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座談の思想(鶴見太郎)

座談の思想座談の思想
(2013/11/22)
鶴見太郎

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年明けに、いちど図書館で借りたものの、ほとんど読めないままいったん返し、予約待ちをしてまた借りてきた(私の後ろにもまだ待ってる人が)。

複数の人が寄って交わす「座談」というものは、その場を同じくする人たちの応答によって、新しいアイデアをうんだり、考え詰めて書かれた文章とは違って、その人の考えの幅や、相手に向き合う誠実さをみせてくれもする。

そんな「座談」が、日本の近代の思想空間でどんな位置をしめてきたか、中江兆民の『三酔人経綸問答』を参照しながら、著者は「結論はなくてもいい」という、未完ゆえにこそ未来に開かれている座談の特質を示す。

そして、『文藝春秋』の誌面で、編集者として多くの座談会を企画した菊池寛の試みから、「聞き手・司会が出席者を尊重し、かつ出席者同士が尊重する関係にあること」(p.127)が優れた座談、良い座談をうむという。

▼有名無名を問わず、その人物からしか聞けない言葉を引き出すこと、さらにそれらの言葉に誘発されて、座を同じくする人士から思いがけない話が聞けること──これが本来の菊池が想定する座談の在り方であった。(pp.124-125)
本のうしろ三分の二は、「座談」というものを考えるときに、著者がはずせないと考える人たち──桑原武夫、柳田国男と石田英一郎、中野重治、丸山眞男、竹内好の姿が描かれる。私が、多少は本を読んだことのある人も含まれている。

が、著者がいうように、「本」ではなくて、この人たちの「座談」のもようを読むと、(たとえそれが本人や編集者の校正を経て誌面に掲載されるものであっても)「座談にこそ、その人の思想の本質があらわれる」というのは確かにそうかもと思えた。

桑原の加わった座談の「見晴らしのよさ」、桑原の持ちえた「時流から離れた視座」。決定的に異なる位置に立ちながら、双方の信頼によって思想の往還をなしえた柳田と石田。自分の感情に忠実で、しかも自分の発言について後になっても長く考え続けた中野。「対立点はあったほうがいい」と、異なる意見をまとめようとはしなかった丸山。ものごとに素早く対応するよりも、時間をかけて問題を考えようとした竹内の持続力。

著者は、最後に結論めいたことをほんの少しだけ書いている。
▼本書で座談会の群像として戦後を中心に取り上げた人物は、桑原武夫をはじめ、いずれも誠実さという点については人後に落ちない人々である。そしてまた、戦前戦中戦後と座談以外の場面にあっても時流におもねらない仕事を重ねてきた人々でもある。戦後の座談会で、それが何故、優れた座談となっているかを考える時、そこに登場する人物の戦中戦後を貫く誠実さ、そして座談の中で取り結ばれる相互信頼に着目すれば、そこにひとつの基準点がみえてくるのではないか。(p.310)

私のなかでは『三酔人経綸問答』というと、内田義彦の『作品としての社会科学』が浮かぶ。学生の頃に何度も読んだ内田本を、久しぶりにまた読みたくなった。そして、中江兆民といえば『TN君の伝記』も。

この本に出てくるのが「おっさん」ばかりなのは、扱った時代のせいもあるのだろう。宇野千代がちらっと出てきたり、伊藤野枝についておっさんたちが語っている場面はちらっとあるが、「座談の思想」を考えるときにおばちゃんやねえちゃんたちが入ってくるのは、まだこれからなのかもしれない。

(5/20了)

*文中に引用されていて、読んでみたいと思った本
 『中江兆民の世界』
 『近代の超克』(これは昔買ったけど、読みきってない)
 『人間史観 桑原武夫対談集』
 『中江兆民の研究』
 『石田英一郎対談集』
 『青い月曜日』
 『民情一新』
 『丸山眞男手帖 56  「楽しき会」の記録』
 『転形期 戦後日記抄』

*もう少し知りたい
「白虹事件(はっこうじけん)」…1918年、大阪朝日新聞に対する言論弾圧事件。記事にあった「白虹日を貫けり」が不敬だとされたという。このとき丸山眞男の父・丸山幹治も長谷川如是閑などと共に退社。山崎ナオコーラの『昼田とハッコウ』の「白虹」は、別にこういう事件とは関係ないのかどうかと考える。
 
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本ネタのミニコミ誌『ブックマーク』を編集発行しています(1990年9月創刊~ 昔は隔月発行でしたが、今は年2回発行で、現在87号)。

月刊誌『ヒューマンライツ』で、2014年4月(313号)より「本の道草」を連載中(現在、第40回)。

月刊誌『ヒューマンライツ』で、2004年3月(192号)より2014年3月(312号)まで、本ネタ「頭のフタを開けたりしめたり」を連載(全119回、連載終了)。

『くらしと教育をつなぐWe』誌で、1999年4月(71号)より2014年2月(188号)まで、本ネタ「乱読大魔王日記」を連載(全118回、連載終了)。

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