読んだり、書いたり、編んだり 

終業式(姫野カオルコ)

終業式終業式
(2004/02)
姫野カオルコ

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姫野カオルコのお手紙小説。すごいことに、全編が「お手紙」によって書かれている。ポスト投函の郵便ばかりでなく、授業中に交わしたメモや、同級生の交換ノート、ファックス送信なども含まれる。出さずじまい、渡さずじまいの手紙もある。

これは、ある意味すごい。公開前提の「往復書簡」はともかく、フツーの「お手紙」は、その宛先となる人と自分との間でわかるだけの話が書かれている。つまりは「こないだの、アレが、どうのこうの」の世界。読者からすれば、こないだっていつ?アレって何?ということになる。

高校時代の同級生が、卒業し、進学し、就職していくなかで、出会い、別れ、人間関係は交差しながら、20年ほどが経つ。その年月を「お手紙」を積み重ねて小説にしてあるのだ。読みはじめたら、おもしろくて、つい最後までイッキ読み。自分のことではないのに、なんか懐かしさも感じる。
▼…
 みんな、今はどうしているんだろう。
 あのころ。なんて単純で、なんて、一日一日が新鮮で、なんでもドキドキしてたんだろう。なんて、一年が長かったんだろう。体育祭での優勝がなんて大事なことだったんだろう。夜まで教室に残ってる日がなんて大事なことだったんだろう。体育祭の夜、チャリンコで神社に行って興奮して笑った。宴のあとの興奮をチャリンコを六人でのりまわしてさました。なんて、なんでもないことがきらめいていたんだろう。テストがなんてこわかったんだろう。先生にあてられるのがなんてイヤだったんだろう。そんな時代へ手紙を書きました。今だってきっとまだ「あのころ」は各人のどこかにしまってあるだろうと。  草々

 平成八年三月二十五日
             あとがきにかえて 姫野カオルコ
みんなへ
(pp.342-343)

「あのころ」が埋め込まれた物語だから、私も懐かしいのかなー。便箋に何枚も書きながら、結局出さなかった手紙は、私にもある。あれほど手紙を出しあったのに、今はもうつきあいがないかつての同級生もいる。「みんな、今はどうしているんだろう」と、こういう小説を読むと、ちょっと考える。

(1/16了)
 
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Author:乱読ぴょん
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本ネタのミニコミ誌『ブックマーク』を編集発行しています(1990年9月創刊~ 昔は隔月発行でしたが、今は年2回発行で、現在87号)。

月刊誌『ヒューマンライツ』で、2014年4月(313号)より「本の道草」を連載中(現在、第37回)。

月刊誌『ヒューマンライツ』で、2004年3月(192号)より2014年3月(312号)まで、本ネタ「頭のフタを開けたりしめたり」を連載(全119回、連載終了)。

『くらしと教育をつなぐWe』誌で、1999年4月(71号)より2014年2月(188号)まで、本ネタ「乱読大魔王日記」を連載(全118回、連載終了)。

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