読んだり、書いたり、編んだり 

のろのろ歩け(中島京子)

のろのろ歩けのろのろ歩け
(2012/09/27)
中島京子

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これも「ブックマーク」の本のアンケートにあって、図書館で確かめたら空いていたので借りてきた。

中島京子、こんどは何を読ませてくれるのか? "のろのろ歩け"とは、いったい何の話かと思いながら、カバーを見てもまったくわからず。裏表紙には「慢慢走」と大きめの字が入っている。これは「のろのろ歩け」という意味か?

と、まったくなんの予備知識もなしに、読む。北京の話と、上海の話と、台湾の話が入っている。私はどこも行ったことがない。
中国で初めての女性向けファッション誌を創刊するプロジェクトに、日本人として北京によばれた夏美の話が、「北京の春の白い服」。10年前に北京へ留学していたとはいえ、北京のうつりかわりのあまりの速さに驚く夏美。そして、日本よりもはるかに寒い寒い北京で、それでも4月号の特集は「北京に春の服が来る」以外にありえないと夏美は主張するのだが、中国のスタッフは「冬の服をまだ着て春に備える」とするのがいいと譲らない。

苦労して春の服を揃え、おしゃれな場所を探して撮影をすませ、写真があがってきて、リードやデザインをチェックして、それで夏美の仕事は一段落した。週末には、北京に留学している学生・コージの自転車の荷台に乗り、あちこちへ連れていってもらう。屋台が並ぶ通りで、去りぎわに屋台のおじさんから「マンマン・ゾウ」と声をかけられる。

ザイチェンは、see you againで、マンマン・ゾウはtake careかなとコージは言う。
▼「…直訳するとのろのろ歩け、だからね、のんびり行けや、くらいの感じかな」
 慢慢走。のんびり行けやーーー。
 この、何もかもが疾走しているような北京で、それでも人々は「マンマン・ゾウ」とあいさつを交わす。(p.70)

仕事を終えて日本へ帰ってからも、夏美の頭からは「マンマン・ゾウ」というユーモラスな響きの中国語が離れない。「マンマン・ゾウ」は実際どんなふうに聞こえるのだろうと思いながら読む。ゆっくり行きや、という感じか。おしゃれは、なんぼ寒くても春の服を着るところから始まるんかいなーと思い、でもそれやと冷えるしカラダには悪いわな…と思い、流行りもんのファッション誌という仕事は、私にはちょっと想像がつかへんなと思う。

2つめの「時間の向こうの一週間」は、上海へ赴任した夫についてきた妻が、忙しすぎる夫に、日本語が堪能な同行者をあてがわれて、向こうでの住まい探しをする話。同行してくれるのは女性だったはずが、なぜかルー・ビンという男性が来て、あちこちの不動産をみてまわる間に、ちょっと恋仲にもなる。

中国の離婚理由で一番多いのが「感情破裂」だという話があったり、大都会で暮らすのはストレスフルだから、雲南のようなルーザーズ・ヘブン(失敗者的天堂)へ行きたいという話があったり、日本とはまた違う感覚があるんやなと思う。

▼「…いまは上海でも北京でもどこでも、みんな成功を目指さなくてはならない。とても疲れます。都会では誰もが、成功者か失敗者か、どちらかになる。もうそれは疲れるから嫌です。そういうときに、私はルーザーになりたい、と言うのです。ルーザーになって、ルーザーズ・ヘブンで暮らしたい。…」(p.157)
そんなふうにルー・ビンは言う。

3つめの「天燈幸福」は、亡き母の「美雨には台湾に三人おじさんがいる」という言葉を頼りに、台湾へ旅する美雨の話。おじさん1、2、3は、母の留学時代の知り合いとおぼしいが、母といつどうやって知り合い、どんな関係だったのか、美雨はまったく知らない。わかっているのは、母が生前、毎年欠かさず旧正月におじさんたちにカードを送っていたことだ。

母と父は、美雨が3歳のときに離婚した。だからなおさら、このおじさんたちと母との関係が気になっていた。もしかして恋人だったのか?などと。

美雨のローカル線での旅のもようが、穏やかに感じられて、どんなところなんやろうなーと想像をめぐらせた。

3作それぞれ、時間がぐんぐん過ぎたり、ゆっくり流れたり、旅の空を感じさせる。

(8/30了)
 
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Author:乱読ぴょん
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本ネタのミニコミ誌『ブックマーク』を編集発行しています(1990年9月創刊~ 昔は隔月発行でしたが、今は年2回発行で、現在87号)。

月刊誌『ヒューマンライツ』で、2014年4月(313号)より「本の道草」を連載中(現在、第40回)。

月刊誌『ヒューマンライツ』で、2004年3月(192号)より2014年3月(312号)まで、本ネタ「頭のフタを開けたりしめたり」を連載(全119回、連載終了)。

『くらしと教育をつなぐWe』誌で、1999年4月(71号)より2014年2月(188号)まで、本ネタ「乱読大魔王日記」を連載(全118回、連載終了)。

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