読んだり、書いたり、編んだり 

こんなわたしで、ごめんなさい(平 安寿子)

こんなわたしで、ごめんなさいこんなわたしで、ごめんなさい
(2013/07/11)
平 安寿子

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7つの短編を読み終わって、表紙カバーを見ると、そこには、今読んだ女たちがごっちゃりと並んでいた。

こんな人、いるいる!と、なんだか誰かのことを(たとえば父、たとえば母、たとえば…)思い浮かべたりして読んでいると、それがだんだん自分のことのように思えてきたりする。タイラアスコは、よくまあこんなに人の心の機微を観察してるものよなあと思う。その表現力にもいつも感心する(ちょっと筆がすべりすぎてる気がするときもあるが)。

「カワイイ・イズ・グレート!」がとくにおもしろかった。
義理の妹、といっても年上の道子は、初めて会ったときから、ぶっとびの服装だった。ピンクのデコデコのフリフリ、リボンやフリルやらカワイイが満載、50を過ぎても平気でそんな格好をしている。義理の姉である梢は、そんなことができるのは前衛芸術家かお笑い芸人だろうと思う。はっきりいって、こりゃバケモノだと思う。

小姑として、梢はチクチクといやみを言ったりする。大人になってそんな服を着てるなんて、人に何か言われるでしょうと。道子は笑ってこう答える。
▼「そりゃ、よく、からかわれますよ。でもね」
 「からかわれるくらいで着たい服を着るのをやめるなんて、バカらしいでしょう」(p.206)

これは異星人だ、まともな地球人には太刀打ちできない。だから梢は実家とのつきあいを減らし、道子のワルクチを娘にたれながしてきた。

その娘から、梢は言われるのだ。
▼「小さい頃はお母さんの言うこと丸ごと呑み込んでたから、ミッチーのこと、ヘンだと思ってた。まりあちゃんにも同情した。だけどね、お母さんのミッチー嫌いにも、実はムカついてたのよ。小さい頃は自覚できなかったけど、大人になったら、悪口聞かされるたびに耳が腐りそうだった。お母さんは了見が狭い。ミッチーは個性的なだけよ」(pp.215-216)

「誰だって、あれはおかしいと思ってるわよ」と言い返す梢に、娘は、そんなふうに常識や世間体をふりかざして人を批判するのはみっともないと言った。そして娘は続けた。自分はお母さんに似て、自分と価値観が違うものにぶつかるとすぐ否定していた、そんな自分がイヤで、変わりたい、もっと柔軟になりたい、常識を楯にとって自分から世界を狭くするなんてしたくないのだと。

そういう常識だとかをぶっ飛ばし気味の側から書いてあるのが、「イガイガにチョコがけするのも年の功」。

外見や物腰を取り繕うとかメンツや立場にこだわるなんてアホらしいと、安永泉は思っていた。それが、「正直ではっきりものを言う」ことにもつながっていたのだろう。でも、ものには言い方があるでしょう、と泉の言動をみていると思う(冒頭の場面など、まるで父を見ているかのようだ!)。

▼「人がせっかく気も、お金も使って持ってきたプレゼントを、鼻先で突き返すようなことして。ああいうときは、ありがとうございますって受け取っておくのが、基本的礼儀というものでしょう。あとで人にあげるとか、別の物と交換してもらうとか、なんとでもできるんだから」
 「わたし、そういうの嫌いなんだもの」
 「泉ちゃんが嫌いでも、相手の気持ちを考えたら、あんな態度には出られないはずよ。可哀想に、恥をかかされて困ってたじゃないの」(p.103)

まるでうちの父である。人の土産を「いらん」と押し戻し、あるいはケチをつけ、たいへんに感じが悪い(その場に立ち会ったときには、身内としてほんとうに困る)。でも、そんな父のもとで育った自分にも、そういう気配がないとは言えない…そう思うと、ドキドキバクバクしてくる。

幼なじみの占部奈津子が世話を焼いて、泉はいくつか見合いをする。その過程で、奈津子に注意されながら、外見のもつパワーというものに泉もちょっと気づく。「それを、表面しか見ない愚かさと軽蔑するのも、実は傲慢なことなのだ。」(p.116)

おもしろい、でも、どきーっとするところもけっこうある短編集。 

(9/25了)
 
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乱読ぴょん

Author:乱読ぴょん
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本ネタのミニコミ誌『ブックマーク』を編集発行しています(1990年9月創刊~ 昔は隔月発行でしたが、今は年2回発行で、現在87号)。

月刊誌『ヒューマンライツ』で、2014年4月(313号)より「本の道草」を連載中(現在、第40回)。

月刊誌『ヒューマンライツ』で、2004年3月(192号)より2014年3月(312号)まで、本ネタ「頭のフタを開けたりしめたり」を連載(全119回、連載終了)。

『くらしと教育をつなぐWe』誌で、1999年4月(71号)より2014年2月(188号)まで、本ネタ「乱読大魔王日記」を連載(全118回、連載終了)。

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