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福島の美術館で何が起こっていたのか─震災、原発事故、ベン・シャーンのこと─(黒川創・編)

黒川創・編
『福島の美術館で何が起こっていたのか
 ─震災、原発事故、ベン・シャーンのこと─』編集グループSURE
福島の美術館で何が起こっていたのか─震災、原発事故、ベン・シャーンのこと─(黒川創・編)

[※この本のことは、『ヒューマンライツ』の1月号に書いています=近刊]

「事実に出合い直すのには、けっこう時間がかかる。」(p.17)

ベン・シャーンをひきよせて、自身の子どもの頃の経験にずいぶん後からそうかと思い当たったことを語った黒川創のこの言葉に、2012年の春に岡山県美でみたベン・シャーン展と、その夏に福島県美で学芸員の荒木さんの話を思い出しながら、『芸術新潮』の特集号を久しぶりに開いた。12月には伊丹市美のベン・シャーン展をみにいって、自分のうちに問いを持ち続けたというシャーンに思いをめぐらせた。
社会的な事件を題材にとった作品をいくつも残しているシャーンだが、それらはいずれも何年も経って(ときには四半世紀あとに)絵になっている。

▼…彼[ベン・シャーン]はそれだけの持続力があった人とも言えるでしょう。自分の中の問題が成熟するための時間を置いてから、描いた。静かな、コントロールされた絵。ある意味で、きちんと抑制された絵にするには、それだけの時間がかかったということですよね。
 しかし、ベン・シャーンは怒っていなかったわけではない。まず、そこに怒りがあったから、それだけの持続があったということなんだと思います。(pp.22-23)

▼実際、人間は、いろんなことを忘れ、むしろ、その痕跡をたよりに生きています。ベン・シャーン展を見て、よかったとか言いながら、すぐにその半分か、四分の三ぐらいは忘れている。でも、そうやって忘れてしまったベン・シャーンが、自分の中に残したものは何なのか。こちらの方がリアルなわけです。人間が目にしているいろんな風景を、もう一回絵として再構成していくとしたら、やっぱり、こういう忘却と思い起こしに似た相互作用を介していることになるのではないか。(p.25)

巻頭の黒川創の話(福島県美での講演記録)のうしろは、福島県美の元職と現職の学芸員との座談会が収録されている。

そのなかでもとくに「想像力を持ってほしい」と題されたパートの、学芸員の増渕さんの話が、ぐーっときた。この座談会がおこなわれた2012年の夏の時点で、「現状では、小学生の9割以上がとどまっている」という。危機意識の強い人はすでに避難し、そういう人は声を上げるタイプの方も多いので、そういう声は届いているだろう、けれど、福島に住んで、子どもを育てているお母さんの声は、よそには届いていないんじゃないかと。

▼増渕 …一番つらかったのは、県外の方などに、ガラスバッジをつけて子どもたちを生活させていること自体がおかしいといわれることですね。
中尾 親が責められるんだな。
黒川 そこに導く行政の方針がおかしいということですか?
増渕 どうなんでしょう。やはり親の責任ということでしょうが、面と向かって言われるわけじゃなくて、ネットの情報の切れ端とかが入ってくるんです。「動物実験だ」とか。それが一番、お母さん方へのダメージが大きかったと思います。福島は住めるところではないと。住んでる人がいるのに。そういう声が聞こえてくるのが一番つらいですね。(p.157)

増渕さんは、そこで実際に人が住み、ものを考え、いろいろ判断しながら暮らしていることを、想像してほしいと語る。

わが身に置き換えて想像することはものすごく難しいけれど、たとえばこの増渕さんの言葉を、私は、忘れずに持っていたいと思う。

(12/7了)

※『『福島の美術館で何が起こっていたのか─震災、原発事故、ベン・シャーンのこと─』は、編集グループSUREからの直販のみ。
編集グループSURE
http://www.groupsure.net/
 
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乱読ぴょん

Author:乱読ぴょん
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本ネタのミニコミ誌『ブックマーク』を編集発行しています(1990年9月創刊~ 昔は隔月発行でしたが、今は年2回発行で、現在87号)。

月刊誌『ヒューマンライツ』で、2014年4月(313号)より「本の道草」を連載中(現在、第44回)。

月刊誌『ヒューマンライツ』で、2004年3月(192号)より2014年3月(312号)まで、本ネタ「頭のフタを開けたりしめたり」を連載(全119回、連載終了)。

『くらしと教育をつなぐWe』誌で、1999年4月(71号)より2014年2月(188号)まで、本ネタ「乱読大魔王日記」を連載(全118回、連載終了)。

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