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本屋図鑑(得地直美、本屋図鑑編集部)

本屋図鑑本屋図鑑
(2013/08)
得地直美、本屋図鑑編集部

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夏葉社という版元は気になっていた。一人で営まれている出版社、そういうところがどんな風に本をつくり、売っているのか、食えているのかと気になっていた。最初に存在を知ったのは、ミシマガジンの「本屋さんと私」で紹介されたときだったと思う。2009年の9月にたちあげられた夏葉社の、これは9冊目の本。海文堂書店も載っているというのもあって、借りてきて読んでみた。

あとがきには、この本ができた経緯が書かれている。
▼あるとき、図鑑をテーマにした対談に誘われ、それが雑誌の記事になりました。その記事を読んだらしい夏葉社の島田さんが、お酒の席でこんなことを言うのです。
「ああいう本(図鑑)が作りたいんですよ」
 次の酒席に、頼まれもしないのに、勝手に作った企画書を持っていきました。次の次の酒席には、その本をテーマにしたトークイベントの企画を持っていきました。トークイベントが終わったら、酒席の与太話は、いつのまにか、それなりに立派な書籍の企画になっていました。この「本屋図鑑」はそんなふうにして生まれました。お酒の席で。(p.236)

掲載された本屋のほとんどは島田さんが選んだそうで、そのルールは二つ。47都道府県、すべての県の本屋さんを紹介することと、「図鑑」と銘打っているのだから、いろんなタイプの本屋さんを紹介すること。
たしかに、いろんな本屋さんが紹介されている。私が行ったことがある本屋さんも、いくつか載っている。でも、知らないところの方が多い。それは、島田さんが、「町の本屋さん」、つまりは大きすぎず、家に近い、そんな本屋さんを多く選んでいるからだろう。約半年の取材期間のあいだに、北は稚内から南は石垣島まで、本屋を訪ねて歩いたそうだ。

どの店も1ページの字数で紹介されていて、それにいくつかイラストがつく。このイラストは得地直美さんのもの。

どのページを開いても、こんな本屋がある、ということに励まされるような気がする。

たとえば、文苑堂書店(鹿児島県・指宿市)の三代目店主・大牟礼啓子さん。
▼大牟礼さんは本屋がない山村で育ったが、子どものころから本が好きだった。嫁ぎ先の文苑堂に初めてやってきた時のことは、今も鮮明に覚えている。「世の中にはこんなにもたくさんの本があるんだ」と心の底から驚いた。
 10年前に創業者である義父が、9年前に夫が病に斃れた。義父も、夫も、本屋であることに誇りを持っていた。「本は過去のことも未来のことも教えてくれる。だから、本屋は地域になくちゃいけないと思うんです」と大牟礼さんは話す。(p.52)

あるいは、ちくさ正文館本店(愛知県・名古屋市)の古田一晴さん。
▼「自分の好みで本を置いているわけではない。置くべき本を置いている」のだと店長の古田一晴さんは語る。どのような本が今必要とされているか、並べておくべきなのか。新刊情報を追っているだけでつくれる棚ではない。常に、本と時代と人とを見ていないとできないし、ただ漫然と見ているだけでもできないだろう。図書館か古書店のように落ち着いて見える売り場だが、棚が常に動いているのが伝わってくる。(p.102)

300年続く本屋さんもある。山形県・山形市の八文字屋本店。
▼「商人として300年やってきたということだと思います」と商品部の金沢有一さんは話す。「八文字屋でたいせつにしていることは、まずなにより現場。データを分析するよりも、売り場に1冊の雑誌を出して、棚の整理整頓をする。もっと平たくいえば、『ものを触ってなんぼ。ものを売ってなんぼ』、そういう考え方だと思うんです」(p.173)

海文堂書店については、こんなことが書いてある。
▼…神戸・元町にある書店として、「神戸の本」にも力をいれている。とくに、1995年以来続く「阪神・淡路大震災を語り継ぐ棚」は、見る者の足を止める。東日本大震災が起こった2011年、この書店が、「激励の言葉より本を売る!」というフレーズとともに、仙台で被災した出版社「荒蝦夷」のフェアをいち早く開催したことは、この書店の性格をなによりも雄弁に語る。(p.103)

その海文堂の閉店にあたり、海文堂の棚の写真集『海文堂書店の8月7日と8月17日』を夏葉社が出したそうだが、これは海文堂書店のみで制作した1000部を完売、増刷予定はないそうだ(どこかの図書館に入ってないかな)。

夏葉社のサイトには、「私たちの町には、本屋さんが必要です。「リアル書店」にこだわって、もう少し、仕事を進めていくつもりです。」とある。私も、ネットでぽちと買うよりも、本屋さんへ行こうと思う。

巻末にまとめられている「本屋さんをもっと知る30冊」。読んでる本もあるが、知らないのもいろいろある。
こんど読んでみたい本いくつか。
『「本屋」は死なない』
『書店の棚 本の気配』
『世界の本屋さん見て歩き』

(10/30了)
 
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Author:乱読ぴょん
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本ネタのミニコミ誌『ブックマーク』を編集発行しています(1990年9月創刊~ 昔は隔月発行でしたが、今は年2回発行で、現在87号)。

月刊誌『ヒューマンライツ』で、2014年4月(313号)より「本の道草」を連載中(現在、第43回)。

月刊誌『ヒューマンライツ』で、2004年3月(192号)より2014年3月(312号)まで、本ネタ「頭のフタを開けたりしめたり」を連載(全119回、連載終了)。

『くらしと教育をつなぐWe』誌で、1999年4月(71号)より2014年2月(188号)まで、本ネタ「乱読大魔王日記」を連載(全118回、連載終了)。

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