を開くことができず、なんとなく無視したこともあったうさぎ。でもアンが、私と母との絆を結び直してくれました。最近ではふたりでお出かけをして、いつでもアンのことでおしゃべりが弾む私たち。今は素直に母の健康と長生きを願っています。(p.124)

私は、手話をやってるとよくある自己紹介のなかでも、「家族の紹介」があまり好きではない。それはたぶん「家族」というときに「血」や「制度」でスッキリした気がしないからやろうなーと、この本を読んで久しぶりに思った。

※特別養子縁組…「家庭に恵まれない子に温かい家庭を与え、その家庭の中で健全な育成が図れるようにすること」を目的に、1987年の民法改正で新設された制度。縁組には「6ヵ月以上の試験養育期間」「子どもの年齢制限(原則6歳未満)」「養親は夫婦に限る」などの条件があり、家裁に申し立てをし、家裁が養親の調査をしたうえで、実親の同意を確認して認容か却下かを決定する。認容されれば、戸籍上も養親の実子になる。

「特別養子縁組」は、制度としては最大多数のよさそうなところを取って線引きしてるのだろうけど、養親は「婚姻している夫婦に限る」というようなところは、それも一つの偏見よな~と思ったりする。

表紙や中のイラストを描いているのは、『いつか見た青い空』や、『きみとうたった愛のうた~児童養護施設でくらしたあの頃に~』の作者・りさりさん。

(6/18了)

*出版社のサイトより
産めないから、もらっちゃった! ●まえがき
http://www.metamor.co.jp/maegaki/umenaikara.htm

*[裁判所]のサイトより
・特別養子縁組成立
 http://www.courts.go.jp/saiban/syurui_kazi/kazi_06_09/
・特別養子縁組成立の申立書
 http://www.courts.go.jp/saiban/syosiki_kazisinpan/syosiki_01_09/
 
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Author:乱読ぴょん
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本ネタのミニコミ誌『ブックマーク』を編集発行しています(1990年9月創刊~ 昔は隔月発行でしたが、今は年2回発行で、現在87号)。

月刊誌『ヒューマンライツ』で、2014年4月(313号)より「本の道草」を連載中(現在、第37回)。

月刊誌『ヒューマンライツ』で、2004年3月(192号)より2014年3月(312号)まで、本ネタ「頭のフタを開けたりしめたり」を連載(全119回、連載終了)。

『くらしと教育をつなぐWe』誌で、1999年4月(71号)より2014年2月(188号)まで、本ネタ「乱読大魔王日記」を連載(全118回、連載終了)。

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