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シティ・マラソンズ(三浦しをん、あさのあつこ、近藤史恵)

シティ・マラソンズシティ・マラソンズ
(2010/10)
三浦しをん、あさのあつこ、近藤史恵

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図書館で本を返したら、めずらしく予約本が一冊もきてなかったので(ほとんどいつも返す本と借りる本の交換状態)、ひさしぶりに書架をうろうろする。ふと見た小説の棚に『シティ・マラソンズ』があって、あれこれは単行本か、たしか文庫にもなってたよなと思いながら、借りる。

ニューヨークシティーマラソン、東京マラソン、パリマラソンを、三浦しをん、あさのあつこ、近藤史恵がそれぞれ書いた話。もとは、アシックスが期間限定でやったキャンペーン「マラソン三都物語」のために3人が書き下ろしたものだそうだ。

東京マラソンをネタにした小説は、こないだ奥田英朗の『我が家の問題』でも読んだ。三浦しをんは箱根駅伝小説『風が強く吹いている』を書いてるし、あさのあつこにも『ランナー』があるし、走ることをネタにした話はけっこうあるなと思う。

この『シティ・マラソンズ』でも、三人が書いた物語は、切り口がそれぞれ違って、おもしろかった。走る、マラソンに参加する、ということだけでなく、物語のなかのセリフが印象に残ったり。
たとえば、三浦しをんの「純白のライン」では、主人公の広和がお目付役を頼まれた、社長の娘・真結のこんなセリフ。
▼「でも、合コンってつまんない。にこにこしながら、男のひとの会社や学校での手柄話に相槌打ってさ」(p.51)

三浦しをんは、こういうジェンダーセンシティブな感じのことを、ひょろっと書く。男女共同参画がなんとかいうようなテーマで無理やりな話をつくってる作品も世にはある中、小説としておもしろい(多くの人に読まれる)作品の中に、こういうのがひょろっと入ってるのが、ええなと思う。

あさのあつこの「フィニッシュ・ゲートから」では、主人公の悠斗と中高ずっと一緒だった湊の、フルマラソンを走ってみようと思うんやと伝えるときの、こんなことば。
▼「挑戦してみたい。つーか、何があるんやろって気になってしょうがないんや」「42.195キロ。走ってみたら、何が見えるんやろなって。気になって気になって知りたくて堪らんのや」(p.129)

たぶん50メートルや100メートル走るとか、5キロ、10キロ走るのとは、やっぱり違うもんが見えるんかなと思う。記録とか入賞とか、そういうのを目当てに走る人もたくさんいるとは思うけれど、各地のシティマラソンが、抽選で出場を決めるほどだというのは、そんなんじゃない「走る」魅力みたいなのが、あるのだろう。

近藤史恵の「金色の風」では、主人公・夕の、パリマラソンを走りながらの心のうちのことば。
▼そろそろ息が荒くなってくる。いちばん苦しくなる時期だ。踊っているときにも、こんなことがあった。
 泣きたいほど苦しくて、やめたくて、どうしてこんなことをやっているんだろうと思って。
 そう、なにもかもが同じで、繰り返しだ。わたしたちは同じことを繰り返す。
 でもわたしは知っている。ここを越えれば、また幸福を感じる時間がやってくる。
 思い出した。踊っているときもそうだった。
 苦しいことしかなかったような気になっていたけど、何度も踊りながら幸福を感じた。
 音とひとつになる幸福、拍手を浴びる幸福。(pp.211-212)

「どうしてこんなことをやっているんだろう」「同じことを繰り返す」というあたり、職場をあちこち転々としてきた私には、ドキーっとくるものがあった。

3作とも、「走る」ことをネタに人生を語ってるんかなーという気がした。

(9/25了)
 
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Author:乱読ぴょん
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本ネタのミニコミ誌『ブックマーク』を編集発行しています(1990年9月創刊~ 昔は隔月発行でしたが、今は年2回発行で、現在87号)。

月刊誌『ヒューマンライツ』で、2014年4月(313号)より「本の道草」を連載中(現在、第37回)。

月刊誌『ヒューマンライツ』で、2004年3月(192号)より2014年3月(312号)まで、本ネタ「頭のフタを開けたりしめたり」を連載(全119回、連載終了)。

『くらしと教育をつなぐWe』誌で、1999年4月(71号)より2014年2月(188号)まで、本ネタ「乱読大魔王日記」を連載(全118回、連載終了)。

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