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みどりのゆび(モーリス・ドリュオン)

みどりのゆびみどりのゆび
(2002/10/18)
モーリス・ドリュオン

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へのへのもへじ文庫で借りた岩波少年文庫。このタイトルにはおぼえがある。たぶん子どもの頃、寝る前に読んでもらったりしたうちの一冊だ。

が、少年文庫の装幀が最近のはカラーのカバーをかける方式になっていて、私の記憶にあるモノクロのイラストに確か緑色をあわせた装幀とはなんだか一致せず、表紙の絵はこんなんやったけなーと思う。中を読むと、私はほとんどまったく忘れているようで、記憶にない話だった。でも、おもしろかった。

ミルポワルの町の金持ちの家にうまれたチトは、8つの歳まで家で読み書き算の手ほどきを母からうけた。それからチトは学校へやられた。チトはやる気じゅうぶんだったが、なぜか黒板をみていると眠気がやってくるのだった。そして、居眠りチトは、学校へ3日通ったあとに、先生からこんな手紙をもたされて帰される。

「あなたのお子さんは、ほかのお子さんとおなじではありませんので、わたくしどもではおあずかりいたしかねます。」(pp.36-37)
さてどうするか。チトの父はこう決めた。

「学校で何もおそわらないのなら、よろしい! 学校なんかいかなくていい。本はチトをいねむりさせる。では本はやめてしまおう。、わたしたちは、あたらしい方法の教育をやってみよう。あれは《ほかのこどもとおなじではない》んだからな! ものごとはじっさいに観察しておぼえるものだということを、あの子におしえてやろう。小石や、庭や、はたけのことをその場でおしえる。町や、工場が、どんなふうにはたらいているか説明する。こうしたことがすべて、チトが一人まえのおとなになるたすけになるわけだ。つまり人生とはいちばんいい学校なのだ。ろんよりしょうこだよ。」(pp.44-45)

それでチトは、庭の勉強をし、規律をおそわり、貧乏について勉強し、お医者の先生の手伝いをし、地理と工場の勉強をし…

「みどりのおやゆび」をもつチトは、さわったもの何にでも花を咲かせてしまう。そのチトの才能に気づいたのは庭師のムスターシュじいさんだった。このゆびがさわると、たちどころに花が咲く。

規律をまなんだとき、チトは、「規律をまもるための建物」だという刑務所の壁に、するどいとんがりがいくつもつけてあるのを見て「どうしてこんないやなとんがりをどこにもつけたの? これなんの役にたつの?」とたずねた。「囚人が逃げるのを防ぐため」と聞いても、なっとくできない。だって、「このけいむしょ、もうすこしきれいだったら、逃げたいなんておもわないのに」。

家へ帰ってからもチトは考えた。どうして囚人にあんなみっともない服装をさせるのか、自分があそこにとじこめられたら、しまいにはきっといじわるな人間になってしまうだろう、囚人たちが不幸でなくなるためにはどうしたらいいんだろう?

みどりのおやゆびであの人たちに花を咲かせてやったら?と思いついたチトは、ベッドをぬけだして、満月のあかりのしたで、刑務所のなるべくたくさんのところにおやゆびを押しつけた。翌朝には、刑務所は花のお城にかわっていた。

いちばんぶったまげたのは囚人たちだった。逃げることも忘れ、自分たちのまわりの花をうっとりながめ、けんかをしたりなぐりあったりするのを忘れて、園芸に精を出した。

チトは、町のことをまなぶたび、病院の女の子の病室を花園にし、動物園の動物たちのおりの中に昔住んでいた地の木や植物をはやし、貧民街には朝顔を洪水のように咲かせた。ついには、花で戦争をやめさせた。ありとあらゆる兵器に植物がからみつき、大砲には花が咲いてつかいものにならなかったのだ。

チトの父は兵器工場を9つももつ兵器商人だった。これまでミルポワルの町はそれでうるおってきた。花が咲くような大砲は、誰もいらない。いままではミルポワルの工場から先を争うように武器を買っていた人たちが、注文を取り消して、取り引きをやめた。

チトの父は、いっぽうで最上の大砲をつくって売り、いっぽうでチトを幸せな子どもに育ててきた自分の矛盾に気づく。自分の子どもをかわいがっているのに、ほかのひとの子どもをみなしごにするために兵器をつくって売っているのだ。しかも、自分が父から兵器工場を継いだように、チトが工場を継ぐものと決めてかかっていたが、チトは兵器をつくる仕事などには心を動かさないことが分かった。

父の決断ははやかった。大砲工場は、花つくりの工場に変えられることになった。花のじゅうたんや花のかべかけ、庭などがつくられ、発送されていった。「せんそうはんたいを花で」という宣伝文句を掲げたミルポワルには、おとくいが押し寄せ、チトの家もふたたび繁栄をとりもどす。

チトの「みどりのおやゆび」を見出したムスターシュは、園芸の大顧問になり、いろんな花を発明した。「花びらのひとつひとつがまるで空のひときれのような青いバラ」(p.191)をつくりだすことにも成功したのだ。

青いバラとは、「不可能、ありえないこと」の意味だったのが、この物語のなかでは、できているのだった!(原著は1957年)

『みどりのゆび』は、おもしろいけれど、『星の王子さま』のように、多少教訓的な香りもある。それをかぎとってのことだろう、訳者があとがきに「こどもたちが読む本が、ぜんぶ『星の王子さま』や『みどりのゆび』のようなおはなしばかりでは、すこしばかりお行儀がよくなりすぎてこまる、とわたしはおもいますが」(p.219)と書いてるところが、なおいいと思う。

(5/9了)
 
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乱読ぴょん

Author:乱読ぴょん
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本ネタのミニコミ誌『ブックマーク』を編集発行しています(1990年9月創刊~ 昔は隔月発行でしたが、今は年2回発行で、現在87号)。

月刊誌『ヒューマンライツ』で、2014年4月(313号)より「本の道草」を連載中(現在、第44回)。

月刊誌『ヒューマンライツ』で、2004年3月(192号)より2014年3月(312号)まで、本ネタ「頭のフタを開けたりしめたり」を連載(全119回、連載終了)。

『くらしと教育をつなぐWe』誌で、1999年4月(71号)より2014年2月(188号)まで、本ネタ「乱読大魔王日記」を連載(全118回、連載終了)。

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