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戦争と一人の女(漫画/近藤ようこ、原作/坂口安吾)

戦争と一人の女戦争と一人の女
(2012/12/10)
漫画/近藤ようこ、原作/坂口安吾

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3月に、久しぶりに近藤ようこの『見晴らしガ丘にて』を読んだりしたからか、なんだったか忘れてしまったが、このマンガを手に入れて読む。このマンガを読むまえに、たまたま立ち寄った本屋で半藤一利の『安吾さんの太平洋戦争』という文庫を買って読んだりもした。

坂口安吾というと、むかしの"文学史"のベンキョウのせいか、「堕落論」くらいしか私には出てこないのだった。が、半藤一利の筆による「坂口安吾と太平洋戦争」をタンテイしたものを読んでいると、安吾は永井荷風のようでもあった(これも半藤による『荷風さんの戦後』を前に読んだことがある)。

『戦争と一人の女』は、坂口安吾の原作を、近藤ようこが漫画にしたものだという。私が買った漫画には帯がついていて、1年ほど前に映画「戦争と一人の女」(http://www.dogsugar.co.jp/sensou)がロードショーでかかるというのが載っていた。そんな映画ができていたことも知らなかった。
夜の空襲はすばらしい
 私は夜の空襲が始まってから
 戦争を憎まなくなっていた
 (pp.3-4)

漫画は、空襲の夜空をみあげる場面から始まる。

私は漫画をなんべんか読んだあとで、原作が入っている『坂口安吾全集4』を借りてきた。

漫画の冒頭にあたる部分は、「続 戦争と一人の女」のなかで、こう書かれている。
▼夜の空襲はすばらしい。私は戦争が私から色々の楽しいことを奪ったので戦争を憎んでいたが、夜の空襲が始まってから戦争を憎まなくなっていた。戦争の夜の暗さを憎んでいたのに、夜の空襲が始まって後は、その暗さが身にしみてなつかしく自分の身体とひとつのような深い調和を感じていた。(全集4、p.203)

漫画の「あとがき」に近藤が書いてるのによると、昭和21年に発表された「戦争と一人の女」という安吾のこの短編は、GHQの「事前検閲でずたずたにされ、そのせいもあってか安吾の作品のなかでは評価も低く、あまり知られていない」(p.142)という。「安吾といえば堕落論」の私は、もちろん知らなかった。

「あとがき」の冒頭で「「戦争」ってなんだろう」と書く近藤の漫画を読んでいて、なんとなく、こうの史代の漫画『この世界の片隅に』を思い出していた。

戦争下での暮らし、それは「モンペと防空頭巾」ばかりではないし、「集団疎開」だけでもないし、いろいろな面があるのだ。近藤は「戦争といえども人間が生活しているのだから、楽しいことも悲しいこともあるのがあたりまえなのだ」(p.142、あとがき)と書く。

そんな近藤にとって、2001年にGHQ無削除版で出た安吾の作品(『戦後短編小説再発見(2) 性の根源へ』所収)の「削除された部分」は、「戦争って何だろう」と思い、「戦争にはいろいろな面がある」と思った当時の自分の興味とぴったり重なっていたのだという。

数年後に、この安吾作品を漫画化したいと思った近藤は、知らない時代をたくさん調べ、締切のない描き下ろしで、一年ほどかかって描き終えた。

『この世界の片隅に』と同じように、この漫画もだらだらと何度も読むだろうなと思う。

(3/4了)

*漫画『戦争と一人の女』の16ページまで
戦争と一人の女|近藤ようこ|無料試し読み|
 
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Author:乱読ぴょん
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本ネタのミニコミ誌『ブックマーク』を編集発行しています(1990年9月創刊~ 昔は隔月発行でしたが、今は年2回発行で、現在87号)。

月刊誌『ヒューマンライツ』で、2014年4月(313号)より「本の道草」を連載中(現在、第42回)。

月刊誌『ヒューマンライツ』で、2004年3月(192号)より2014年3月(312号)まで、本ネタ「頭のフタを開けたりしめたり」を連載(全119回、連載終了)。

『くらしと教育をつなぐWe』誌で、1999年4月(71号)より2014年2月(188号)まで、本ネタ「乱読大魔王日記」を連載(全118回、連載終了)。

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