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やさしい版画教室(大田耕士 編)

やさしい版画教室(大田耕士 編)やさしい版画教室
(1984/08)
大田耕士 編

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「バレンに興味が…」と近所の図書館のカウンターで訊ねると、とりあえず書架ありだったものが出てきて、『版画に遊ぶ』とこの本を借りていた。

これは、児童書架から出てきたやつで、技法にかんしては「紙はんがのつくり方」から始まって、板紙凸版、板紙凹版、切り紙版、木版画、ステンシル、ドライポイント、エッチング、スチレン版…等々、イラスト入りで版のつくり方から刷り方、版の保管の仕方、後片づけまでをそれぞれ丁寧に書いたのと作品鑑賞とがこの本のメインになっている。

小学校や中学校でやった技法は、こんなんやったなぁ!と懐かしい。木版の多色刷りをこないだやって「鍵見当」と「引き付け見当」をおぼえた私は、「見当紙」という、刷る紙と同じ大きさで、版をどこに置くかの印を付けておく紙のなまえを見て、「見当(けんとう)」ってここにもあるんやなと印象深い。

最後に「バレンのつくり方」が載ってるところもよかったが、私がいちばんおもしろかったのは、編者(日本教育版画協会委員長、という肩書きがついている)が書いた「あとがき―はんが の はなし」と、「まえがき」だった。

▼はんがは、たのしい絵です。たくさん刷れば、たくさんの人に、そのたのしさをわけられる絵です。
 はんがをつくるのも、とても、たのしいです。紙にうつすとき、胸がどきどきするくらい、うれしく、たのしくなります。…(p.2、まえがき)
そして、あとがき。こないだ読んだ『版画に遊ぶ』は、和歌山県美でこないだ見てきた版画展を復習するような気分だったが、この本のあとがきは、読んでいて、ちょうど去年の今頃見た、「版画って何?」と思った京都版画トリエンナーレのことを思い出した。あのとき、同居人が買った図録を、あらためて見たい。

▼…版画のはじまりは、"うつる"ということの発見からです。(p.104、あとがき)

狩りをしていて、動物の姿を見つける前に、これは鹿、これは猪、これは熊…等々とその足跡を見分けること、あるいは森や山の中を歩きまわるときに、目印に泥を手につけて手形をつけることもあっただろうということ、つまりこれらの足跡や手形は型押しの版画なのだというところ、なんとなく版画(に限らず「画」)というと、つい平面を思いうかべてしまうが、そうや!と気づく。

さらに、水にうつった自分の姿の発見、青銅を磨いた鏡に姿をうつすこと、鏡というものに不思議な力を感じていたらしいこと…こうした「形がうつる」「形をうつす」ことに人は強い関心をもっていたという話や、縄文式土器は、粘土に押した版画といえるという話。

こないだ和歌山県美では、創作版画の始まりから101年とかぞえていたが、この30年前の本もそのことに触れている。
▼浮世絵はすばらしい版画ですが、じつをいうと、絵をかく人と、彫る碑と、刷る人は別々で、それぞれの力をあわせて、つくられたものでした。それを、絵はもちろん、自分がかいて、彫るのも、刷るのも自分でやる、というのが、創作版画で、このような考えが、今から70年ほど前におこります。
 自分が、自分の考えで、題材も自由にえらんで、自分の力で自由につくるという考え方が、じつは、みなさんの版画に続いているのです。(p.106)

そして、「みなさんは、雪で版画ができるかな、と思ったことがありますか。雪に足あとをつけることはできますが(これも版画です)、それを紙にうつすことは、むずかしいと思うでしょう。ある子が考えました。…」(p.107)という、雪の版画のあたりは、めちゃめちゃおもしろい。

「うつしとる」先は「紙」なのか?と、京都版画トリエンナーレのようなのを見たあとには思うが、「うつしとる」ことは「墨流しやマーブリングのように、水ででもできるのですから」(p.107)というところに、"うつる、うつす"に版画の源があるのだなあと思う。

(3/24了)
 
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Author:乱読ぴょん
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本ネタのミニコミ誌『ブックマーク』を編集発行しています(1990年9月創刊~ 昔は隔月発行でしたが、今は年2回発行で、現在87号)。

月刊誌『ヒューマンライツ』で、2014年4月(313号)より「本の道草」を連載中(現在、第40回)。

月刊誌『ヒューマンライツ』で、2004年3月(192号)より2014年3月(312号)まで、本ネタ「頭のフタを開けたりしめたり」を連載(全119回、連載終了)。

『くらしと教育をつなぐWe』誌で、1999年4月(71号)より2014年2月(188号)まで、本ネタ「乱読大魔王日記」を連載(全118回、連載終了)。

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