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戦争のつくりかた(りぼん・ぷろじぇくと)

戦争のつくりかた戦争のつくりかた
(2004/07/27)
りぼん・ぷろじぇくと

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いまから10年前の2004年、有事法案を読みこむ勉強会を続けてきた人たちがつながって、「成立を止めよう」とよびかけるネットワークをつくった。ちょうど衆議院で有事7法案と関連3条約※が審議されていたころ。そのネットワークのメーリングリスト内で話し合いを重ね、ちらしや解説を載せたウェブサイトの準備をするなかで、ある人のあたまに突然浮かんだのが、この「戦争のつくりかた」の絵本だったという。

1日100通を越すメールを交わして一字一句を確かめあって本文ができ、ウェブ絵本というかたちでサイトに発表された。そして、井上ヤスミチさんの絵がついて、冊子版『戦争のつくりかた』が出版された。その冊子は、有事法案審議中の国会議員全員にもくばられたという。

冊子版のことは多くのメディアでとりあげられ、発売から2ヶ月で3万3千部が売れたそうだ。もっと多くの人に読んでもらいたい、条文などの資料をつけて、本文の根拠と出自を示したいと、あらたにマガジンハウスから出版されたのが、この本だ。

英訳されたタイトルは"What Happens Before War?"で、そういう内容が書かれている。戦争が始まってしまうまでに、何が起こるのか。テレビや新聞が何を伝えるか、学校でどんなことが教えられるか、政府が何を推奨するか、決まりをどう変えていくか…そういうことが書かれている。

たぶん、いい本。
だけど、読んでて、ひっかかったところもある。
「わたしたちの国」というところ。
英訳では単に「Japan」となっている。

対応するところは、たとえばこんな具合。

▼わたしたちの国は、60年ちかくまえに、「戦争しない」と決めました。(p.3)
▽Almost 60 years ago Japan made a promise never to go to war again.(p.3)

▼わたしたちの国を守るだけだった自衛隊が、武器を持ってよその国にでかけるようになります。(p.4)
▽The Self-Defense Forces,which were only meant for the defense of Japan,will go with guns to other countries.(p.4)

▼わたしたちの国の「憲法」は、「戦争しない」と決めています。(p.20)
▽Japan's constitution promise not to go to war.(p.20)

最後のページの「わたしたち」は、we、そしてourと訳されている。
▼わたしたちは、未来をつくりだすことができます。(p.31)
▽We can choose our own future.(p.31)

「日本」ではなくて「わたしたちの国」と表現されたときに、その"わたしたち"って誰なんかなと思う。それは、教科書でよく使われる「わが国」という表現に対して感じるものと似ている。「日本」ではなくて「わたしたちの国」と表現されている本文の、最後のページの「we」が誰なのか、ということでもある。

こんなことを私が考えるようになったひとつの大きなきっかけは、高校2年のときの英作文だった。

「日本人はナントカです」という日本語の文章を、英語にするというのが授業で出てきたときに、私は「We Japanese…」云々と書いた。それぞれの作文を見た英語のi先生は、こう書くと「私たち日本人は」という感じになるのだと教えてくれた。こういうときは「Japanese…」と書くほうがよいかもしれないということも。

「we」という主語が示すのは誰なのか、「私たち」というそこに誰が含まれているのかということを、強く意識したのはそのときからだ。

巻末の解説ページには、英語対訳を添えた理由がこう書かれる。
▼日本が「戦争できる国」になったときに、とくいたいへんな思いをするなかには、この国に住んでいる日本国籍をもたない方がたも含まれるのではないでしょうか。そうした方がたにも絵本を届けられたらと思い、英語対訳も添えました。(p.35)

ウェブ版の絵本は、このサイト(http://www.ribbon-project.jp/sentsuku/)で読むことができる。


※有事法制関連については、防衛省・自衛隊に、「有事法制関連」というページがあり、2004年に審議された7法案3条約(6月14日に成立・承認)についても掲載(リンク)されている。
http://www.mod.go.jp/j/presiding/law/yujihousei/

関連7法3条約は、以下のとおり
・武力攻撃事態における外国軍用品等の海上輸送の規制に関する法律
・武力攻撃事態における捕虜等の取扱いに関する法律
・国際人道法の重大な違反行為の処罰に関する法律
・自衛隊法の一部を改正する法律
・武力攻撃事態等における国民の保護のための措置に関する法律
・武力攻撃事態等におけるアメリカ合衆国の軍隊の行動に伴い我が国が実施する措置に関する法律
・武力攻撃事態等における特定公共施設等の利用に関する法律
・1949年8月12日のジュネーヴ諸条約の国際的な武力紛争の犠牲者の保護に関する追加議定書(議定書I)
・1949年8月12日のジュネーヴ諸条約の非国際的な武力紛争の犠牲者の保護に関する追加議定書(議定書II)
・日本国の自衛隊とアメリカ合衆国軍隊との間における後方支援、物品又は役務の相互の提供に関する日本国政府とアメリカ合衆国政府との間の協定を改正する協定

これらの条文のうち、絵本の本文と関連が深いところは巻末解説ページに抜粋されている。

(1/7了)
 
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Author:乱読ぴょん
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本ネタのミニコミ誌『ブックマーク』を編集発行しています(1990年9月創刊~ 昔は隔月発行でしたが、今は年2回発行で、現在87号)。

月刊誌『ヒューマンライツ』で、2014年4月(313号)より「本の道草」を連載中(現在、第37回)。

月刊誌『ヒューマンライツ』で、2004年3月(192号)より2014年3月(312号)まで、本ネタ「頭のフタを開けたりしめたり」を連載(全119回、連載終了)。

『くらしと教育をつなぐWe』誌で、1999年4月(71号)より2014年2月(188号)まで、本ネタ「乱読大魔王日記」を連載(全118回、連載終了)。

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