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人はお金をつかわずにはいられない(久間十義、朝倉かすみ、山崎ナオコーラ、星野智幸、平田俊子)

人はお金をつかわずにはいられない人はお金をつかわずにはいられない
(2011/10/25)
久間十義、朝倉かすみ、山崎ナオコーラ、星野智幸、平田俊子

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平田俊子の『スバらしきバス』を読んだあと、図書館の所蔵検索をあれこれやっていて、これに平田の「バスと遺産」が入ってるのをみつけて借りてくる。もとは日経の電子版で連載されていた小説群で、同じようなつくりの本は『そういうものだろ、仕事っていうのは』を前に読んでいる。

本の装丁には全く見覚えがないのだが、平田の小説「バスと遺産」は読んだ覚えがあった。私はいつどこで読んだんやろ?

平田の「バスと遺産」を読んで、てっぺんの久間十義のから順に読む。どこか「お金」がらみの5つの話。

山崎ナオコーラの「誇りに関して」がおもしろかった。親から何も言われない、結婚とか出産とかのプレッシャーをかけてくる人が近くに全くいない31歳の依里(より)。医師として働いていて、年収は2000万。きっとすごく恵まれた場所にいるんだろうと思いながら、同世代の友人たちと会うとき、自分の生活ぶりを話すのを依里はためらってしまう。
▼引かれるだろうな、とびくびくして、できるだけ、そのとき集まる他の女性と同じような服を着て、にこにこ笑って、現状に満足して生活しているの、あとは、彼氏欲しいな、という話題に徹する。(p.125)

収入の多さや、自分のために遣うお金がちょっと多いということが知れたところで、「自慢しているように受け取られる」ということはない。女性の収入が多いことは、決してステイタスにはならない。そう依里は思う。

▼旦那がいるわけでもないし、税金を払って市政に協力しているし、親にも送金しているし、自分で身を削って稼いだお金なのだから、理屈としては気兼ねしなくていいような気もするのだが、私は自分のために金を遣うとき、どうしても「いけないことをしている」という気分になってしまうのだった。(p.139)

なぜなのか。子どもを育てるのにものすごくお金が要るとか、家を建てるのに大きな金を遣ったという話なら、気兼ねなく話せるはずなのに、自分のために服を買ったとかそういう話は他人に言いたくない、と依里は思う。「毎月何十万円税金を払っていても、社会参加できている自信がない」(p.143)と思うのだ。

さばけた親に、いろんな人生が認められる時代になったのよねー、多様化よねーと言われ、依里もフリーターの弟も自由にさせてもらっている。それなのに、依里は、勝手に社会からのプレッシャーを感じてしまう。

「私はちゃんとやっている」と思う、思いたい。仕事をすることで上の世代を支えている、税金を子育て支援に遣ってもらって下の世代を助けている、そういう自負もある。だけど依里の心にうかぶモヤモヤ。何をすれば「社会に認められた」と自分は思えるのだろう?

2000万という年収はちょっと想像がつかないが、依里の感じるモヤモヤは、なんか分かる気がした。

星野智幸という人の作品は初めて読んだ。「人間バンク」という、読んでいるとフシギな気持ちになる話だった。お金の価値って何やろう?と頭がぐるぐるしてくるのだ。

この話で書かれるのは、人命を貨幣とする「人貨」、そして電子マネー「人円」、人間が貨幣の価値を担保する、いわば人本位制のコミュニティ。人間、即、金。100万人円で、1人貨、つまり人間一人と兌換できる。ありえない設定のようでいて、読んでいると、今の世の中はこの通貨がまわっているような気がしてくる。実際そうなのかもしれないと思えてくる。

▼「…100万人円は人間1人分の重さに匹敵する、と、そういう意味よ」「命が100万ぽっち、と考えるのは、お金中心主義の価値観です。そうじゃなくて逆。人間の命を基準にして、お金の価値を計れば、100万は人の命に等しい、ってなるんですよ」
 「詭弁ですよ、そんなの。言葉では何とでも言いようがあるのだろうけど、実態は100万円で人を買っているようなもんじゃないですか!」(p.185)

たとえば、年収2000万の人と年収200万の人とを、お金中心主義の価値観でみれば、2000万の人は200万の人の10倍稼いでいて、それで…ということか? じゃあ人本位制でみると、どういうことになるのか? 

以前に編集した『ベーシックインカムは希望の原理か』で、西川正さんが語っていたのを思いだす。

「ベーシックインカムは労働の価値をお金だけで測るのは止めようよ、っていう問題提起でもあると思うんです。」
「さっき白崎さんが、所得と労働を分離する、つまり、働くこととその人がお金を得ることを分けたほうがいいんじゃないかって言ってましたけど、「働かなくても月10万円入ってくるとしたら、どう?」って知り合いに言うと、めちゃくちゃ怒る人とか、怠け者になっちゃうからダメだとか、いろんな反応があって、やっぱり金の話は人間の気持ちをざわざわさせるもんだなあ(笑)と思ったりもしました。」

お金の話は、たしかに気持ちをざわざわさせる。そのざわざわを、共有しつつ、ぼちぼち話すときのとっかかりに、この『人はお金をつかわずにはいられない』とか『ベーシックインカムは希望の原理か』が、なるかなあと思う。

(9/19了)
 
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Author:乱読ぴょん
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本ネタのミニコミ誌『ブックマーク』を編集発行しています(1990年9月創刊~ 昔は隔月発行でしたが、今は年2回発行で、現在87号)。

月刊誌『ヒューマンライツ』で、2014年4月(313号)より「本の道草」を連載中(現在、第44回)。

月刊誌『ヒューマンライツ』で、2004年3月(192号)より2014年3月(312号)まで、本ネタ「頭のフタを開けたりしめたり」を連載(全119回、連載終了)。

『くらしと教育をつなぐWe』誌で、1999年4月(71号)より2014年2月(188号)まで、本ネタ「乱読大魔王日記」を連載(全118回、連載終了)。

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