読んだり、書いたり、編んだり 

善き書店員(木村俊介)

善き書店員善き書店員
(2013/11/13)
木村俊介

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現役で本屋で働いてる6人への長いインタビューをまとめた本。秋頃から、「本屋さん」の本や「本」ネタの本をあれこれ読んでいたなかの一冊。

本屋の仕事のこと、本という商品をどう売っていくか、本との関わり、お客さんとの関係、シフト勤務で不規則になりがちという働き方、本に対する思い…等々、「書店員」として働くなかでのいろんなことが語られている。

▼本って、読んだあとに人が思うことは別ですよね。同じ本なのに、読んだ人のそれぞれの中ではちがう物語が生まれるともいえる。そのことを、前から不思議だなと思っていたんです。書店員の私は本を買って読む人にとっては、名前のない、顔も認識されない存在でしょう。でも、関われるのって幸福だな、と。そういう出会いの「もと」みたいになれたらいいなと思っています。おこがましいいいかたかもしれませんが。(p.14、1章 佐藤純子さん)
▼書店員の楽しみは…いちばんは、人に本を届ける「あいだ」に立てるところにあるんじゃないでしょうか。本って、書く人、作る人、売る人、読む人がいて、はじめて誰かのおうちの棚におさまる「宝物」になるもの、ですよね。書店員も、名前は残らないとしても、たしかにその「あいだ」のどこかにはいたんだ、と思うとうれしい。自己満足かもしれなくても。「本が好きだな」と思って集まってきている人たちの世界の中に、ほんの少しではあっても私にも役割がある、というのがいいなと感じているんです。(p.43、1章 佐藤純子さん)

仙台のジュンク堂で働く佐藤さんの話は、最初と最後のふたつの章で出てくる。出会いの「もと」や届ける「あいだ」になれたらという仕事への向きあい方は、本屋でなくとも、小売りやサービス業に通じるなーと思った。

▼…もっと、お客さまとやりとりをちゃんとできるスタッフが欲しいんです。選書できるスタッフというよりかは、ですね。お客さま以外とでも、地域のかたがたと話ができて、あ、こういう本が必要とされているのだなというのを引き出せるような。そういう人と一緒に仕事をやりたいなと思うんです。
 自分が好きなものを出してくる、それで充実感を覚えて止まる従業員ではなくて、ですね。やりとりをふまえて、自分たちがおすすめできることを見つけることができるというのは「受け」の姿勢でやることなんです。自分が好きなものを読んでそれを出していくんじゃなく、うまく受けとめるわけですからね。…(p.149、4章 藤森真琴さん) 

広島の本屋・廣文館で働く藤森さんの話は、「選書よりは、ちゃんとやりとりできる」というところが印象に残った。「これがオススメ!オススメ!」というよりは、よくよく人の話を聞いて「ウチにはこういう本があります」と差し出せるような、そんな感じかなと思いながら読む。

「そういう人と一緒に仕事をやりたい」という藤森さんのことばに、自分はどんな人と一緒に仕事をしたいだろう?と思い、どんな人が私と一緒に仕事をしたいと思ってくれるだろう?と考えた。

▼店がそんな状況だったのに、よくあちこち旅なんてできましたねと感じられたかもしれませんが、むしろ、苦境の中でも「もういやだ、やめよう」と投げたりはしないでいられたのは、各地でそれぞれのかたちで本屋さんが存在できているんだ、こんなやりかたもありうるんだと可能性を見せていただいたからでしかないと思っているんです。普通に考えたら、大型書店の物量やシステムに負けていくだけの存在でしかないのが、うちみたいな本屋なんですからね。
 でも、心の中では、どこか中小の書店であっても知恵を使って情熱を投じて、存在感としては大型書店とも充分に渡りあっているところをいつも探していたし、実際にそんな店がいくつもあり、それらに共感しては「自分も」と思っていたというわけです。(pp.189-190 5章 長崎健一さん)

熊本の長崎さんは、長崎書店の4代目。老舗書店として長くやってきたが、ネット通販や近隣の大型書店に食われるようにじり貧となり、もうアカンかもしれへんという中で、長崎さんは各地の本屋をまわる。どういうかたちで本屋は生きのびているか、自分の店でできることはあるか… そして、店は大きくリニューアルして息を吹き返した。

「こんなやりかたもありうるんだ」という可能性を、具体的に見ることは、店をどうするのかというときに、大きな力になったことだろう。

▼…私が書店員という仕事をするうえでなにかの手がかりになりそうだなと感じているのは、お客さまの話をよく聞くということでしょうか。私はいまの店舗でも、一日に一時間ぐらいレジに入っているんですが、やっぱりレジで接したり問合せを受けたりすることで、店によく来てくださるお客さまのことがわかってくるような気がします。
 それから、ブックアドバイザーといってお客さまの探している本や次に読みたくなる本について相談に乗るということもしているんですが、これをやっているうちに、こちらの知識を伝えるというよりは、お客さんの話を聞くということの中にこの仕事の可能性があるのかもしれないなと感じはじめてきたんですね。(p.274、6章 高頭佐和子さん)

広島の藤森さんが「選書よりは、ちゃんとやりとりできる人」と言っていたのと似たものを、丸善ではたらく高頭さんの話から感じる。私は図書室のカウンターで働いていたこともあるが、「こんな本を探しています、こんな資料はあるでしょうか」という話に対して、出てきた単語を検索して、それで引っかかったものを並べるとか、何もヒットしなかったから「ありません」とか、そういう風に応じる同僚さんには、ちょっと違和感があった。

もちろん、時間も人手も限られているのだから、カウンターに来られた方の話をいつまでも聞いてるわけにはいかない。それでも、「お客さんの話をよく聞く」ところに、大事なことはあるなと思う。行商で『We』を売りにいって、「どれがおすすめ?」と訊かれたときに、その人ともうちょっと話をして、「それなら、この号のこの話がおもしろいかもしれません」と手持ちの中から選んで出したときのことを思い出したりもした。「いい本です」と言うばかりで売れるわけではないよなあと。

▼…今年も震災後二回目の三月十一日がきて思ったのですけど、「忘れない」という言葉についても、少し考えてしまうところがあって。
 漫画家のいがらしみきおさんが、少し前に、この東北で暮らしてものを作るということについて、お話をされたんですけど、その時にいがらしさんがおっしゃっていた「忘れない、忘れないというのもいいんだけれども、忘れてもいいんじゃないのかな。普通に日々を過ごせたら、それがいちばんいいんじゃないかな」ということに私は共感したんです。もちろん、いがらしさんは「忘れられないけどね」といいながらいまの話をされていたんですが、震災の記憶に正面から向き合い続けることも必要かもしれないけど、普通の生活のためにできることをやるというのは私にはあっているといいますか。(p.293、7章 佐藤純子さん)

「忘れられないけど、忘れてもいいんじゃないか」という言葉から、普通の生活のためにと考える佐藤さんの姿勢。そういう思いが、本屋での仕事にもつながっているところが、いいなと思う。

佐藤さんが、絵本を扱うお店「ポラン」とそこを切り盛りする増田家次子さんのことを話してるところでは、ああこのポランの方には、2年前に仙台文学館でお目にかかったなと思い出す。これはこんな本で、この著者はこんな人でというお話を聞き、お土産に本を2冊買ったのだった。

▼…なんか恩返しをしたくなるし、ここ[ポラン]がなくなったら悲しいから買いに通い続ける。そういう場所なんです。
 「この場所のあり方が続いてほしいなと思うからそこでお金を使う、この人にお金がいくなら納得できる」、そういうお金のまわりかたがいいなと感じています。(pp.304-305、7章 佐藤純子さん)

6人のお話は、つかえることもなく読めたのだが、書店員さんの話を聞いた木村俊介さんの文章が最後に何ページかあって、そこの文章が私には正直読みにくかった。6人のお話をまとめたところはよかったのになーと思った。

(1/30了)

*考えるテーブル 震災のあとで<表現する>こと
 出演:いがらしみきお(漫画家)、クマガイコウキ(映像作家)
 司会:南陀楼綾繁(ライター、「一箱本送り隊」呼びかけ人)
http://www.smt.jp/thinkingtable/?p=2312
ページの最後のところに、いがらしさんの「忘れないと進めない」「忘れられない」の話がある  
 
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Author:乱読ぴょん
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本ネタのミニコミ誌『ブックマーク』を編集発行しています(1990年9月創刊~ 昔は隔月発行でしたが、今は年2回発行で、現在87号)。

月刊誌『ヒューマンライツ』で、2014年4月(313号)より「本の道草」を連載中(現在、第43回)。

月刊誌『ヒューマンライツ』で、2004年3月(192号)より2014年3月(312号)まで、本ネタ「頭のフタを開けたりしめたり」を連載(全119回、連載終了)。

『くらしと教育をつなぐWe』誌で、1999年4月(71号)より2014年2月(188号)まで、本ネタ「乱読大魔王日記」を連載(全118回、連載終了)。

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