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那覇の市場で古本屋―ひょっこり始めた〈ウララ〉の日々(宇田智子)

那覇の市場で古本屋―ひょっこり始めた〈ウララ〉の日々(宇田智子)那覇の市場で古本屋
―ひょっこり始めた〈ウララ〉の日々

(2013/07)
宇田智子

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大学を出て、ジュンク堂に勤めていた著者。でっかい新刊本屋の東京の店で、くるくる働いていたが、だんだんしんどくなってくる。あまりにも忙しい。大きすぎて、多すぎて。

▼入社してからまもなく十年。店の広さに本の量、お客さまと従業員の数が、だんだん手に余ってきた。なのに把握しているふりをして立ちまわることに疲れてしまった。仕事は楽しいのに、苦しい。
 なんとなくそろそろかなと思いはじめた。…(p.51)

ジュンク堂が那覇に店を出すときに異動希望を出して、著者は沖縄にうつる。そこで出会ったのは、本土とは違う、郷土の"県産本"の多さ、それらの本を出す地元出版社の多さ。
ジュンク堂といえば、ちゃちな図書館より、よほど本がある大型店だが、そのジュンク堂の那覇店で、"県産本"は、本棚55列も並ぶのだという。それだけ盛りだくさんな本は、県内で独自に流通してきたなかで(本土への配本など別に考えずに)好きにやってきた部分もあって、全国展開する新刊書店でアタリマエにやってきた商取引ではうまく扱えないこともあった。

東京から船でやってくる新刊本は、台風がくると動きが止まる。そうでなくても数日は遅れ、欲しい本がなかなか入荷できず、送料にも悩む。「欲しい」と言われる本が、本土式の流通ではうまくいかなかったり、絶版だったりで、お客さんに断るときのくるしさ。

そして、著者は、那覇の市場にあった"日本一狭い古本屋"を継いで(ジュンク堂は辞めてしまって)、古本屋を始めるにいたる。店は3畳ほどの広さだという。

人が行き交う市場の前で、ときに自分の存在をひそめながら店番をし、ときにはお隣やお向かいにちょっと見ていてもらって、買い物に出たりもする。そんな日々のなかで、「本」について書かれているところが、おもしろい。

▼「本は他のものとは違うからね。お客さんが中に入ったら声はかけないで好きなように見てもらうのがいいよ」
 と漬物屋さんにも言われた。
 だいたい四角くて、火にも水にも弱く、賞味期限はなくても経年劣化し、内容は全部違って、ある人にとってはごみでも別の人には宝物かもしれない、本というもの。妙なものを売っているなと、まわりを見てあらためて思う。誰が食べても「おいしい!」と声をあげるアンダンスー(油みそ)が、ときどきうらやましくなる。(pp.104-105)

ジュンク堂のころには新刊書店のルートでは取り寄せられなくて断っていた本も、古本屋のいまは四方八方手を尽くして、全力で探せる。「欲しい」という本、「探していた」という本を、お客さんに渡せたときのうれしさ。

▼「本には人の気持ちが入っている。だから会いに行って、そこで買う」
 国頭から与那国まで。
 「あなたの店には郷愁と哀愁を感じるよ。ここからたくさんの出会いと思い出が生まれるはずだ。そこそこ繁盛して、名所になるといいね」(p.176)

この本が、沖縄の出版社ボーダーインクから出ているところが、またいいなと思う。この本を暮れに読み、正月に父ちゃんちへ行くと、新聞に著者の宇田さんが載っていた。

(2013/12/30了)
 
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Author:乱読ぴょん
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本ネタのミニコミ誌『ブックマーク』を編集発行しています(1990年9月創刊~ 昔は隔月発行でしたが、今は年2回発行で、現在87号)。

月刊誌『ヒューマンライツ』で、2014年4月(313号)より「本の道草」を連載中(現在、第37回)。

月刊誌『ヒューマンライツ』で、2004年3月(192号)より2014年3月(312号)まで、本ネタ「頭のフタを開けたりしめたり」を連載(全119回、連載終了)。

『くらしと教育をつなぐWe』誌で、1999年4月(71号)より2014年2月(188号)まで、本ネタ「乱読大魔王日記」を連載(全118回、連載終了)。

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