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揺れる心と向き合いながら―遺伝を覚悟で子どもを産む―(大木聖子)

大木聖子『揺れる心と向き合いながら』大木聖子『揺れる心と向き合いながら―遺伝を覚悟で子どもを産む―』(2014年1月発行)

2/22(土)の児玉真美さん講演会のときに、会場で購入。帰ってその日のうちに読んでしまう。

この冊子のもとになったのは、『ペリネイタルケア』(メディカ出版、周産期医療に携わる助産師・看護師・医師のための専門誌)で、同タイトルで2012年1月号から2013年7月号まで連載された全19回の文章で、それが加筆・修正のうえ再編されたものだという。

大木さんの"揺れる心"を綴った文章を読んでいて、「人の感情は、変化するのです」という原田正治さんの言葉を私は思いうかべていた。「十年前に裁判で証言したことが、今の僕の気持ちと判断されているのかもしれませんが、それも僕の人間性を無視されているように感じます。人の感情は、変化するのです。その思いを訴えたかったのです。」
弟さんを保険金殺人で喪い、当初の公判証言で「極刑以外ない」と話していた原田さんは、少しずつ変わっていく。加害者を赦せるわけではないけれど、死刑には反対だという。

人の気持ちは変わる、一度こうだと思ったことも変わりうる。だから私は、尊厳死とかリビングウィルというのも、だいじょうぶなんかなーと思う。臓器提供しますというのにマルをつけて持っておくというのも、どうかなーと思う。

先天的な疾患をもって生まれ、母も同じ疾患であったことから、病気が遺伝するかもしれないことに悩み、自分の代でこれを断ちきると、子どもは産まないと思っていた大木さん。その心に変化がおとずれ、大木さんは二人の子どもを産んだ。上の子には自分と同じ疾患があらわれた。下の子にはあらわれなかった。

二人の子を育てながら、母となってあらためて自分の母の心を思いやり、そしてまた子であった自分と重ねるようにわが子を思い、子どもたちの父となった夫との関係を、大木さんはふりかえる。

"揺れる心"と向きあい、丁寧に綴られた文章は、とてもよかった。

▼私は遺伝を覚悟で子どもたちを産んでいる。産み育てていこうと思えたから産んでいる。しかし、心の奥底には揺れる心が消えずに潜んできた。自分がこれでいいと思えても、子どもの人生を私が代わって生きていくわけではない。たとえ私が自分の人生を振り返り、母との関係をたたき台に、娘との関係の中でやり直しをしてみても、娘自身が抱えていかなければならないことは消えない。
 娘との会話で、「私が病気をもって生まれるかどうかは、お母さんにも選べなかったのだから仕方がない」と娘は言った。「誰にも選ぶことはできなかった」からこそ、与えられた運命を引き受けていくしかない、という娘なりの気持ちの切り替えがそこにはあるように感じられた。そして私自身も、「覚悟で産んだけれど、最終的には選べなかった」という言葉によって、愛しいわが子に遺伝を連鎖させてしまった「責任の重さ」を軽くしてもらえていたのかもしれない。(p.52、「十 出生前診断」)

子として同じ疾患をもつ母をみてきた大木さん、そして母として同じ疾患をもつ娘をみてきた大木さん、子の立場と親の立場の両方を経験されていることが、大木さんの当事者経験の特徴だろう。

これを読んだ人と、じっくり話してみたい。読んでみたい人には貸します!あるいは、取り寄せの手配します!(冊子は300円)

(2/22了)
 
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本ネタのミニコミ誌『ブックマーク』を編集発行しています(1990年9月創刊~ 昔は隔月発行でしたが、今は年2回発行で、現在87号)。

月刊誌『ヒューマンライツ』で、2014年4月(313号)より「本の道草」を連載中(現在、第42回)。

月刊誌『ヒューマンライツ』で、2004年3月(192号)より2014年3月(312号)まで、本ネタ「頭のフタを開けたりしめたり」を連載(全119回、連載終了)。

『くらしと教育をつなぐWe』誌で、1999年4月(71号)より2014年2月(188号)まで、本ネタ「乱読大魔王日記」を連載(全118回、連載終了)。

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